不遇職と不完全燃焼
区切ると中途半端な気がしたので長くしちゃいました…ゆるして…
「まずはそちらの義腕からいきましょうか。」
雲ひとつ無い青空、のどかな草原、その一角で私とヨハンさんは向かい合って立っている。
「大まかには話したと聞いています。繰り返しになってしまう所もあるかもしれませんが、そこはご容赦下さい。」
私はうぬうぬという感じで頷く。そしてちらりと自らの右腕を見る。
装飾もなにもない単色の腕、誰が見ても腕を守る鎧にしか見えない。だが中に肉体は存在していない。全てが金属の腕。
それでも私が望めばその通りに動く。
曲げようと思えば曲がる。振ろうと思えば振れる。拳を握ろうと思えば握れる。指だってバラバラに動く。全てこれまで通り、一切の違和感無くだ。
どんな原理なのかは私には正直さっぱりである。幻想水晶が私の魔力と同調してうんたら言ってた気がするけれど、わからんよねぇ…。この世界じゃ割と常識だったりするのかな。
おっと、また逸れようとしてしまった。いけないねぇ…あぶないあぶない。
今はヨハンさんの話しをしっかり聞く時間なのだ。上の空で聞き流しても、後で困るのは私なんだからね。
…メモのご用意した方が良かったりするかな。
「あー…そうですね…。ですが実際に動かせば理解出来る、それくらいのものですので不要かと思いますよ。」
「なるほど…わかりました。」
いらないらしい。そう聞いて少々安心する私。なんてったってメモを取るのが下手と言いますか、まともにやった事が無いのですよ。相手の話す速度にメモが追いつかないし、省略し過ぎても後で何のこっちゃみたいな感じになる。とてもとても苦手なのだ。
…戻しましょう。
「では始めます。…そちらの腕ですが、名称は特にありません。武具というよりはあなた自身の肉体である、自分の体に名前を付けるのか…だそうですよ。『何か名前が必要なら嬢ちゃんが自由に命名してくれ』、こちらがイニシエスタからの言伝ですね。いやぁ困ったものです…まぁ、そもそも彼女はあまり武具の命名をしたがらないので仕方の無い事ですがね。」
「それはまたどうして?」
私が少しばかり気になって聞く。するとヨハンさんは肩を竦めながら、とても端的に
「面倒臭い、これが全てです。いつもそれっぽい理由を用意してサボってるんですよ。今回もそうでしょう?」
「あぁ…なるほど…それっぽい。」
うん、とても納得した。それと同時に何か深い意味が!?みたいな淡い期待が見事に打ち砕かれたしょんぼり感も生まれた。
いやさーだって何かあると思うじゃーん。こう、過去に悲しい出来事が…とかさー。ぷー。
とはいっても勝手に期待したのは私である。勝手に落胆して引きずるのはよろしくないね。反省。
うむうむ、次だ次。
「素材としているのは主に竜血鋼…」
ん?
「魔力経路として天聖魂、排熱機構に凍稀結晶…」
んんんんん?
「関節部に竜鱗鉄鋼、そして魔力源に幻想水晶。」
…………………。
「ちょっと待ってもらえます…?」
「はい。どうかしましたか?」
「いやどうかする要素しか無かったんですがね?」
「そうですかね?」
そうなんです。私がおかしいんじゃないよねこれ。
んーっと…?
