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19 解、のちビーム

「一、は、さっき言ったよね。ケイちゃんと一緒に、この世界に来たかったって」


「ああ」


「で、二ね。同意を得なくても実際に来てみたら、なんだかんだで気に入ってくれるかな? って思って。ほら、住めば都って言うじゃない? 例えばこの草原だって、住み続ければ慣れてそのうち都になっちゃうかもよ」


「例えても都になんかならねえからな? 気に入りもしねえし、住み続けねえし、慣れもしねえし、草っぱらはどうしたって草っぱらだよ!」


「もお、土地開発のひとが聞いたら泣いちゃうよ? で、三ね。僕って男の子じゃない?」


「まあ、そうだな」



 超女顔だけど、一応こいつは男だ。

 ひん剥いて全てを確認したわけじゃないけど、体操着やシャツの上から見た限りは男の体だった。


 体育の時の着替えの最中に見えたパンツも、男物のボクサーパンツだったし、付いてるのは確認済みだ。上半身も華奢なうえに綺麗で、一瞬女と間違えそうな体だったけど、一応はオトコだったよ。うん。それは間違いない。


 って、別に普段から、女っぽいコイツの体をジロジロ観察してたわけじゃないぞ。席が近いから、たまたま、ホントたまたま見えちゃっただけなんだからな。


 ホントだよ? マジでホントなの!



「だから、やっぱり旅の同行者は異性のほうが……男なら相棒は女の子、女なら相棒は男の子のほうが良いと思うのは普通じゃない? まあ、テンプレは守らなきゃだよね」


「テンプレってなんのだよ? それを律儀に守る理由はなに!?」


「ケイちゃんだって、絶対に同性同士の二人旅なんてテンションダダ下がりになるかな? って思ったの。そう、全部がケイちゃんの為って言っても過言じゃないね」


「…………なニ言ッテんダオまエ」


「だから、ケイちゃんは女の子のほうが良いよねって結論に至ったわけなの」


「ナニソレ」


「一緒に行きたい人はケイちゃんの他にいるわけないし、そうすると僕は男だから、必然的にケイちゃんが女の子になる以外、選択肢はないでしょ?」


「チョットマテ」


「ふふ、男女のふたり旅なんてドキドキしちゃうね! あ、でもでも、お互いに節度を持って、清らかな関係で仲良く冒険しようネ!」


「フフフフフフフフ」


「ふふふふ。ケイちゃん、そんなに嬉しいの? ……うん、うん。だよね! 僕も本当に凄い嬉しいよ!」



 俺は耐えた。ここまで耐えた。

 俺、超がんばった。


 ……だから、いいんだ。

 もういいんじゃね? 俺。


 うん、いいよな、もうさ!



「しようネ! じゃねえ! 全然嬉しくねえよおおおおおお! そんなに異性と旅がしてえならテメエが女になりゃいいじゃねえかよおおおおおおお!? 超女顔のクセしやがってなに言ってんだオマエエエエエエエエエエエ! てか、俺を巻き込むなよなああああああ! オレこの話になんの関係もなさそうじゃんかよおおおおおおおおおおおお!」


「なんで僕が女の子になるの? さっきもそんなこと言ってたけど、ケイちゃんて、もの凄く理不尽で意味不明なことを言ったりするんだね?」


「オマエ、ちっと表に出ろやあああああああああ!」


「ケイちゃん落ち着いて! そんなんだと、あのヤンキー女神様みたいにヤサグレちゃうよ。女の子はもっと淑やかにいかなきゃね? あと、僕みたいに『達哉』なんて名前で女の子になっても、名前を呼んだ時点で微妙な空気になると思うよ?」


