76話 メタルゴーレム
兵士に包囲されそうになった俺たちは、全速力で逃げていた。竜の力を使い、ひたすら走る。
正直、俺がダントツで遅い。体が幼いこともあるが、獣人のシロとクロは種族的にも駆けるのが速いのだ。
それでも、身体強化、風魔法を使い、なんとか後をついていく。風魔法で加速する方法を練習しておいてよかった。
兵士たちは完全にぶっちぎっただろう。時折悲鳴が聞こえるのは、魔獣に襲われているせいだ。あえて魔獣の傍を通り抜けることで、かち合うように誘導してやったからね。
数は少ないが罠もあるし。俺たちの場合、先導するシロが竜眼で罠を見抜いてくれるので、引っかかることがないのだ。
道中で休憩を挟みつつ、俺たちは深層を進み続けた。
以前は3日ほどかけて踏破した道のりを、数時間で駆け抜ける。まあ、前の時は身を隠しながら探索も行っていたからね。
突っ切るだけならこれくらいだろう。
既に深層の奥地へと入り込み、キラートレントを倒した。アレスに殺されかけた場所までもう少しだ。
ただ、俺たちはそこで完全に足止めを食らう。初見の魔獣に行く手を阻まれたのだ。
それは、身長2メートルほどの人型ゴーレムだった。黒光りするボディが厳つい、メタルゴーレムである。
当然食用ではなく、弱点や能力も分からない。分かっているのは、その巨体に見合わぬ速度だけだ。
最初、俺たちはこいつを迂回しようとした。食用にもならない面倒な相手だしね。だが、森の中へと逃げ込んだ俺たちを、凄まじい速度で追ってきたのだ。
その足の速さは、俺の全速力といい勝負だった。このまま追われ続け、上位の魔獣と挟み込まれるのはマズい。
結局、戦う以外に道はなかった。
「魔法で弱点を探っていくぞ!」
「シロ、やったるです!」
「クロもー」
まずは様々な魔法を使い、弱い属性を発見しようと考えたんだが……。
「どれも全然効かないな!」
「風も光も弾かれるです!」
「火も闇もー」
試しに放った魔法がほとんど弾かれてしまい、弱点どころか効きやすい属性すら判らなかったのだ。土魔法の弾丸もあっさり弾いたところを見るに、物理的な衝撃にも強そうだった。
また、全身の様々な部位を攻撃してみたりもしたが、嫌がる素振りもない。核はあの堅い金属の鎧の内側ってことなんだろう。
トータス・トレントといい、防御力高めの魔獣が多くないか?
ともかく、こういった相手に俺たちが取れる手段は1つしかない。
「本気の一撃でぶち抜くしかない。シロは囮役を、クロは土魔法で奴の足を止めてくれ」
「シロ、最強の囮になるです!」
「クロもがんばーる」
まずはシロが飛び出していった。
高速でメタルゴーレムの背後に回り込むと、そのアキレス腱あたりを斬りつける。だが、深い傷にはならない。
風魔法に加え、多少は竜の力も込めているはずなんだがな。
だが、真後ろから攻撃されたことで、メタルゴーレムの意識がシロへと向く。そこに、クロの土魔法が炸裂した。
まあ、攻撃をしたわけじゃないけど。
クロが使ったのは、土を操る魔法だ。ゴーレムが踏込もうとした瞬間、足元に土の壁を生み出して躓かせたのだ。
倒れるほどではないが、たたらを踏んで動きを止める。
「くらえ! 黒炎撃!」
今回は上位魔法ではない。魔力を強めに込めた中位魔法だ。俺の放った黒い炎の砲弾がメタルゴーレムの背中に命中した。
直後、大きな爆発が発生し、周囲に爆風が吹き付ける。キーンとする耳を軽く押さえながら俺は砕けて飛び散る金属片を見つめていた。
柔らかい素材でできていたかのように、ゴーレムの全身が砕け散っていたのだ。クロが咄嗟に土壁を張って、守ってくれる。土の壁に当たる破片の鈍い重低音が、爆発の威力を物語っていた。
「い、威力ヤバかったな」
「すごいですトール!」
「かっくいー」
シロとクロが褒めてくれるが、想定以上の威力に自分で引いちゃったよ。上位魔法には及ばないが、俺の想像の倍くらいの爆発は起きていた。
「中位魔法を使う時も、込める魔力に気を付けないとマズそうだ」
まあ、それよりも何かを食わないと。強敵を倒した後に食事休憩を取ることが当たり前になってきちゃったな。
とりあえずジャーキーを取り出して口に入れる。でも、その程度では倦怠感は消えない。上位魔法程じゃないが、一気に魔力を失ったからだろう。
近くにあった岩に腰かけ、ジュースも飲んで一息つく。
すると、シロがメタルゴーレムの残骸へと駆け寄っていくのが見えた。そのまま残骸の山を何やら漁り始める。
魔石を探してくれているのか?
「あったです!」
やはりシロが探していたのは魔石だったらしい。高々と掲げて、ドヤ顔をしている。しかし、すぐに首を傾げると、再びその場でしゃがみ込んでいた。
「どしたのー?」
「ここに……あったです! これ!」
「おー、あおいいし」
シロが手にしているのは、青い水晶だった。トータス・トレントの宝箱に入っていた緑水晶や、白霧が落とした赤水晶によく似ている。
多分、この先へと進むために必要なアイテムだと思うが……。
「! なんかくるです!」
「くるー」
え? 急に空を見つめてどうした? いや、もう俺にも分かった。凄まじい速度で、何かが近づいてきていた。
俺たちは、慌てて茂みの中へと飛び込んだんだが――。
「見つけたぞぉぉぉぉぉ! 生贄どもぉ!」
空に浮かぶ絨毯の上から、ミイラのようにやせ細った不気味な老人が叫んでいた。明らかに、俺たちの隠れる茂みを睨みつけながら。
なんとか体調戻りました。ただ、休んだせいで様々な執筆作業に遅れが……!
今月は4日に1回更新とさせてください。申し訳ありません。