そもそも最初から訳がわからぬぞ。何だっけ?竜血鋼だったかな?名前からしてここらで簡単にほいほい採れるやつじゃないよねこれ。いや他のやつも全部そうだと思うんだけどね。
あんれぇーイニシエスタさん私が持ってきた鉱石で作ったんじゃなかったのかなーどうしちゃったんだろうねー。
「…聞いたこと無い名前が沢山出てきたものでしてね。おかしいなーなんて思っちゃいましてね?」
追いつかないので素直に疑問を口に出す私。それを聞いてヨハンさんは凄い驚いた様子を見せた後、「なるほど!」という納得の声と共に謝罪した。
「これは失礼しました。てっきりイニシエスタから聞いているものかと思ってましたよ。危うく流す所でした。いやー、助かります。」
「そ、それはどうも…。」
「ではご説明を…最初の竜血鋼、こちらは高位の竜種から得られる血液を加工した物です。よく意外だと言われるのですが、頑丈という点でこれに勝る竜素材はありません。それに高位竜なので非常に魔力との親和性も高い。
余談ですが、これを完璧に扱えるかが名匠との境目ともよく言われてますね。」
「はぁ、なるほど。」
うん、とりあえず凄い!強い!硬い!って事だね。どれくらいかは知らん。何か次元が違う気がする。
「続いて天聖魂。初めに、貴重さで言えば幻想水晶の次と言えます。堕天使などの神聖に近い者からしか得ることが出来ないのです。
特徴としては魂なのでどんな形にも出来るというのがあります。幻想水晶に引けを取らないとも言える魔力の通りをするので、今回の様な武具の魔力経路としは最適です。」
「はぁ…なる、ほど?」
わからない…聞けば聞くほど明らかにとんでもないレベルの物が使われているように思える。いや多分気のせいではないんだろうけどさ。
二個目にして既にだいぶ表情が引き攣ってきた私を他所に、ヨハンさんは何食わぬ顔で続きを語る。
「次は…凍稀結晶ですね。こちらは大陸最北にある永久凍土、その最奥に存在する迷宮で採掘出来る鉱石です。圧倒的な冷却能力を保持していまして、氷の属性を持つ武具に使うのは勿論の事、大型兵器にも用いられます。」
「はい…。」
もう返事する元気が無くなってきた。やばいって、とりあえずやばい。私はとんでもない物を手に入れてしまったのではないだろうか。
まぁそんな私の事は気にせずヨハンさんは続けるんですけどね。ここまでくると恐ろしい。
「竜鱗鉄鋼…名前の通り竜の鱗を加工した物です。竜血鋼よりも柔軟性があるので武具を補強する事によく使われています。当然ですが比較しているのが竜血鋼というだけで、大抵の素材には頑丈さも負けてませんのでご安心を。
ついでですが、竜の素材と言うと基本的にこちらになります。一体から作成できる量が多いんですよ。覚えておくとお得かもしれませんよ?」
「はひ…。」
お得かもしれない…その情報が活きるのは一体いつの話になるんでしょうかね。実験期間という名のゲーム内三年以内には間に合いますか?流石に間に合うかな。
はい、もう考えるのはやめております。とりあえず凄いね!うむ!
「最後…と言っても幻想水晶は必要でしょうか?私の記憶違いであれば申し訳無いのですが、イニシエスタが説明したと言っていた気がするのですが。」
「あー…確かあった…はず…です。」
色々頭の中から吹き飛んでしまった気がしなくもないけれど、幻想水晶を渡したときに説明されていたね。されてたよね?