「名前の問題じゃねえよっ! 俺の圭って名前で女になったって、微妙どころかとんでもない空気になってるのをわかれよなあああああ!?」 


「ケイちゃん、そんなに叫ぶと吐血しちゃいそうだよ?」


「お前のせいだあああああああ!」


「まあまあ落ち着いて? ほら、僕も一応、立派な思春期の男子だからね。なんと、女の子に興味があるっぽいことが判明したんだよ。凄くない?」


「ゼエゼエ、はあはあ……。なにも凄くないのに判明とか仰々しく言うな。あと、その女顔で女好き宣言されるのは微妙な心境になるが、今進めたい話はソレじゃねえ。ゲホ」


「どういうこと?」


「待て、その前に聞かせてくれ。ゲホゲホ、お前のチート能力ってのは、投網で魚を捕ったりだとかログハウスを出す以外には、どんなことが出来るんだよ。グゲホ」


「どんなって、どういうとこで?」



 咳き込む俺の背中を優しく摩りながら石田が聞く。

 優しくするポイントが間違っているのをツッコみたいけど、聞きたいコトが山積みなので泣く泣く堪えることにする。グスン。



「あー、例えばさ。こう、戦いの場面なんかでな。さっきの空気弾みたく触れもせずに敵を倒したりだとか」


「ふんふん?」


「そこら一面を、一瞬で炎の地獄にしちまうとかさ、平たく言や、お前が貸してくれた本の主人公みたいな圧倒的な力みたいなのはあるのか?」


「うーん、ステータス画面を見てみると、色々と出来そうではあるんだけど」


「ステータス画面? そんなもんがあるのか」


「うん。意識すれば、各種データがわかる画面が見えるようになるんだよ。僕本人にしか見えないけどね。それで自分のスキルもわかるの」


「色々なあ……まさか、目からビームなんか出たりしないよな?」


「えーとね……」



 石田が右を向いた。

 その目線の先には窓があり、その先の外の景色に目を向けているようだ。


 シュン!


 石田の両目が眩しく光った。

 空気を裂く音が短く響くと、窓ガラスに二つの小さな穴があく。




 ゴオオオオオオォォォォォォン…………。



 俺たちのいる建物が振動で揺れる。

 窓から遠く見える丘からは、とてつもない巨大な爆炎が巻き起こるのが見える。

 見たくはなかったが、見えてしまった。


 ははは、本当に見たくなかったなあ、あれ。

 知らないほうが良かったな! こんなこと。



「あ、ちゃんと出た! どうかな! ケイちゃん。凄くない?」


「そうだね! 石田君! キミって凄いんだね! アッハッハッハッハ」



 石田が窓から俺のほうに顔を戻し、極上な笑顔を向けてくる。

 カラクリ石田と命名したいほど、「ギッギッギッギッギ……」と軋む音が聞こえてきそうな首の回り方をしてる。おまけに口の端から「フシュウウゥゥ……」の音と一緒に本物の白煙が出てる……。


 怖え!

 こいつの心底満足げな可愛らしい笑顔が、超怖えよ!

 マジで怖い。人生で二度目の恐怖だ、これ。

 そう、だからね、怖いからね。


 おーい。誰か俺を助けろ!


 いや、本当に助けてください。誰でもいいです。

 あ、ヤンキー女神はお断りです。

 アイツに頼んだら助けたことを恩に着せて、それこそ死ぬまでタカラレそうな気がするわ。


 あのヤンキー以外のヤツ。マジでお願いします!



「あ、窓に穴が開いちゃった。修理しなきゃだね」


「ソウダネー。壊レタラ修理スルノハ当然デスヨネー」


「ケイちゃん、声が固いしカクカク喋っているのはなんでなの?」


「ハッハッハ、滅相モゴザイマセンヨ。アニキ」


「なんかヘンだよ? あ、そうだ。初めからこうすればよかったんだ」



 俺がヘンな原因は、その十割がお前のせいだ。


 いや、それはそれとして、ちょっと待て。その「初めからこうすればよかった」ってなに?


 マジヤバい。ホント、チビりそう。

 今から俺、なにされるんだよ?


 ……まさか今の会話の中で気づかないうちに、コイツのよくわからない怒りのスイッチを押して、消し炭フルコースが確定しちゃった?


 ビーム? ひょっとして、俺にビームすんの?

 俺がいちばん大切なお友達ってお話は、どこいっちゃったの!?


 とんでもないボケキャラだけど、自分に懐いているその姿が可愛いくて仕方ない子犬みたいなヤツだと思い始めたその本人に、異世界で滅殺されちゃうのが俺の人生の確定事項だなんてええええ!




10/14 脱字修正とセリフから二文字をカット。

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