9話.きっといいことがある予兆
何人かブックマーク登録してくれました。
本当にありがとうございます。
筆が進んだので、金曜20時ではないですが、投稿します。
*オルゴラズベリー視点です。
石畳の大通りを歩く。
周りを見渡しても人っ子一人いない。
いや、たまにすれ違う人もいる。
そんな小人数しかみかけないことが、この大きな都市が機能していないということを
竜王オルゴラズベリーにいっそう感じさせた。
よく考えればこんな大きな道を作ることも、ちっちゃい人間たちが相当にがんばったんだろうに。
「これも私たちのせいなのか」
オルゴラズベリーは最強のドラゴンだ。だが、元々強かったわけではない。
初めは脅威ランクEの雑魚魔獣だったのだ。他の魔獣と遭遇して死にかけたことも何度もある。
そこから、"強さ" に憧れて、死に物狂いで死線をくぐりぬけて、竜王にまで至った。
その結果を私は誇りに思っている。
私と同じような境遇から最強へと上り詰めた
4人の仲間のこともまた同様に。
だがその最強の地位で人間たちを脅かそうとは別に考えていない。
だから、その称号を何か恐ろしい悪いものと捉えられたのは、どこか納得がいかない複雑な気分だった。
「なんかもやもやするなぁ」
先程のやりとりを思い出す。
__
フェルミナがこの街を救うため、クラーケン討伐に協力したいと言いだしたのだ。
私はフェルミナがやりたいと言うのであれば、(暴れたかったし)協力しても構わなかったが、マクラが反対した。
「なんでなん?我たちが助ける義理ないやん。人間が勝手に我ら避けて窮地になってるだけやし。大体人間助けるなんて魔獣らしく無いわ」
正直マクラのその意見に私も賛成だった。
だが、フェルミナはその意見で行動を変えるつもりはないようだった。
「そうね。確かに魔獣の領域からは外れた行為かもしれないわ。本当に無関係なら私も手を貸さない。
けど、この街は私たちが集まったから狙われるんでしょう。私はみんなとこうして集まれたことは本当に嬉しい。セレーネもオルも大好きだし、ちょっと鼻につくけど、マクラも。だから、その思い出を悪いことにしたくないの」
「……それは」
皆が沈黙した。
私なんかは少し共感できたし、フェルミナがそんなふうに思ってくれていたことに少し嬉しいなって感じたくらいだった。
他の2人は何を思って反対していたのか、それは分からない。
2人は私と違って単純じゃないし、
魔獣としてのあり方にもこだわりが多少なりあったりしたのだろうか。
「せやけど、正体がバレるのは少しまずいんと違う?
我たち4人全員ここにいるって知れたらそれこそ、大パニックや」
「……それは」
「うーん、それは人化を解かなきゃ大丈夫じゃないかな」
だが、マクラの意見に助け舟を出したのは意外にもセレーネだった。
「セレちゃん!?」
意外そうな顔でマクラがセレーネを見る。
セレーネは人間とイザコザを起こしたくないと言う観点から反対すると踏んでたのだろう、
と私は推察した。
私もセレーネは反対すると思ったから少し意外だった。
今正体がバレると後々めんどうなのは間違いない。
「でも、4人も正体不明の強者が突然現れたら流石に不自然だと思うんだよね。だから、提案なんだけど、今から全員自由行動するっていうのはどうかな。フェルミナは1人で行くことになっちゃうけど」
セレーネが言った。
あれ?自由行動?それって私はどうなるのかな?
「問題ないわ。ありがとう。セレーネ」
フェルミナがニッコリと笑って言った。
「我も問題はないけど」
チラリとマクラが私の方を見た。
「ちょっと待った。私1人で放り出されても、迷子になる未来しか見えなし困るっ。そうだ、フェルミナの方行くよ。私も暴れたいぜ」
私は焦ってそう言った。
クラーケンか。まぁ、ストレス発散にはちょうどいい相手かもしれないな。
正直この街に来て、レストランはやってないし、
余計なことを考えさせられるし、散々だ。
こういう時は暴れるに限る。
そうすると、3人は顔を見合わせて言った。
「大丈夫?テンション上がってうっかり獣化しちゃわない?」
「うっかり本名喋ってまうんやない?」
「うーん、こういうのはオルにはちょっと早いんじゃないかしら」
んなっ!こ、こいつら、完全に私のことを子供扱いしている!?
「ムキーッ!みんな私のことなんだと思ってんだ!?
そんなことできるにきまってるっ!」
信じらんない。こいつら私のこと舐めてるな。
「ごめん、ごめん。お詫びと言っちゃなんだけど、オルのこと占ってあげるから」
セレーネが手を合わせて言う。
「占い?」
たしかにセレーネは昔から未来予知のスキルを持っている。
この町でも占い師として、来ていたとも言ってたし、スキルは健在なようだ。
「うーん。なるほど、やっぱりオルはこのまま街を観光した方がいいって出てるよ」
「ほんとにぃ〜?」
その時は正直、私を言いくるめようとして、嘘を言っているのか見分けがつかなかった。
じとりと目をほそめてセレーネを睨む。
「私の占い師の誇りに誓って嘘じゃないよー。きっといいことがあるさ。私の占いは外れないんだ」
「はぁ、まぁセレーネが言うなら信じてみるよ。しょうがないな。じゃあまた後でな」
まだ、少し拗ねていたので、ぶっきらぼうにそう言って私は行くあてもない街へ歩いた。
◇◇
オルゴラズベリーの姿が見えなくなってから
フェルミナと真蜘羅はため息をついた。
「外れないってあなたの能力そんなに便利なものでもないでしょ」
フェルミナが言う。
「ままっ、そこは占い師としての愛嬌ってことでねー!良いことがありそうなのは本当だし」
セレーネが手を合わせて笑った。
◇
こうして、私はこの誰もいない大通りを歩いている。
さて、困ったぞ。
ここどこだ?
皆と別れてから十数分後ほどで私は完全に迷子になっていた。
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