この腕に使ってある大きさだと国が動くレベルだっけね。それくらい高価な代物で凄いんだよって感じだったはず。
「では省きます。えー…何やら先程より顔色が悪いようですが、大丈夫でしょうか?体調が優れないのでしたら無理にとは言いませんよ。」
あ、表情だけじゃなくて顔色にまで出ちゃってましたか。
「いえ…大丈夫です。ちょっと驚いたといいますか…ね?」
「…? そうですか。ならば良かったです。」
はい。体調は全く問題ありませんよ。元気でございます。
ただただ、あまりにも高価そうな物がたっくさん使われている事を知り、ビビり散らかしているだけです。
イニシエスタさんは代金必要無しと言っていたけれど、本当にいいのだろうか。…仮に払えと言われても払えなさそうなんだけどね。図々しくもお言葉に素直に甘えちゃった方がいいかな?いいよね…許してお願い。
…あまり考えないようにしよう。前向きに考えていこう。それだけの物が私の腕なんだってね。うむうむ。ポジティブシンキングさいきょう。
「これらを使用した理由として、幻想水晶が発揮する魔力の出力に耐えられるのがこのレベルしか無いからです。」
最早白目向きそうな私。だけど大丈夫と言ってしまったが故にヨハンさんは説明を再開した。聞かなくては…いけない…頑張れ私。
という訳で、私のパンクしそうな頭で把握した長いご説明がこちらとなります。
曰く、幻想水晶はこの世のありとあらゆる素材達と比べる事も馬鹿らしいほどの圧倒的な魔力吸収、出力を行う為、並の素材ではその量に耐える事が出来ず自壊してしまう。
なので最硬ともいえる竜血鋼、竜鱗鉄鋼でそれを防ぐ。
そして魔力を放出…つまりは魔法として放った際に発生する熱を処理する為に凍稀結晶を。でも現在の私が使用する魔法程度なら必要無いらしい。今後魔力を大きく消費する様になると、凍稀結晶でないと抑えられない程になるんだって。具体的には接合部が高熱になって体がこんがり焼けるとの事。
…おいしくなりたくはないです。
んでそもそも腕として今まで通り動かす為に魔力を使っている訳で、その魔力を腕全体に流すために天聖魂が必要だったと。幻想水晶は形をそんなに弄ることが出来ないから、不定形の天聖魂じゃないとこのサイズに収めることが出来なかったんだって。
結果として誕生したこの腕は名実共に世界最高峰とも言える代物であり、完璧に使いこなせれば攻城兵器が可愛く思える程の威力を出す事が可能…。なお完璧に扱えない場合に同じ事をしたら肉体が消し飛ぶから気をつけてね、だそうです。怖すぎる。
だけど今はまだ私が未熟なのもあってそうなる事は確実に無いとの話。出力自体も抑えているんだってさ。これについては私が成長すれば次第に解放されていくらしい。
ちょくちょくゲームであるよね。レベルアップすると装備のステータス上がっていくやつ。それに近いのかな?
まぁつまる所、私はいつの間にか片腕攻城兵器の女になっていたって訳だ。ワハハハハ…ハハ…笑うしか無い…。
うん…とりあえず腕についての説明はこんなものらしい。だいぶ気疲れしてしまったけれど、まだ槍の説明と実戦での使い方があるんだよね…。気を入れ直さねば。ファイトだ私。ふれーふれー
「では続いて槍の方に移りますので…えー、出して頂けますか?」
「あ、了解です。」
そりゃそうだよね。腕は何時でもここにあるけれど、槍は大きいからしまっていたままだった。素で忘れていたよ。
てことで私は槍を虚空から取り出す。取り出すって言うよりも出現させる、顕現させる…そういう方が正しいのかな。
何かに手を突っ込んで掴み、取り出すというのじゃないんだよね。持ちたいと思った手の中に一瞬で現れるの。パァーッやらしゅんとか擬音を付けたい感じには一瞬。
一応補足しておくと、これは装備欄にあるから出来る芸当である。私みたいな長槍だったりの大きな武器だと、街中などの日常生活では邪魔になっちゃうから非表示に出来るっていう機能。
インベントリとは別枠なので圧迫の心配も無いし、今みたいに取り出すのも一瞬だからそんなに隙も生まれない…はずなので便利なものである。
尚防具では使えない機能だったりする。あくまでも武器欄に装備する物だけね。
そうして取り出した槍を改めて眺める。
