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27 僕の装い

※注意。

重要なお知らせ。胸糞展開の鬱話です。

今話と次話には親からの虐待、ならびに性被害といった内容が含まれます。

それらの要素が無理な方はブラウザバックをお願いします。

読んでみても途中で無理と思われた方もバックをお願いします。

次々回から平常話に戻る予定です。

 ――ケイちゃん。



 遠くて近い所から声が聞こえる。



 ――ケイちゃん、起きて。



「ん……」



 夢、か……。

 ヒドい夢を見た気がする。しかも二部構成で。

 遠い記憶と近い記憶。どれも曖昧な幻のような、だけどハッキリしたカタチになっているような思い出。



「はあ、居眠りしたのに疲れてるってなんなんだよ……」


「うなされてたよ、ケイちゃん」



 男と女の中間のようなハイトーンの澄んだ石田の声が耳朶を打つ。



「ああ、ちょっとした悪夢を見てさ。とくに二部目はリアル体験じゃないコトを願ってるわ」


「体も馴染んでないかもしれないし、あまり無理しないでね?」


「優しい言葉みたく聞こえるけど、この馴染まない体はオールお前のせいだってコトを自覚しろよな……って、なに、お前のそのカッコ!?」



 眠りから目を開けると心配そうに俺を覗き込む石田がいた。

 けれど、その格好はさっきまでの学校の制服ではない。



「え、あ、これ? えっと……どうかな? ヘン?」


「いや、ヘンっていうか……似合ってる。うん、似合いすぎだ」


「ふふ……ありがとう。キミに褒めてもらえるなんて、今日は人生で一番の日だよ」



 顔を赤らめ恥ずかしそうに身をよじり、俺の視線から逃れるように二の腕で体を隠す石田。決して変ではない。本当に似合っている。

 むしろ石田はこうあるべきなのでは? というくらいに自然とも思えるその姿。



「でも、お前どうしちゃったの?」


「その……僕の自然な格好っていうか、ね。こんなカンジがホントの僕なの。ふふ、ケイちゃんが寝てる間に髪も能力で長くして、服も学生服を分解再構成を施して作り直したの」


「仕組みとかはどうでもいいんだけどさ。結局、自分も女の子になっちゃったの? てか、やっぱお前、女の子になりたかったってことなの?」



 俺の目の前に立つ石田の姿。

 黒いゴシックロリータのワンピース。長い髪をツインテールに結わい整えている。今までの男子制服ではなく、石田の女の子らしい容姿を十二分に引き立てる可愛らしい装いをしていた。一体ナニガアッタンダ、オマエ。


 石田は俺の問いに恥じらいの顔から一転、ポカンとした表情になり「なに言ってんの?」の顔をする。俺のほうがなに言ってんの? 状態なんだけど。



「ううん? 女の子になんかなってないし、女の子になりたいなんて生まれてから一度も思ったコトないよ? ケイちゃんて、ちょっと意味不明な発言をする時があるよね」


「お前のがよっぽど意味不明だ! だって今、そのカッコがホントのお前で自然な姿って言ってたじゃん」


「……うん、そうなんだけど」


「どうした? なんか暗い顔してんぞ」


「ケイちゃんには話しておきたいことがあるの。……話は上手くないけど聞いてくれる?」



 石田は深呼吸をすると顔を下げる。

 その表情がどうなっているのか見ることは叶わない。ただ、なにかの決意を固めている。そんなふうに思わせるそぶりを見せていた。

 そんな態度になられたら知らない顔は出来ないだろう。さっきまでの浮ついた石田が今は悲しさを堪えているようにも思える。


 ったく、やっぱなにか隠してたのかよ。しょうがねえなあ……。



「わかった。吐き出したいコトがあんなら言っちゃったほうがいいぞ」


「ありがと、ケイちゃんはやっぱり優しいね。……じゃあ、支離滅裂かもしれないけど最後まで聞いて?」



 下を向いたまま彼は小さな声で語りだした。




 ◇◇◇




 僕ね、子供の頃から女の子のカッコをするのが好きだったんだ。

 最初は母親が僕にスカートを穿かせたりしていたのが切っ掛けだったんだと思うんだけどね。

 いつの間にかそういうのが当たり前になっていて、自分でもスカートとかワンピを着るのが好きになってた。


 父親も最初は「可愛いね」みたいに褒めてくれてたんだけど、女の子の格好を楽しんでいる僕を見て段々不安を覚えたんだろうね、小学校は私立の男子校に入学することになったんだ。

 男の子達の間で揉まれて少しでも逞しくなってほしいとか、そんなふうに思ったのかもしれないね。


 その学校は小中高一環校で、小学生も制服だったんだけど髪の毛は長いままにしてたの。

 学校側からとくに髪の毛はうるさく言われるコトもなかったからね。父はあまり良い顔はしていなかったけれど、切れとまでは言わなかった。だから今のこの髪型と小学校の制服で過ごしてたんだ。


 結構、学校の子達の間でも人気があったんだよ? 「たっちゃんってカワイイね」って。そうだね、ちょっとしたアイドルみたいな感じになってて、僕もなんだか良い気になってたんだよね。

 私服はやっぱりスカートがメインでね。母は僕のその姿を、よく写真に収めてくれていたんだ。

 うん、嬉しかったよ。可愛い自分とそんな僕を褒めて写真に残してくれる母、そしてチヤホヤしてくれる友達。

 毎日が楽しくて面白くて、こんな日がずっと続いていくと信じてた。


 その写真を誰が見ていて、どんな使われ方をしてるかなんて、子供の僕は考えもしなかった。


 小学校の六年生くらいから僕には好きな子が出来てね。同じクラスにいた男の子。スポーツ好きでカッコよくて、リーダーシップもある子だった。うん、男子校なんだからわざわざ『男の子』って言う必要もないよね。そう、僕、同性を好きになるんだ。

 男としか恋愛出来ないのかって? ううん、そんなことないよ。っていうか、じつは僕もそう思ってたの。同性しか好きになれないのかなって思ってた。それはつい最近までっていうか、ほんのさっきまでね。


 まあ、その話はまたいつかケイちゃんにもするから今は話を戻すね?


