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ガイア戦記 ― 歪められた世界の選択  作者: マロン
第三章 疑念の世界

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第三章 第四節 第十三話 残された痕跡

倒れた巨体の前で。

誰もすぐには動かなかった。


三重魂鋳ゴーレムは完全に沈黙している。

先ほどまでそこにあった圧力だけが。

まだ空気に残っていた。


「……調べる」


鋼守が静かに言った。

残骸の断面へ歩み寄る。


鉱守も並ぶ。

古炉守も続いた。


しばらく誰も口を開かなかった。


やがて。

古炉守が低く息を吐いた。


「……三人だ」


ネレウスが視線を向ける。


「何がだ」


古炉守は断面を見たまま答える。


「この個体には、三人分の魂が使われている」


空気が止まった。


ドゥリアの指先が。

わずかに震える。


鋼守が拳を握る。


「構造が一致する」


鉱守が続ける。


「単一の核ではない」


「三つの魂を強引に束ねている」


失踪していた七人。

そのうち三人が。

ここにいた。


誰もすぐには言葉を出せなかった。


「……これ」


リシアがしゃがみ込む。

装甲の裂け目を指差した。


そこに残っていたのは。

小さな欠片だった。


ライナスの視線が止まる。


「紫結晶だ」


鋼守が振り向く。


「知っているのか」


「別の場所で見た」


ライナスは残骸を見たまま続けた。


「失踪した七人は、どんな職人だった」


鋼守は少しだけ考えた。


「腕は確かだった」


そこで言葉を止める。


鉱守が続ける。


「だがここ最近は。

伸び悩んでいた者が多い」


古炉守も静かに頷く。


「評価を落としていた者もいた」


ライナスは小さく息を吐いた。


「やはり」


「負の感情を利用された可能性が高い」


火守が視線を向ける。


「どういう意味だ」


ライナスは紫結晶の欠片を見た。


「魂を捧げるのは普通なら。

恐怖がある」


「ためらいもある」


「だがそれを消された」


「紫結晶は意思を鈍らせる」


古炉守が言う。


「望まされた……ということか」


ライナスは頷いた。


短い沈黙が落ちる。


鋼守の拳が震えていた。


「……許せん」


火守が低く言う。


「残り四人も同じか」


誰も否定しなかった。


封鎖地区の奥には。

まだ終わっていない理由が残っている。


やがて。

古炉守がライナスたちへ向き直った。


「礼を言う」


「この国だけでは。

ここまで辿り着けなかった」


鋼守も続く。


「職人を取り戻すための道が見えた」


鉱守も深く頷いた。


火守はただ言った。


「感謝する」


それがこの国の最大の謝意だった。


しばらくして。

古炉守が静かに視線を巡らせた。


ライナス。

ネレウス。

リシア。

そしてフィリアで止まる。


「……それにしても」


「珍しいな」


ネレウスが眉を動かす。


「何がだ」


古炉守は答える。


「これほど多くの種族が揃った隊は」


だが視線はドゥリアへ戻る。


「ドゥリア」


「いい仲間に恵まれたな」


ドゥリアは少しだけ驚いた顔をした。


すぐに視線を逸らす。


だが。

ほんのわずかに頬が緩む。


照れたように笑った。


けれど嬉しそうだった。


「……うん」


ごろすけの腕に触れたまま。

少しだけ誇らしそうだった。


古炉守はフィリアへ視線を向けた。


「エルフの同行者がいるとは思わなかった」


フィリアが一歩前へ出る。


「フィリアです」


古炉守は頷いた。


「フィリア殿」


そして続けた。


「最近、エルフの国で妙な動きがあってな」


空気が少し変わる。


ライナスが視線を向ける。


「妙な動き?」


鋼守が言葉を継ぐ。


「武器の注文が増えている」


ネレウスが眉を寄せる。


「エルフが?」


鉱守が頷いた。


「通常の量ではない」


「備蓄の更新でもない」


「明らかに多い」


フィリアが小さく言う。


「森の外と距離を取ってるはずなのに……」


火守が腕を組む。


「理由は明かされていない」


「だが急ぎの注文が続いている」


古炉守がフィリアを見る。


「そちらで何か聞いてはいないか」


フィリアはわずかに首を横に振った。


「私は長く森を離れていました」


「内部の動きまでは分かりません」


ライナスは残骸を一度見た。


紫結晶。


魂鋳。


ドゥルガ。


そして今の話。


別の場所でも。

何かが動いている。


ネレウスが低く言う。


「偶然とは思えんな」


誰も否定しなかった。


炉の火が静かに揺れている。


この国の問題は終わっていない。


だが次に向かうべき場所は。

もう見え始めていた。

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