でかい、うん、でかいなこれ。改めて見なくてもでかいわ。顔を思いっきり動かさないと先端まで見えないわ。昨日はウッキウキで「うわーいおっきいー」なんて言っちゃいそうなくらいだったけれど、冷静になるとちょっとだけ不安になってきた。
これ本当に私に使えるのかな…。槍を振り回すんじゃなくて、槍に振り回されないかな。
「ご安心を。槍というのは素人でも扱いやすい武器ですので、そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。」
「…顔に出てました?」
「ええ、それはもうバッチリと。」
微笑ましい物を見ているかのようにヨハンさんはニッコニコで私に答える。
「ですが初めて武器を手に取った方というのは、大体が貴方と同じ反応をしていますよ。期待と不安が入り混じった表情…初々しくて、少し懐かしくなりますよ。」
…何か恥ずかしいな。だって本当に懐かしい物を見た顔をしていらっしゃるもの。優しいお目々ですね。
でも少し考えてみる。この世界における初めて武器を手に取った人間…というのはどんな人間なのか。
見るからにファンタジーの世界。私の思うファンタジー世界と同じならば、各国に軍はあるだろうし、ヨハンさんみたいな騎士も存在する。そして民間でもギルドを介した魔物討伐がある。
当然ながら一朝一夕で通用するものでは無いだろうから長い時間を掛けて訓練なり修行なりを積むのであろう。それこそ子供の内から。
うん、子供の内から…ね。
私は心の中で真顔になる。うむ、そういう事なんだろう。騎士や英雄に憧れ、「俺(私)もあんな風になれるかな!」っていう子供達と殆ど同じ反応をしていたのであろう。
余計に恥ずかしくなってきた。駄目だこれは。考えれば考える程ドツボにはまってしまう。でもさー仕方ないじゃーん。こういう武器なんて持った事無かったし、少しばかり…いや素直に白状しましょう。めっちゃウキウキしちゃってます、はい。
……………ええいやめだやめ。この話は終わり!さぁ説明に戻ってもらおうじゃないか!やったるぞー。
「槍という武器は非常に単純です。構え、前へと突き出す。これだけです。なので戦いの経験が無い方にも扱いやすいんですよ。
対人であればもっと複雑になりますが、知能が低い魔物が相手であれば、距離を保って突くという基本動作だけである程度戦えます。」
ふむ、まぁそうなるよね。槍といえばひたすらに突く。そんな印象が強かったけど、どうやら間違ってはいなかったらしい。
別に残念だとかは全く無くて、普通にありがたいと思ってるよ。当たり前だけど槍術の心得なんて無い、そしてお世辞にも頭がよろしいとは言えないし、運動経験だって学校の授業くらい…つまるところ全く無い私には、扱いやすい武器というのは非常に助かる。
ゲーム的に考えれば作業感が増すから駄目なのかもしれないけれどね。
「突くという点での攻撃だけでは無く、振り回す事で周囲への広範囲な攻撃も可能です。カンナさんの槍はこの振り回す動作を前提に、穂が幅広の片手剣と同じ程度の大きさにしてあります。思い切り振り、速度と力が乗れば、長さも相まって槍とは思えないレベルの斬撃となるでしょう。
……ですが、まぁ…その…当然の事なんですが…それのせいで槍としてはかなり重たくなっています。なので活かせる様になるまで、それなりに時間が掛かるかもしれません。もしあまりにも扱いにくいと感じた場合はご友人と相談して調整してみて下さい。」
あー、なるほどね。
うん、確かにそこそこ重さを感じる。…でも言う程重いかな?っていうのが今の感想である。別に振るのには苦労しなさそう。
例えるなら…うーむ、そんなに棒状の何かを持った事なんて……
あったわ。あれだよ、水を含んだモップ。あれを高校の時に遊びで振り回した事があるんだけど、あれに似てる。
まぁ重いはずの槍があんな清掃用具と同じ訳あるかいっていうツッコミはごもっとも。でも実際あれに近いんだから仕方無い。人生経験が薄っぺら過ぎて他に例える物が無いとも言えるけどね。
それとモップを振り回した件は当然その後こっぴどく怒られた。危ないからね。真似しちゃダメですよ。
うん、まぁ最初の予想に反して意外と振り回せそうなのは良い事だ。振り回されるんじゃないかーって不安だったけれどひとまず安心…。