 でも、好きになった気持ちは隠してたの。同性を好きになるなんて自分でもヘンだと思ってたし、まだ小学生だもの。それがバレてキモがられてイジメにあったら嫌だったから、その子ともそれなりに仲良くしながら小学校生活は終えたんだ。


 変化があったのは中学二年生の時。その頃になるとみんな異性のコトで騒ぐようになってて。うん、男子校だから校内で異性との出会いなんか皆無だよね、みんな塾とか兄弟姉妹の友人なんかの女の子の話題で盛り上がってたよ。

 でも、いたんだよね。校内で付き合っている子たちも。そう、同性同士なんだけどね。まあ、どこにでもある話だよね、でも当時の僕は結構衝撃を受けたんだ。『ああ、同性を好きになってもいいんだ。そういう気持ちを抱いても通じる相手もいるんだ』ってね。


 だから僕も勇気を出して告白したの。受け入れられなくてもいい、けれど気持ちは届けたいって。

 彼は答えをくれた。笑いながら言ってくれたんだ、僕と付き合ってくれるって。嬉しかったよ、気持ちが届いたんだ、この人を好きになって良かったって。


 本当は彼がなにを思っていたのかなんて想像も出来なかった。


 しばらくは普通に付き合っていたの。恋人の付き合いっていうより親友みたいな感じだったかもしれないね。うん、もちろんヤラしいコトなんかしてないよ? あの時まではね。


 ……あの時ってなんだって? うん、えっとね…………。


 はは、自分で言い出した話なんだもんね。

 もったいぶっても仕方ないよね……うん、わかってる、ケイちゃんには言っておきたいコトだもん。



 …………輪姦されそうになったの、彼とその友達にね。

 あ、そんな顔しないで? 結論を言えば未遂だったんだ。うん、平気。平気じゃないけど僕は大丈夫だから。


 冬休みのある日に彼にお呼ばれしたの。廃部になって使われなくなった、部室棟のとある一室にね。

 どうやってか知らないけどその部室の鍵を手に入れたから、そこで隠れて遊ぼうって。


 正直言うと少し覚悟はしてた。彼がソッチ目的で僕を呼んだんじゃないかって。だってお互い思春期だし、彼もそういうのに興味がないなんてコトもないでしょ。

 はは、まさか六人も部屋で待ち構えてるとは思わなかったけどね。


 彼は友人と僕を押さえつけながら言ったの。「オマエやっぱ男が好きなんだな。裸がオカズにされてるだけあって、顔も体も女みてえだしマジ笑えるわ」とか言ってたかな。

 どうやら母が撮った写真がネットで売られていたらしくてね。彼はどこからかそれを知り、その写真を入手したらしくて画像もその時見せられたんだ。……うん、たしかにそれは母が撮った僕だったよ。


 じつはね、母が撮った写真はスカートとかワンピ以外にもあるの。女物の水着だったり…………裸だったりね。そう、裸。半裸だったり全裸だったり。小学校以前から、ずっとそういう写真も撮られてたんだ。


 母からは父には内緒にしておけって言われてて。バレたら女の子の格好も禁止されちゃうって言われたから、僕も母の言いつけを守っていた。女の子のカッコも続けたかったから、なんの疑問も持たないでね。


 でも僕はあくまで家族間で撮った写真だと思ってたし、まさか他人が見るなんて思ってもいなかったから、母の要求する姿やポーズをとって写真に納まっていた。今考えればおかしいことだらけなんだけどね。物心ついた時からしているコトって、異常なことでも普通の日常なの。なにかがヘンだって感じてはいても普通のコトだから、ドコがおかしいのか僕にはわからなかった。


 押さえつけられて服を脱がされそうになりながら僕は頭が真っ白になっちゃって。乱暴されそうになっている状況と写真のことの理解が追いつかなくて抵抗する余裕もなかった。

 そしたらソイツらは言うの。「コイツ抵抗しないぜ。やっぱ男とヤリまくりなんだろうな」って。

 実際はパニックで体が動かないだけなんだけどね。クズは自分に都合よく考える頭しか持ってないみたい。


 結果的には僕は助かった。

 たまたま部室棟の廊下の切れた灯りを交換しにきた用務員さんが気づいてくれてね。不幸中の幸いかもしれなかったけど、そこで話は終わらなくて。

 問題が発覚してからウチでも大騒ぎになった。そこで父が母を問い詰めたの。どうして僕のあんな写真を撮っていて、誰がそれを売っていたんだって。


 どうもこうもないよね、わかるでしょ? そう、母が売ってたんだ。自ら撮った息子のあられもない姿をネットで変態達にね。

 じつは写真以外にも動画も売ってたみたい。母は動画も結構撮ってたから。それも僕にとっては、ごく当たり前みたいなものだった。イヤだな、って思う時もあったけどね。


 内容? あはは、いくらケイちゃんでもそれは言えないかな……話しておかなきゃって言ったけど、それは無理……ホント、ゴメンね。



喜劇とは一体。次回で鬱話はおしまいですが、作品ジャンルはコメディでいいのか悩み中です。


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