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十五話 女友達がいると付き合ってるのって言ってくる人いるよね

『―――で、あっくん。友里さんとはどこまでいったの?』


 それはある日の夜のこと。

 両親が再び仕事で出張している中、篤史は一人夕飯を食べながら、従弟である翼と電話していた。


「何だよ。っつか、どこまでいったってどういう意味だ?」

『ええ……あっくん。それはあまりにも唐変木すぎる回答だよ。でも、それではぐらかされる僕じゃないよ? だから敢えてより深く質問すると……何回エッチした?』

「っ!? ごほ、ごほ……おま、仮にも人気上昇中のアイドルがなんつーこと口走ってんだ!!」


 翼のとんでもない発言に、篤史は思わずせき込んでしまう。

 急いで水を飲み、落ち着いた後、電話越しに翼の笑い声が聞こえてきた。


『あはは、ごめんごめん。それじゃあ言い直すよ―――何回セッ〇スした?』

「おいこら余計にひどくなってんじゃねぇか」


 などと的確なツッコミを入れる篤史。

 仮にもこっちは食事中だというのに、何という下世話な話をしてくるのだろうか。


『えー、別にいいじゃん隠さなくても。だって二人は恋人同士なんでしょ?』

「誰がいつそんなことを言った。俺とあいつはただのクラスメイトで友達だ」

『……え? マジ? それ本気で言ってる?』


 篤史の言葉を聞いて、本気で驚いている声音で話す翼。

 どうやら冗談とかではなく、彼の中では、篤史と友里は既に付き合ている恋人という関係だったらしい。


『あれだけスタイルよくて、顔立ちも綺麗で、街を歩けば間違いなく皆に注目されるであろう彼女と一緒にいながら、全く進展なし……? 嘘、あっくんっていつからラノベの難聴主人公になったの?』

「意味の分からんことをつらつらを並べるな。特に後半はやけに具体的だが、全くもって理解できん」


 いや、正直なところを言うといわんとしていることは大体わかる。ただ、篤史はそれを認めたくないし、そもそもそういう展開になったことは一度もない。


『むー……でもさ、あっくん。本当のところどうなの? 友里さんと付き合いたいとは思わないわけ?』

「それは……」


 言われ、即答できない篤史。

 確かに、友里は見た目的なことを言えば、レベルが最高クラスの美少女だ。事実、学校でも一、二を争う程と言われており、毎回一緒にどこかへ出かける際は、必ずといっていいほど、誰かが彼女の方へ振り向いている。

 一方で、内面に関しては、恐らくほとんどの人間が知ればドン引きするレベルのオタクっぷり。けれど、それも篤史からしてみればもう慣れたものであり、逆に好感を持てており、問題視すべき点ではない。

 ゆえに、問題なのは、別の点。


「……俺は今の関係で満足してるっていうか、それ以上の関係を考えられないというか……そもそも、俺なんかを彼氏にするとか、絶対あり得ないだろ。それこそ、世界の終わりがきても無理なはずだ」

『うっわ出たよ。いつものあっくん理論。自分なんて自分如きが~とか何とか言っちゃってさ。そういう自己評価が低いところ、本当に相変わらずだね…………まぁ、あっくんが自己評価低くなっちゃった理由は知ってるし、僕がそれをとやかく言える立場じゃないってのは分かってるけどさ』


 後半、翼は明らかにどこか声音に気力がなくなっていた。

 そこには、どこか、申し訳ないと言わんばかりの何かが混じっているように思えたが、篤史は敢えて何も言わず、ただ彼の話を聞いていた。


『……でもまぁ、そうだね。あっくんに友達ができるってこと自体、珍しいことだし、その関係を壊したくないってのも理解できるよ。だから、これ以上は強制しない。ただ……もしも、そういうことで悩んだら、すぐに僕に相談してね?』

「翼……」


 篤史は一人っ子であり、兄弟と呼べる存在はいない。だからこそ、翼は昔から弟のような存在であると同時に、篤史が相談できる数少ない同世代だった。

 そんな彼には、いつも話を聞いてもらい、何度も愚痴を零している。

 そして、それは今も変わっておらず、篤史にとっても大事な従弟だ。

 それこそ、ストーカーから守ってやらなければと思える程の。


「……ああ。もしも、本当にそういう時がきたら、一番に相談するよ」


 友里を好きになることがあるのか、というより、篤史は自分が女性と付き合いたいと思える日がくるのか、正直想像できなかった。

『昔の自分』ならいざ知らず、今の自分にそんなことが可能なのか。

 分からない。分からないが……けれど、もしそんなときが来るのであれば、自分はきっと、いつものように彼に相談するのだろう。

 それこそ、今までのように。


「……それで? 今日電話してきたのは、それが目的か?」

『それもあるけど、今日は別の要件で電話したんだ』


 予想通り。

 流石の翼も下世話な話をするためだけに電話をしてきたわけではないらしい。


「それで? 本題は何だ?」

『別に大したことじゃないよ。今度、僕と一緒に恋人デートしよってだけの話だから』

「そうか、そんなこ……………………なんだって?」


 あまりにも予想外すぎる言葉に、思わず篤史は問いなおす。

 だがしかし。




『だから、今度僕とあっくんの二人で、恋人デートにいってほしいって言ってるの』




 それを聞いて、篤史は幻聴ではなかったのだと、理解した……否、理解させられたのであった。

面白い・続きが読みたいと思った方は、恐れ入りますが、感想・ブクマ・評価の方、よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] リアルハーレム野郎、性別や親族関係を越えて、とうとう従弟に手を出し始めるのか。まさにリアルハーレム野郎。
[良い点] ┌(┌ ^p^)┐ホモォ… 別にね、同性で恋人デートしちゃいけないなんてことは無いんですよ
[一言] ソレは主人公が女装するということで…?(ノ∀`)
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