10話. オルゴラズベリーの借金返済の冒険①
*オルゴラズベリー視点。
さて、ここはどこだろう。
勘違いして欲しくないのだが、私は別に方向音痴というわけじゃない。
ただ、くんくんといい匂いを嗅ぎ取り、それを頼りに適当に進んでいたら、帰り道がわからなくなってしまっただけなんだ。
「腹減ったぞ〜」
いや、ほんとうに。
よく考えたらお昼ご飯食べてなかったからな。
近くの店で何か買おうと思ったが、
この辺は店が全部閉店してしまっている。
力が出ずにグデーンと地面に倒れ込んだ。
「腹減って力でない〜」
だが、その時、ほとんど誰も通らない街角で、
男の子が座り込んでいるのを見つけた。
あんなところで何をしてるんだろう。
だが、少年は突然血相を変えてコチラに走って
きた。
「大丈夫かっ!?お前急に倒れて。どこか悪いのか?」
男の子は私の体をさすってどこか悪いのか探そうとしてくる。
あ、これいいかも
オルゴラズベリーは、猫がお腹を撫でられて気持ちよくするような気持ちよさを覚えた。
「うーん」
「おい」
「お、おなかすいた」
「は?」
※※※
*謎の少年視点。
ここは今の状況でも営業している数少ない料理店だ。
安い中でも味を追求しているこお気に入りの店。
自分の身分的には本来縁の内店なのだろうが、こういう庶民事情に興味があったことが
幸いした。
道端で突然倒れた少女を見た時はびっくりしたものだ。
病院に連れて行こうとすると、飯屋の場所
が分からないから連れてってくれと言う。
かなり戸惑ったが、
しょうがないからオススメの店に連れていった。
ガツガツと小さい少女の口の中に大量の食料がなだれ込むように入ってる。
その非現実的とも呼べる光景に流石の僕も言葉を失っていた。
20皿、30皿とお皿が積み上げられていく。
「ぷはーーー、ごちそうさまぁ。ここうまいなぁ」
あまりの食いっぷりに、店の皆が呆気に取られていた。
もっとも客はいなくて店員だけで助かった。
人と、いや街の住人と接するのは苦手なんだ。
店主は「ありがとうね、お嬢ちゃん」、と食べている彼女に言っていた。
やっぱり、経営難だったんだろう。
そんな時に1人でこんなにも大量の食材を消費してくれる客が来ればお礼の一つも言いたくなるだろう。
そりゃ、言いたくなるのも分かるけどさ。
さっきからずっと気がかりなことがある。
ここの支払い誰がするの?
さっきから随分とアホ顔で
何も考えてないような嬉しそうな顔で食べてるけど、
支払い考えてるよね?
実は大富豪のお嬢様とかなんでしょ。
僕じゃないよね?ここの支払い。
流石にこれ全部払うのは僕でもかなりきついぞ。
「あのね。君、ところでお金は持ってるかな」
一旦落ち着いて僕は質問する。
すると、目の前の幼な子はキョトンと首を傾げて言った。
「金?なんのこと?」
「はぁ!?いややっぱりか、なんとなくそんな気がしてたんだわ。も~~~!!」
僕は一瞬固まった。
直感でそんな予感はしていたが、それでもいざ聞くと信じられないぞ。
というか金をなんのことっていった?どんな生活送ってきたの?
あるいは一周回って支払いすら全て使用人に任せてる箱入りお嬢様?
頭を抱える。めんどくさいやつ拾っちゃったなぁ。
「あはは、なんだお前急に牛みたいな声出して」
「そんな無礼なこも言われたの人生初めてだよ。っていうかそれどころでもないよ。介抱してもらった恩人にお金まで払わせんなよ」
「だからお金てなに?それにえっと名前なんだっけ」
お金も知らず、僕のことも知らないところを見ると外から来たんだろうな。こいつ。それもおそらく相当など田舎から来たとみた。
僕の身分は国全体から見てもだいぶ上だし、
この街で僕を知らないやつはいないだろう。
かと言ってそれを仄めかして、威張るのは嫌いだ。
僕自身には何の力もないのに、特別扱いされるのは昔から気分が悪い。
実際よくそうされてきて悩んだこともあった。
だが、ここまで自由奔放なやつには
むしろ畏まってもらった方が御し易いだろう。
そう思い、僕は立ち上がって胸に手を当て、仰々しく言う。
「いいか。僕はロイド・エル・ハートブルク。この街の現領主、カイル・エル・ハートブルクの息子にして時期領主だ」
「……ふーん」
だが、僕の予想に反して目の前の女の子とは興味なさそうに答えた。
「ふーんって、もうちょい敬え!偉いんだぞ、領主って!高位貴族に匹敵するレベルなんだぞ!…いや、君にそんなこと期待する方が馬鹿な気がしてきたよ」
「お前、さっきから無駄に騒いで面白いやつだなー」
僕を敬うことなく、
挙句の果てにこんなことまで言いだす始末だ。
「はあ!?無駄じゃないよ。僕が面白いやつなら君はおかしいやつだ。ただ飯食らいしようったってそうはいかないぞ。いや、ほんと君に言ってもしょうがないか。ご両親はどこに」
「ん?私のか?私に親はいないぞ。生まれてすぐ追放されたからな」
明るい笑顔から突然するりと重い言葉が返ってきて、
僕は思わず体を硬直させる。
生まれてすぐに追い出されるなんてそんな事あるのか?
