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かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。  作者: カモミール
4章:昔の冒険

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番外編 武の神 前編

かくして、武の勇者カール・ハーゲンは魔王に深い深い傷を負わせ、退けたのである。

討ち取ることこそ叶わなかったものの、魔王はカールの存命期間、一度も人族に戦を仕掛けることはなかった。一時の平和が訪れたのである。多くの犠牲を伴うことにこそなったが、彼らの偉業は永遠に後世へと語り継がれるであろう。


ラビィ・へファイストス著



読後もあとがきまできちんと読み、

グリフォンと呼ばれるの鳥の魔獣、フェルミナはパタンと本を閉じた。


ぼんやりと空を見つめ、星を眺めながら読後感を噛み締める。


今読んだお話は、武の勇者、カール・ハーゲンの一生だ。


そういえばカールが晩年にとった弟子がまだ生きているらしい。

どんな方なんでしょう。会ってみたいわ



次の日


「というわけで、いきましょ」

朝一番にフェルミナが発したセリフはそれだった。

「いやどんなわけやねん?何も理解できひんわ」

マクラがすかさずツッコミを入れる。

「細かいこと気にするなんてらしくないわね。こういうのは勢いよ」


「ああ、もしかしてリンフウ老のところ?あの本読み終わったんだ」

1人猪突猛進するフェルミナの考えを代弁したのはルナだった。


「そうよ!」

まだ寝ていたセレーネとオルがもそもそもと起きてきて、何事かと問う。

マクラの時と違い、フェルミナは事情を話す。

同じことを聞いてまともに返答を得られなかったマクラは、蜘蛛の巣事件*からフェルミナからの扱いが悪くなったようだ。

*4話参照


「つまり、フェルミナは聖地巡礼がしたいってこと?」

セレーネがフェルミナの話を総括して確認を取る。

「うーん、それもあるんだけど、1番の目的は修行かしら?」

「ほう。その心は?」

修行という言葉にセレーネは食いつく。

「ほら、わたしのメイン戦法って徒手空拳でしょ?魔法は苦手だし、剣は上手く使えなかったし」

正確には魔法の適正はかなり高いはずだ。ペルニシアから蒼眼を移植したのだから。だが、弟であるペルニシアを追い込んだ魔法の存在自体にフェルミナは苦手意識があるらしい。


「だからね。わたしにとって一番実用的な本がこの武の勇者の伝記だったの。その弟子からなら何か得られるものがあるんじゃないかって」

なるほど、フェルミナもきちんと自分の適正を考えているんだなとセレーネは関心する。


「フェルミナは色々かんがえててすげーな。よく分からないけど面白そうだし、私もいいよ」

オルもコクコクと頷きながら言う。

このオルという少女…本名オルゴ・ラズベリーはドラゴンの子だ。

フェルミナたちと同じようにしゃべれる特性も持っている。

だが、その肉体は他のドラゴンと比べてあまりに貧弱で、同族から蔑まれ、捨てられたのだという。


そうして1人泣いていたオルをルナ一行が拾ったというわけだ。

ちょうど、ルナたちが、王宮から出発してすぐのことである。


そして初めはルナたちに心を開かなかったオルだが、半年近い年月が経ち、

今ではすっかり打ち解けたというわけだ。


「我もフェルミナちゃんが行きたいならええよ。ほんとは海派なんやけどね」

「はいはい。マクラはいつも一言多いわよ。そうね、私も異論なし。それに前からリンフウ老には興味あったのよね」

ルナが会話を締めくくる。


こうして一行の次なる目的地が決定したのだった。

近くの街で調べたところ、武の勇者の弟子ガドロス・リンフウは、秘境、仙龍峰に住んでいることがわかった。


街から比較的近い山だったので、準備をしてその日のうちに出発する。


その山は体力自慢の冒険者にとっても険しい道だった。

しかし、セレーネたち魔獣にとっては、こうした険しい地形に適した生態をしているのだ。息を切らせつつも、特別苦戦することもなく登りきる。ルナは言うまでもなく問題ない。涼しい顔で登頂した。


