表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/132

七話 ホラー映画の怪物ってどこか憎めないよね

 ホラー映画のような怪人が現れた。


 そんな状況においてとるべき手段はただ一つ。逃げる。それだけだ。

 けれど、篤史たちは、すぐさまその場から立ち去ることはしなかった。

 いや、この場合できない……というより、逃げる必要がなかったから、というべきか。


「―――、―――、―――っっ!」

「……えーっと、あれは一体どういう状況?」

「……普通に見ただけのことを言うなら、鉈が天井に突き刺さって、抜けなくなってる、みたいな?」


 廊下の一番奥。その部屋において、仮面を被った怪人は、天井に刺さった鉈をどうにかして引っこ抜こうとしていた。

 先ほど、澄に対して振り下ろされそうになっていた鉈。だが、それは振り下ろされることなく、天井に突き刺さってしまったのだ。そのおかげで、澄は無事に篤史のところまで逃げてきた。


(何だろう……あんなナリしているせいで、かえって逆に滅茶苦茶間抜けに見える……)


 などと篤史が考えている最中にも、両手を使い、思いっきり引っ張ることで、怪人は鉈を引っこ抜くことに成功。

 しかし。


「―――っ!?」

「あっ、転んだ」

「まぁ、あれだけ力んで引っ張ればな」


 仮面の怪人は頭を押さえながら、こちらの方を向く。

 そして、今度こそ、篤史たちに向かって無言で前進してくる。

 ……はずだったのだが。


「―――っっ!?」

「今度はドアの上の壁にぶつかったわね」

「まぁ、あの巨体だからな」


 仮面の怪人の大きさは二メートルを軽く超えている。対して、この廃墟のドアの高さは二メートルもない。ゆえに、頭を下げて通らなければ、ぶつかるのは必然。そんなのは見ればわかるはずなのだが、この暗さ、そして仮面をつけていたせいか、見えていなかったのだろう。


「―――、―――、―――っっぅ!!」

「えっと、あれ、もしかして壁に向かって怒ってる?」

「あー、確かに頭とかうったら、モノとかに当たることはあるしな……」


 何度かドアにむかって拳をぶつけ、挙句鉈で攻撃する姿は、完全に子供が癇癪を起こして、モノにあたる姿そのもの。

 だが、それが永遠と続くことはなく、ある程度すると、ゆっくりとこちらの方を振り向いた。


「って、やばっ、こっちに向かってきた……!?」


 そこでようやく篤史たちも危険を再び覚え、その場から逃げようとする。

 そして、それを追いかけようと、怪人もまた足を進めた。

 ……のだが。


「―――――――っ!?!?!?」


 次の瞬間、何やら木材が壊れる音と共に、怪人の姿が一瞬にして消え去った。

 その光景を前にして、澄は篤史に問いを投げかける。


「………………もう一度聞くけど、何が起こったの?」

「いや……単純に廊下を歩いてたら底が抜けて、そのまま落ちて行ったとしか……」


 ありのまま、今起こったことをそのまま口にしてみる。

 ……うん。自分で言ってても、何を言ってるのかさっぱり分からない。


「一体、何だったの、アレ……」

「いや、俺に言われてもな」


 先ほどまで起こったことに対し、困惑する篤史と澄。

 そんな折。


『あー、テステス、聞こえますか、篤史さん』

「っ!? その声は、白澤かっ!?」


 聞き知った声に篤史は思わず、声を上げた。


『どうやら二人とも無事のようですね』

「この状況を無事と言えるかどうか、怪しいもんだけどな……それで白澤。これは一体どういうことなんだ?」


 一体全体、何が起こっているのか、それをいち早く知りたい篤史は友里に問いを投げかける。


『簡潔に言いますと、現在、外部からのハッキングで、ゲーム機が乗っ取られている状態で、今、お二人だけが取り残されています。でも、委員長が何とか頑張ってくれてて、何とかなりそうなので、安心してください』

「いや頑張ってって……」


 何をやっているんだ委員長。

 そしてどうしてそんなことができるんだ委員長。

 と、色々とツッコミを入れたくなる状況だが、しかしそれで現状が打開されるのなら、それに越したことはない。


『ただ、流石の委員長でもかなり厳しい状況で、今も手が離せない状態です。それで、二人の知り合いである私が、こうしてガイド役を任されたというわけです』

「そうか……それで、白澤。俺らはこの後どうすればいい?」

『基本的には何もしなくて大丈夫です。こちらで強制ログアウトさせる準備してますので。ただ、それにはもう少し時間がかかりそうで……それで、お二人には絶対に守ってもらいたいことがありまして……』

「守ってもらいたいこと?」

『はい……何が何でも死なないでください。そうしないと、二人をログアウトさせることができなくなってしまいます』

「死なないでくれ、か……穏やかじゃないな」

『通常なら問題ないのですが……ただ、もうお気づきかもしれませんが、篤史さん達は先ほど、私たちとやっていた海のバカンスゲームとは違うものをプレイしている状況です。で、それは結構な比率でプレイヤーが死ぬゲームらしくて……』


 だろうな、と呟く篤史。

 何せ場所すら変わっている状況だ。ゲームが変わっているとしか思えない。


「ちなみに聞くんだが、それってどんなゲームなんだ?」


 何となく理解はしているものの、確固たる答えを得るために篤史は問う。

 そして。


『「ナイトメアカーニバル」。色んな怪物やら怪人やらが出てきて殺しに来る、ホラーゲームのお祭りゲーです』


 予想通りの最悪な答えが返ってきたのだった。

面白い・続きが読みたいと思った方は、恐れ入りますが、感想・ブクマ・評価の方、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ピンチと思ったらギャグww \ カーニバルダヨ!!/ [気になる点] カーニバル…悪夢…うっ頭が \ カーニバルダヨ!!/ [一言] 委員長、いったい何者なんだ… \ カーニバルダヨ…
[一言] リアルハーレム野郎の篤史君、とうとう種族を越えて、怪物や怪人(♀限定)もハーレムの毒牙の対象に…。
[一言] 本当にデスゲームかあ。 しかし、鉈のやつはおまぬけ。 鉈というと、アニメのひぐらしのレナのやつ… 原作では鉈じゃなかったとかあったけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