普通の田舎の話です
「えーっ!?今日はお芋の煮っころがしなの!?」
ミアさんが声を上げました。
「田舎にいた頃毎日食べてたから……飽きちゃったのよね〜」
「ネロが作ったんだぞ!美味いに決まってる!」
エンツォさん……問題はそこじゃないです。
私ーーエルナは、ホクホクとしたお芋の煮っころがしを食べながら聞きました。
「そういえばミアさんとジオさんがいた田舎ってどんなところだったんですか…?軽くは聞きましたけど、詳しくは聞いてないなぁ……と思いまして……。」
「普通の田舎だぜ?」
ジオさんが答えます。
「そうだねぇ………」
ミアさんが遠い目をしました。
あのカオス牧場を乗り切った二人の故郷、是非聞いてみたいものです!
「なつかしいなぁ……熊のテディと遊んだ日々……。」
くまさんですか?
「私よりずっと大きくなっても、ぎゅうぎゅう抱きしめてくるかわいいところは変わらなかったなー……」
「俺は骨を折られたけどな!」
はっはっは。軽く言う2人。
「それはすでに普通ではないのでは!?」
「ひ、ヒグマは退治するのが正義だぞ!?」
「やーね、テディはそんなに怖くないわよ。たまにじゃれついてくるだけ。」
ヒグマにじゃれつかれる……十分恐ろしい気が……
私とエンツォさんはごくりと唾を飲み込みました。
「うちの豚とも遊ぼうと侵入してきたときは困ったけどな!」
「豚さんたちも遊び相手がいなかったから散々テディと遊びたがって……最終的にはテディの方がへとへとになってたもんね!」
少し前の農家依頼で見た光景が蘇ります……暴れイノシシ……
いえ、あれは豚さんです。誰が何と言おうと豚さんなんです。
「野菜たちもね〜古くなるとすーぐ魔物化しちゃって!巨大カボチャなんか固くて困ったのよ!」
「ミアのシールドバッシュで一撃だっただろ……」
ジオさん。今更ドン引きしてもあなたの立場は変わりません。
カオス村の農家の人です。
「でもスイカ割りは楽しかったよな!」
えっ……普通の話題!?
「逃げ惑うスイカをボコボコにするの、楽しかったよね!」
「それはスイカ割りとは言わない!」
……エンツォさん、ツッコミありがとうございます……
「草を抜こうとしてマンドラゴラ生えてたりな〜」
「キノコ狩りに行ったらお化けキノコ出てきたもんね〜……」
二人は遠い目をしています。……いい話……なのでしょう、か?
「ただ……やっぱり私、街への憧れを止められなかったんだよね。」
その言葉だけは、少しだけ、今までと違う響きでした。
「おとぎ話の英雄!そんなのになりたくて、冒険者になったんだ。まあ理想と現実はだいぶ違うけどね!」
「俺はミアを守るために来たんだ……ミアより弱いかもしれないけど、付き合ってるんだ、離れるなんて考えられない!」
「ジオ………!」
「ミア………!」
あーあ、二人の世界に入ってしまいました。こうなると長いんですよね……
そこへ、ダン!と、テーブルの上にお皿が置かれました。
「…………食べられるだけ、天国だ。」
いいから食え。
視線で語ったネロさんは、手を洗いにキッチンへ戻っていきました……
私たちは素直にホクホクの柔らかいお芋を堪能しました。
人の作ってくれたものに、文句を言っちゃダメですよね……
「でもやっぱり飽きたよう〜」
「好き嫌いはダメだぜ、ミア!」
「食べ物を粗末にするな!それが正義だ!」
……その日の夜。
「今日の酒場のご飯ってな〜に?」
「芋の煮っころがしだな!」
「「「やめてください」」」