道中Bランククラスの魔獣が何体も襲ってきたが、セレーネが予知で察知し、ルナが瞬殺することで安全に登頂することができたのだった。


登り着いた先。

ひと際標高い仙龍峰からは、辺りに広がる山々を見下ろすことができ、遠くにはいくつかの街が小さく見えた。それはまさに絶景だ。


マクラが目を輝かせながら「もう帰ってもええよね」といい、フェルミナがすかさずチョップをお見舞いする。

もう半年以上の付き合いだ。フェルミナには、今のマクラの言葉にフェルミナを困らせようとするイタズラ心がたんまり含まれていることがよくわかっていた。景色に感動したのは本当なのだろうけど。


だがあくまで目的は、武の勇者の弟子ガドロス・リンフウに会う事。

ここで帰るなど論外だ。



山あいに、飴色の木壁と黒い瓦屋根の小さな道場がぽつんと立っている。

正面の大きな引き戸には道場名の札。武神流の一文字。

神の名を関する道場などここ以外にはない。


目的の場所で間違いないようだ。


道場に入ると、ちょうど数名の人間たちが白い道着を着て組み手をしていた。

その動きは力強く且つ俊敏で、全員がセレーネ達より強いことが一目でわかる。それどころか道中で襲ってきた魔獣くらいなら難なく倒せるかもしれない。

その事実はルナ以外の一向は身を縮み上がらせる。


「おや?あなた方は?」

道場の前にいた師範らしき男がこちらに気づく。

背が高く、体つきもがっしりとしている。こちらに呼びかける声は迫力があるが、

優しさも感じられた。割と話しかけやすい印象を受ける。

年齢は30~40代といったところだろうか。

道場を仕切っているようだし、この人間がリンフウの一番弟子なのだろうか?


「私達は旅のものです。武の勇者のお弟子様がここにいらっしゃると聞いて、お会いしたく参りました」

ルナが淑女善とした態度で応じる。

「ああ、なるほど。確かに、うちの師範は昔武の勇者カール・ハーゲン様の弟子だったらしいですが…」

男は目を細める。その仕草からはこちらに疑念があることを感じる。

だが、その疑念の目をすぐに決して男は笑顔をこちらに向ける。

「ああ、申し遅れました。私は師範代を務めている、シュンカイと申します。それにしてもすごいですね。ここに来るまではかなり強い魔獣に遭遇するでしょうに」

シュンカイと名乗る男の目にまた警戒の色がのる。フェルミナは、びくりと体を震わせた。

よく考えれば怪しいに決まっていた。フェルミナは少女の姿に人化していたが、セレーネ、マクラ、オルは魔獣の姿なのだ。

だが、ルナは意に返さないというように涼しい顔で答えた。

「ええ。ですから、あなた方はここに道場を建てたのでしょう?強力な魔獣をも倒せる実力者だけを弟子に加えるために。いうなれば、ここに来るまでが入門の一次試験というわけですか?」

ルナの言葉にシュンカイは目を少し見開いた。

「聡い方だ。ええ。その通りです。それに師匠は俗世を忌避する方ですから。そう言った人避けの意味もあるんですよ」

「申し訳ありません。私たちが来たことはご迷惑でしたか?」

ルナが困った顔をすると、シュンカイは慌ててフォローするように言う。

「いえ、失礼。そう言う意味ではないです。ただ、師匠は武の勇者の弟子という箔もありますから、その…貴族様が勧誘しに来ることもあり…ですがあなた方のような珍しい来訪者はむしろ歓迎されると思います。師匠を呼んできましょう」