口減らしが何かだろうか。
僕の知らない田舎にはそんな風習があるのかも。
もしかしたら、そうして追い出されて逃げた先が
この街だったのなもしれない。
様々な想像が浮かんでくる。どうやら目の前の少女はとてつもない過去を抱えていたようだ。
なのに、僕は不躾に無神経なことを聞いて。
やってしまったかもしれない。
「あ、それは、すまない。悪いことを聞いた」
僕は慌てて頭を下げる。
「別に…謝る必要ないぞ。もう私の方が強いからな。気にしてない」
「強い?」
本人は気にしてはいないと言うが、ほんの一瞬だけ、淋しそうな顔で少女が俯いたのを僕は見逃さなかった。
その様子から本心のどこかで気にしているのだ、と僕は思った。
とはいえ、強いといのは現状前向きに考えている、という解釈でいいのだろうか。
その辺がよく分からないが、これ以上聞くのはよしておこう。
「暗い顔にならなくていいって。なっ、ロイ。私は本当に気にしてないし。それより、私の両親のことなんてなんで知りたかったんだ?」
なんで君に慰められるみたいになってんだよ、と僕は心の中で突っ込む。
両親の話になった理由…はっ!、そうだ、
辛い過去の雰囲気に流されるとこだったが、本題に戻らなければ。
「君が無理なら君の保護者に払ってもらおうと思ってたんだ。誰か、君と一緒にいる支払い能力のある人いないのかい?」
「おおー、友達ならいるぞ。セレーネだろ、マクラにあとフェルミナだ」
何だ。友達はいるんじゃないか。とりあえず完全に一人ってわけじゃなくて
ほっと息をつく。
ん?でもどこかで聞いたような気がする名だな。まぁいいか。
「じゃあそのセレーネさんでもマクラさんでもいいから、代金を」
「でも今別行動中だからどこいるのか分からんないぞ。悪いなロイ」
「そ、そうか」
やっぱりお金の回収は期待できそうにないか。この街は広いから探すのは骨だろう。集合場所とかないのか?
「っていうかさっきからロイってなんだよ。僕の名前はロイド・エル・ハー」
「うん、だからロイな。そっちの方が呼びやすいし、いいあだ名だろ?にしし」
ニヤリと笑って少女は言った。
あだ名。その響きに口がムズムズした。
何で僕の口は持ちあがりそうになってるんだ!?
なんだか気恥ずかしくて、力を込めて必死で唇を結ぶ。結果苦笑いみたいになった。
「あ、ああ。そうか。ま、まぁ呼びやすいならダメなこともないぞ。かしこまって呼ばれるよりも悪く……いや、何でもない。忘れてくれ」
はぁ、なんかコイツといると、いつものペース崩れまくりだ。早くお金返してもらって別れよ。
「それで、君」
「私、君じゃなくて、オルゴラズ…」
そこで、何かを思い出したように少女は口を止める。
「?」
「ああ、間違えた。オルゴラだ。オルって呼んでくれ。なっ、ロイ。これからよろしく」
彼女はそう続けて言った。
「オルゴラ?男みたいな名前だな。まぁ分かった。オル」
「それとな。この店マジで美味かったぞ。ほんとご馳走様。ありがとな、ここまで連れてきてくれて。命の、いや私あの程度じゃ死なないから飯の恩人だな」
満面の笑みでオルと名乗る少女は笑った。
その笑顔には何故か、その場で全てが収められてうやむやにされそうなパワーを感じた。
一瞬流されかけたが、僕は抵抗するように大声で異議を唱えた。
「いや、ご馳走様じゃないって。支払い君だから忘れないでね!!オル」
そうして、僕らは店を出た。
料金はやっぱり僕の立替だった。
全部で35銀貨※もしたぞ。
全部返してもらわなければ。
※35銀貨は日本円で35000円。
それにしても…
なぜか支払いの時店主から、いいお友達を持たれたのですね、
と感激された。
友達くらい…いやいないか。
友達、ねぇ
つい1時間ほど前あったばかりだし、
なのに何故かお金を支払わされてるし、
正直オルにはあまりいい印象を抱いてはいなかった。
けど、
「初めてかもな。あんな風に対等に話したのは」
僕は誰にも聞かれない小さな声で、ポツリと
そう呟いた。
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