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嫁取物語~婚活20連敗中の俺。竜殺しや救国の英雄なんて称号はいらないから可愛いお嫁さんが欲しい~  作者: 月夜乃 古狸
軍務編

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第91話 逆臣許すまじ!

遅くなった!

 後ろを振り向いたらハクシラス伯爵が立っていてビックリ。

 と言っても真後ろに、ってわけじゃなく、数リードくらいは離れていたんだけど、まったく存在感がなかったんだよ。

 改めてハクシラス伯爵の姿を見てみると、年齢は多分40歳くらいなんじゃないかとは思うんだけど、小柄で痩せた体型はまぁ良いとして、目の下は炭の粉でも擦りつけたのかと思うくらい黒くて、まるでレスタール領に引っ越して半月経った頃のカオさんみたいに疲労と寝不足が顔に出ている。

 ……帝都で書類仕事してた時は最低限の物だけだったから、実際に領で何年も処理されないまま山積みにされた書類を見た時の恨みがましいカオさんの顔が忘れられません。


 そのハクシラス伯爵が俺の顔を見てから深々と頭を下げる。

「帝国を、よろしくお願いします」

 とりあえず話は後だ。

 俺は彼に頷くと、改めて駐屯地に向き直る。

 俺たちがウダウダとやってるうちに向こうさんはすっかり迎え撃つ準備が整ったようで、開きっぱなしだった門の向こうでは弓兵たちがこちらに放つ気満々で矢を向けてきている。

 とはいえ、先に手を出すつもりはないようで、あくまで不当に攻撃されたからやむを得ず反撃したという体裁にはしておきたいようだ。

 ……ここまで来るとあんまり意味はないような気がするが。


「レスタール小隊長、突入準備完了しています」

 カルーファの報告に頷く。

「了解。ガーランドのほうは、っと、大丈夫そうだな。んじゃ、俺が突っ込むから少し遅れて突入。自分たちの命優先で、できるだけ殺さないように」

「また無茶な注文を」

 ムルドが苦笑しながら文句を垂れるが、できないことは言いませんよ?

 気配からすると、こちらに積極的に攻撃しようとしているのは兵団長子飼いの中隊でもごく一部だけ。

 残りの連中は困惑したり躊躇ったりしてる様子が見てとれる。

 中隊以外に駐屯地で待機していた兵団の兵士たちはというと、中隊から距離を取って敷地の両側で遠巻きにしている状況だ。

 グレンザ兵団長の人望が無いのか、それとも兵士たちが賢いのか。


 俺はチラリとガーランドに目を向けて小さく頷いてから、戟を頭上に掲げて走り出した。

「う、射て!」

 あちらさんの号令の直後、俺に向けて一斉に矢が放たれる。

 が、基本任務が犯罪者の捕縛や盗賊対処なので練度が低いのか、それとも俺の足が予想よりも速いのか、大半はわざわざ躱す必要がないくらい外れ、身体にあたりそうなのは十数本程度。

 しかも同じタイミングで放たれたもんだから戟の一振りでほとんどはたき落とし、残りはわずかに身体をずらして避ける。

 そして2射目を構える頃にはすでに俺は連中の目の前まで接近している。

 こうなればもう弓は役にたたない。


「うわぁぁ!」

 驚いた顔の弓兵にニッコリと笑いかけてやったら悲鳴を上げられた。

 ブオン、ドガン!

 戟を振ると、直撃を受けた兵士が3人まとめて吹っ飛び、後ろに居た数人を巻き込んで盛大に転がる。

「ひ、怯むな! なぁ!?」

 グレンザ兵団長が喚く、が、直後にカルーファたち第24小隊の連中が突入して乱戦に。


「つ、強い! がぁっ!」

「ま、待てっ、わぁ!?」

 敵味方入り乱れての乱戦は、ここ数ヶ月徹底的に鍛えてるから小隊の連中の戦い方は危なげない。

 3人が一組になって防御を固めながら確実に相手を戦闘不能にしていく。

 元々腰の引けてる奴の多い第5兵団の兵士たち相手にろくな戦闘にならず、腕やら足やらをへし折られ、脇や股間をぶん殴られて次々に蹲っていく。

 訓練中はさんざん文句を言われたが、やっぱり乱戦の鍛錬はやっておくべきだと再認識した。

 この調子なら休暇明けはもうちょっと強度を上げても大丈夫そうだ。


 数の上では向こうはこっちの3倍以上居るのだが、実際に積極的に向かってきたのはその半分にも満たず、しかも練度は圧倒的ということもあり、戦闘は割と短時間で大勢が決した。

 俺が5回くらい戟を振り回してるうちに我が優秀な部下たちが俺以上に暴れ回り、ほどなく無事な連中が武器を投げ捨てて地面に膝を着けた。

「グレンザ兵団長、敵国への違法貿易斡旋と軍務違反により拘束させていただく」

「は、離せ! 貴様、上官に向かって反逆するとは何事か! ええい、離さんか!」

 見ると、ガーランドの奴も無事に兵団長の拘束に成功したらしい。

 彼の部下に両脇を抱えられながら小太りで頭頂部が禿げ上がった男が引きずられてくる。


 とりあえず、騒動はこれで終わり。

 ってわけにもいかないが、他の兵団のことにあまり口出しできないので、ハクシラス伯爵が呼んだという援軍の到着を待つことにする。

 その間に、グレンザに従っていた中隊の連中で怪我した奴は治療所へ、残りは兵舎の部屋に見張り付で放り込んでおく。

 優秀な部下を持って俺は幸せである。


 それから半刻ほどして、第5兵団旗下の大隊長4人が部隊の半数近くを引き連れて順次到着した。

 駐屯地の中に建てられた司令室にガーランドとハクシラス伯爵、大隊長たち、そしておれとカルーファが集まる。

 最初、大隊長たちと初対面である俺とカルーファを見て戸惑っていたようだが、ハクシラス伯爵が事情を説明して納得してもらった。

 というか、他の兵団、それも北部国境を守る第8兵団によって密輸が摘発されたことに驚くと同時に、思いっきり外部に兵団の恥を晒したグレンザ兵団長への罵声が飛び交う事態となった。