ここでお待ちくださいと言って、

シュンカイは道場の外へ速足で歩いて行った。


シュンカイが去ると同時に稽古が再開され、道場に再び活気が満ちる。

その光景を隅で私たちは眺めていた。


だが、どういうわけか、1時間してもシュンカイは戻ってこなかった。マクラは退屈そうに自分の糸をいじり始め、オルは昼寝を始めた。


その時。


「困ります!この道場は政治には関わらないという方針で」

複数の人間が、ずかずかと道場に入ってきた。

シュンカイが必死に制止しようとしているが、男たちはお構いなしだ。


「ふん。俺はあの五大貴族ナリキーン伯爵の遣いだぞ。つまり、この俺、シリンガルの発言はあの五大貴族と同等のものと心得よ」

そう言ってシリンガルと名乗る男は、傲慢な態度で一枚の紙を見せびらかすように取り出す。

それは、ナリキーン伯爵の遣いである証明書だった。でかでかと五大貴族の紋章が紙の真ん中に描かれている。


「ですが」

シュンカイは言い淀む。

五大貴族といえば、以前フェルミナの弟、ペルニシアを監禁して悪事を企んだ奴と同じだ、とフェルミナは思い出す。

そんな奴らの要件なんて碌なことじゃないに決まってる。この道場に被害が及ぶ可能性に思い至り、フェルミナは男たちに警戒の目を向けた。


「どうしたのですか?」

ルナがシュンカイに話しかける。

「それが、ちょうど師範を呼びに行ったところに、この方々がいらして道場丸ごと軍門に下れと。断っているのですが…」

シュンカイは言い淀む。五大貴族の命令となるとさすがに無碍にもできないのだろう。

「今俺たちは大事な交渉をしているのだ。女は引っ込んでいろ」

男はハエでも追い払うような仕草で、ルナに言う。

フェルミナは横目でチラリとセレーネをみる。

セレーネは意地悪そうに笑っていた。

相変わらず王女であるルナに気づかない貴族をあざ笑っているのだろう。


ルナは一歩も引かず、首を振る。

「兵役は国の緊急時、国王の許可があった場合のみと決まっています。相手の同意を得られないのならば、あなた方が引くべきです」

ルナの言葉に、男たちが狼狽える。ルナの言葉はこの国の法律を知り尽くした王女のそれで、反論の余地など何一つなかった。

シュンカイが助かったとばかりに、感謝を込めた目でルナを見つめる。

「ふざけるな。ここまで苦労してきたんだ。そんな理由で帰れるか」

だが男は、めちゃくちゃな理論で言い返す。

シリンガルとルナ、

どちらの言い分が正しいかは誰の目にも明らかだった。


その空気を感じ取ったのだろう。

だが、それ故かシリンガルたちは今この場で最も愚かな選択を取ってしまう。

「フン!文句があるなら力づくでもいいんだぞ。俺はA級冒険者でナリキーン伯爵のボディーガードでもあるんだ」

道場の門下生たちは、思わず顔を見合わせていた。

ここは国内最高峰の道場だ。おまけに師範のガドロス・リンフウは、最強の武術家である。


そこで権力から武力行使に切り替えるなど、愚かとしか言いようがない。

マクラが、盛大に噴き出す。マクラの笑い声につられて

門下生も肩をすくめて、苦笑いを浮かべ始める。


「な、なんだお前ら。何がおかしい!!というかなんで魔獣がいる!」

シリンガルという男が激高する。

「部外者で恐縮ですが、私がお相手しましょうか?この道場があなた方貴族の事情で迷惑をかけられるのは見ていられませんので」

スッとルナが構えを取る。

ルナはこの国の王女だ。貴族のこのような横暴なふるまいに多少なり責任を感じているのだろう。


だが、その正体を知らないシリンガルは、自分を見下されたのだと感じたのだろう。

怒りをあらわにしてルナに毒づいた。

「下賤な庶民が…なめるな!女だから手加減して貰えると思うなよ。望み通りぐちゃぐちゃにしてやる!」

「お、お待ちください。お客人に戦わせるわけには。私がやりますから」

シュンカイが慌ててルナを止めようとしたときだった。


「まぁまぁ。かわい子ちゃん。そこまでしてもらうわけにはいかねぇのよ」

「むぐ!?」

ルナがおかしな声をあげる。

ルナの口には何か食べ物が詰まっていた。


謎の声の主が入れたのだ。

フェルミナは一瞬しか見えなかった。蒼眼と緑眼で私の動体視力もかなり上がっているはずなのに、

なんというスピードと忍び足なのだろう。


ルナは困惑しながらも謎の食べ物を咀嚼し、ゴクンと飲み込んだ。

あのルナが後ろをとられるなんて、とルナを知る私たち魔獣組は全員驚愕する。


「…おいしい。これ…」

「うむ、これは最近巷で流行ってるポテトって代物じゃ。芋を加工して揚げて作るのよ。うちの畑で作ったやつで再現してみたんだが、うまいか。そりゃよかったのぉ。ひょっほっほ」


振り向くと、そこには1人の老人が静かに佇んでいた。

枯れ葉のように細い腕、ちょんまげに結われた白髪、

額には場違いなほど現代的なサングラス。年齢的には、彼がガドロス・リンフウだと考えるのが自然だ。だが、その貧弱な外見からそうだとはとても信じられなかった。






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