メイドさん、妄想しました2
夢、想像、妄想。全て似ていて何か違う。
俺は今この後ろで大人しく立っている茜さんで妄想するのがちょっとしたマイブームになっている。
例えば、さりげなく見せているこの恋愛映画。こう見えて俺は映画観賞は趣味としているのだ。
レンタルビデオショップで借りてきたのだが、そこそこ気になっていた程度で、借りてまで見ようとは思っていなかった。しかしこれのパッケージを見たときに、あることをひらめいた。
茜さんに見せたらどんな反応をするだろうか。
『感動したね。グスン』
『恭介様…ぐすん…私たちもこんな関係になりましょうね…』
『茜さん!』
『恭介様!』
そう思ったらレンタルするDVDもすんなりと決まった。
今日は純愛もの。タイトルも『愛する彼を追いかけます』。
内容は普通の恋愛もので、主人公の女子大生がいて、その子が好きになったのがたまたま行った病院で出会った余命半年の20歳の男の子。なんやかんやあって付き合うことになるんだけど、まぁ余命半年って宣告されてる以上、無茶は出来なかった。そして残りの1ヶ月で病状は急変。最後は看取ることも出来ないまま女子大生は懸命に生きていくのでした。おしまい。
そんな映画だった。
俺としては微妙だった。タイトルとは違って、最後は追いかけて心中するかと思っていたら、『私、頑張って生きていくね』と言って終わったし。
妄想通りにはいかないものだった。しかし…
「…うおっ」
茜さんの方をチラッと横目で見てみると、目を閉じて静かに涙を流していた。
そんなに感動したか。
思わず小さな声で驚いてしまったが、茜さんはそれどころではないようで、全く気付いていなかった。
静かに流ている涙を、赤と黒のチェックのハンカチで拭っていた。
茜さん可愛い。
初日のあのドジっぷりもあったが、それ以降は全然表情を崩さないでツーンとしているのだが、こーゆー場面を見てしまうと、普段の茜さんがメイドとして頑張っていようとしているのがよくわかるってものだ。
変な想像をしていた俺がなんか悪いことをしているみたいでちょっと恥ずかしい。
しかし茜さんで妄想するのは止まらない。
『茜さん…涙が流れてるよ』フキフキ
『恭介様…』ダキツキ
『茜さん。俺たちもそろそろ愛を育もうか』ナデナデ
『…はい』ラブラブ
よしこれだ。これなら全然自然だ。
そうと決まれば早速行動!
「茜さん!」
「はい」
「…あれ?」
振り向いたときには茜さんの涙は完全に止まっていた。ちょっと目は赤かったが、泣いてはいなかった。
手に持ったティッシュの箱が行き場を失ってフラフラとしている。
「恭介様? どうかされましたか?」
「い、いや、なんでもないです。今の映画面白かったね」
「はい。大変感動しました」
「それはよかった」
俺は座り直して、ティッシュの箱をテーブルの上に戻した。
…まぁ茜さんが感動したなら良かった。借りてきて良かったってものだ。
「それではおやすみなさいませ」
「うん。おやすみ」
その後、俺は寝ることにした。
自分の部屋に入ってベッドに寝転がった。
そして考える。このあと茜さんが…
『恭介様…』
『どうしたの? もう寝たら?』
『先程の映画を見ていたら、その…』
『映画?』
『もし明日起きたら恭介様に会えなくなってしまったらと考えると…私…私っ』
抱きっ!
『えっ…』
『大丈夫だよ。俺は居なくならないし、茜さんを離さないよ』
『恭介様…』
って感じで部屋に入って来ないかなーとも考えたけど、そんなことはなく、目を閉じて寝ることにした。
あー茜さん。可愛すぎるわー。
こんなに考えてるんだから夢に出てこないかなー。
ぐーすかぴー。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
安定の不定期で申し訳ございません。
現在、『うろな町』計画というものを実行中でございます。
興味があるようでしたら覗いてみてください。
参加者募集中でございますー
メッセージでもコメントでもお受けしてますので、よろしくですー
http://kyodo765.jimdo.com/