「改めてお詫びする。帝国東部に領地を預かりながら満足な統治ができず、重要な物品を敵国であるファンル王国へ不正に輸出する事態となったこと。そして事ここにいたるまで解決の道筋をつけられず、プルバット卿とレスタール卿の力を借りねばさらに重大な事態に発展する恐れがあったこと。全ては私の力不足により皆様に多大なご負担をお掛けした」

 冒頭、ハクシラス伯爵は俺たちに向かって頭を下げた。

「いや、伯爵殿は許される範囲で精一杯領地を守ろうとしていたのは我等も知っております。我々の方こそ、兵団長が密輸を主導し帝国を騒がせたこと、さらには配属されて間もないプルバット卿が動くまでなにもできなかったことを恥じ入るばかり」

「帝国の臣として恥ずべきは我等のほうでしょう。だがそれはそれとして、この度の不祥事をすぐに帝都へ報告せねばならん」


 詫び合戦が始まったと思いきや、さすがは軍人。すぐに次の動きに話が進む。

 とりあえず捕まえた元兵団長と密輸に関わった兵士たちを帝都に護送して事態を報告しなきゃならない。

「首謀者のひとりであるゾグレブト副兵団長が見つかっていない。兵舎の居室はもぬけの殻、近侍の兵も共に行方がわからなくなっている。荷車が一台と馬も5頭ほど持ち出された形跡がある」

 ガーランドが眉間に皺を寄せてそう報告する。

「おそらくはプルバット卿が帝都に向かったのと同じくして事が露見することを見越して逃げ出したのでしょう。私が調べた範囲では、密輸を直接指揮していたのはゾグレブト卿のようです」


「奴に関してはすぐに捜索隊を出す。だが、替えの馬まで盗んだとなれば追いつくのは難しいかもしれん」

「とにかく駐屯地や第3中隊が出入りした場所は徹底的に調べるべきだ」

「グレンザたちの護送と帝都への報告、監査官の派遣要請はハクシラス伯爵殿を中心として、今回直接摘発したプルバット卿と指揮下の分隊に我が大隊から1個中隊を出そう」

「万が一グレンザが逃走したり自害したりして、これ以上恥を重ねるわけにはいかん。明日の早朝には出立できるように準備を整えさせる」


 どんどん方針が決まっていく。

 さて、俺たちの役目も終わりということで、そろそろ砦に戻ることにしよう。

 そう判断して司令室を出ようと俺がカルーファを促して席を立ち上がると、ガーランドが怪訝そうに視線を向けてきた。

「フォーディルト、どこへ行くつもりだ」

 妙なことを聞いてくる。

「いや、俺たちの任務は密輸の調査と関わりが濃厚と思われる第5兵団への牽制だからな。状況がはっきりした以上は任務終了なんで砦に戻るつもりだが」


 俺がそう答えると、ガーランドが心底馬鹿にしたような目で見返してきた。

「なにを言っている? 貴様も帝都に同行してもらうに決まっているだろうが。武力行使を伴う第3中隊の捕縛を行ったのは貴様の隊だ。別の兵団である以上、責任者である貴様が直接報告しなくてどうする」

「……嘘だろ? こっからまた帝都への遠征できるほど兵糧持ってきてないぞ」

「別に全員で行く必要もあるまい。報告は貴様ひとりで事足りる」

 え?

 第5兵団の兵士たちやガーランドの部隊と俺ひとりが一緒に?


「いや、さすがに護衛とか副官とかも……」

「貴様に護衛? なんの冗談だ? それに、我々としても小隊分の遠征費までは負担できんぞ」

 確かに要らんけども。遠征費用を第5兵団が負担しないってのも仕方がないけども。

「帝都までは……」

「護送となれば20日は見た方が良いだろうな」

「報告は……」

「書類を出して、議会で証言する必要があるな。まぁ、早くても10日は滞在する必要があるだろうさ」


 …………ウソん。

「そ、それではレスタール小隊長、私たちは先に砦に帰参しますね」

「ねぇ、カルーファさん。俺がひと月以上遅れて戻ったら休暇ってどうなると思う?」

「…………」

 顔を背けるのヤメてくんない?

「小隊が休暇を終えているのに小隊長だけで休暇というのが認められるかは……」

 だよねぇ!


 お、俺の希望の休暇がぁ!

 おのれ、密輸なんぞしやがった逆臣は絶対に許さん!



というわけで、今回はここまでです

さて、急遽帝都へ行く羽目になったフォー君

休暇はお預けのようですw


今週も最後まで読んでくださってありがとうございました。

そして感想を寄せてくださった方、心から感謝申し上げます。

数あるWeb小説の、この作品のためにわざわざ感想を書いてくださる。

本当に嬉しく、執筆の励みになっております。

なかなか返信はできませんが、どうかこれからも感想や気づいたこと、気になったことなどをお寄せいただけると嬉しいです。


それではまた次週の更新までお待ちください。

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> お、俺の希望の休暇がぁ! > おのれ、密輸なんぞしやがった逆臣は絶対に許さん! 個人的な恨みからも許せませんなwww
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