十八話 フラグは早めに回収するもの
(どうして、こうなった……)
唐突かつ意外すぎる二人の登場に、篤史は困惑していた。
何という速攻なフラグ回収。
しかし、今はそのことについては置いておこう。
「……おう。委員長。こんなところで会うなんて、本当に奇遇だな」
「ああ。全くだ。それで、そっちの人は?」
「あー、その、だな……」
「『いとこ』の翼です」
篤史が何と答えようか迷っていると、翼がすかさず答えた。
その答えに嘘はない。だが、きっと間違った解釈で受け取られているだろう。
しかし。
「ふーん、いとこ、ね」
隣にいた澄はどこか意味深な声音でそんなことを呟く。
それに対し、何か嫌な予感がした篤史は、話題をさっと変えようとする。
「お、お前らこそどうした? 二人して」
「ん? ああ、ちょっとこの辺りで用事があってな。霧島に色々と手伝ってもらって、お礼にここで食事してたんだ。それで店から出ようとしたら、見知った顔があったんでな」
「そ、そうか。そりゃまた凄い偶然だな。っと、そろそろ俺らも出なくちゃな。それじゃあ委員長、俺らはここで……」
「ねぇ委員長」
と、話を切り上げ、その場から去ろうとする篤史だったが、それを阻止するかのように、澄が口を開く。
「もう用事は済んだんでしょう? なら、この後時間あいてるわよね?」
「ん? まぁ、そうだな」
「なら、彼らと一緒にどこかに行かない? 折角こんなところで会ったわけだし」
などという提案をする澄。
無論、それに対し、篤史は断ろうとするものの。
「いや、俺らは……」
「はい、是非お願いしますっ!!」
…………何故か楽しげに答える翼によって、邪魔された。
と、そこで篤史は翼に耳打ちする。
「(おいこら翼、どういうつもりだ!)」
「(いや、あっくん。これも練習だよ、練習。さっきまではあっくん相手だったけど、他の人とも色々とやっておきたいし)」
「(それがどうしてこの二人なんだよっ。俺の立場、やばいだろうがっ)」
「(大丈夫だって。あっくんと僕はあくまで『いとこ』なんだから。さっきはこの状況見られたらまずいって言ったけど、相手がいとこだって分かってくれてたら、何の勘繰りもされないよ。それに、あっくんだって、別にどうでもないって言ってたじゃんか)」
事実を言われ、篤史は反論できずにいた。
そして、追い打ちをかけるように、澄が言葉をかけてくる。
「どうしたの、山上君。いとこさんはノリノリだけど? それとも、一緒に遊びに行くと何かマズイことでもあるのかしら?」
笑みを浮かべて、そんなことを言ってくる彼女に対し、篤史はというと。
「……い、いや? そんなことはないぞ。俺らもこれから暇してたところだし? むしろありがたい」
余裕をみせようとしながらも、どこかぎこちない声音でそう答える。
「そう。じゃあ決まりね」
そうして、一行は一緒に行動することになったのだった。
*
「……どういうつもりだ?」
移動中。
翼と柊が先行して歩いている中、篤史は澄に対し、問いを投げかける。
「どうもこうもないわ。たまたま会った知り合いと遊びに行こうと思ったそれだけ」
「嘘つけ。お前が俺のことを嫌ってるのは知ってるし、そんなお前が俺を遊びに誘うなんてありえないだろ」
澄の態度からして、何か思惑があるのは明白。
だからこその質問に、澄は淡々と答えていく。
「まぁ、確かにその点については否定しないわ。ただ、貴方の状況が面白……ごっほん。興味深いものだったから、もう少し観察しておきたいとおもっただけよ」
「おいこら本音がダダ漏れだぞ」
知っていたことではあるが、やはり彼女は性根がひん曲がっているようだった。
「まぁ安心しなさい。あの委員長がいるんだから、別に薬を盛ったり、催眠術をかけたりはしないわ」
「そういうことを言う時点で安心要素が皆無なんだが」
そして、彼女の言葉から考えて、それ以外のことならするつもりなのか、と少し疑ってしまう篤史なのであった。
「でも出会ったのが私たちで良かったわね。これが白澤さんだったら、貴方たち、確実に修羅場状態になってたわよ?」
「何で白澤と遭遇したらそうなるんだよ。お前もあれか。俺と白澤が付き合ってるとか思ってるクチか」
「さぁ? ただ、付き合っているいないに関わらず、白澤さんの場合、貴方が別の女の子と一緒にいることを面白く思わないだろうって思っただけよ」
「ハッ。何だそりゃ」
意味が分からんと言わんばかりな篤史に対し、澄はどこか呆れたような顔で続けて言う。
「……まぁ、あとはちょっと確かめたいことがあったからっていうのはあるけど」
「確かめたいこと? そりゃ一体―――」
「おい二人とも。なにやってる。早くしないと置いていくぞ」
言われ、篤史たちは会話をやめ、柊達のもとへとむかっていくのだった。
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