…とりあえず、そんなに重くないですよハッハッハ的な感じでヨハンさんに振り回しながら伝える。すると彼は少しだけ驚いた顔をしてくれた。本当に少しだけですぐに戻ったけどね…。
「そうですか…見る限りは確かに重たいという風には感じませんね…。正直、意外でした。鍛えてない方なら構えられるかさえどうかという代物。…振り回しなどすれば、重さで引っ張られバランスを崩し倒れる。私はそう思っていましたよ。」
「あはは…それはどうも。」
「失礼。馬鹿にしていた、という訳ではありません。実際、街の衛兵程度の者ならば間違い無くそうなっていました。私もそれなりに人は見てきたつもりだったんですが…まだまだでしたね。」
そう言うと、ヨハンさんはペコリと頭を下げる。表情や声色から察するに、本当に意外だったのだろう。
「ともあれ、扱えるのであればこちらとしても楽なので助かります。」
そりゃそうだよね。これでまともに使えなかったら、重さとかなんやら色々と変えなくちゃいけない訳だしね…。
…まだ試しに振っただけなのにマトモに扱えるっていうのもあれだけど気にしないでね。これからよ、これから…うん。
「魔法については今までと同じ様に扱える筈です。長杖と同じようなものですからね。物理で接近戦を行うのか、それとも魔法で攻めるのか…相手に合わせて使い分ける事が出来ます。
普通の剣士には出来ない事ですので、扱いに慣れさえすれば幅広く立ち回れると思いますよ。」
ヨハンさんはそこまで言い終わると、懐から何やら紙束を取り出す。そしてそれに目を通したと思ったら何故か顔を顰め、その表情のまま私にこう言った。
「っ…非常に唐突で申し訳無いと思うのですが、今回の説明はこれで終わりとなります。」
「へ?」
あまりにも突然の終了宣言である。流石に私も困惑を隠せない。まだこう…なんか色々あると思うんだけどね。なんか消化不良感がある。
だって本当に説明されただけなのだ。こういうのって試し切りみたいな感じで魔物を何体か倒してみるだとか、明らかに実力がありそうなヨハンさんを相手にして学ぶとか…何かしらあると思うんだよ。
それなのにいきなり終わりですと言われたら驚きもするものだ。
「わかってはいます。あなたがそう思うのは当然の事です。ですが、私に与えられた指示はここまでなのです。どうかご理解頂きたい。」
「イニシエスタさんが、そうしろと言ったんですか…?」
「厳密には違います。ですがそうとも言える…。私の口から言える答えは、これが全てです。」
「ヨハンさんの意思は…そこに無いんですか…?」
私の問いに、ヨハンさんはとても悔しそうな表情で答える。
「…はい。そもそも、本来であればあり得ない話しです。
不完全な知識と技術は死を招く。戦いに身を投じる者であれば、嫌でも理解出来る事…それを知っているのに、私はあなたにこれ以上の知識と技術を与える事が出来ません。」
そして改めて「すいません」と深く頭を下げる。その声音はあまりにも重く、実際に経験し目の当たりにしてきたというのが伝わる程であった。
「…わかりました。あなたの意思じゃ無いのであれば、私は構いませんよ。」
正直な事を言えば、不満は残っている。だが事情があるのであろう。ここでゴネた所で何の意味も無いという事くらいは私にだってわかる。
そもそも今回の事は工房側の好意で行われているのだ。製作からこの説明まで、殆ど無償のはずである。ならば裁量を決められていたとしても仕方が無い。
そう、仕方がないのである。お互いに。
そういう事なんだと思わなければならない時も、あるものである。
私は申し訳無さそうに立つヨハンさんを見ながら頷いた。わかったと、自分に言い聞かせるために。
「またお会いする事がありましたら、その時は今回出来なかった実戦形式での説明…いえ、訓練と言ったほうがいいですね…。工房からではなく、私個人の意思で…是非。」
「そんな気に病まなくてもいいですよ。私としては腕と槍、それに今防具の方まで作ってもらってるんです。受け取ってばかりじゃ却って申し訳無くなっちゃいますよ。」
「そう…ですか…。」
まぁ、自分でどうこうするっていうのも大事だろうし…。というかむしろそれが普通な気がする。
あの鳥に右腕もってかれた時から、私は貰ってばかりだった。悪い事では無いけれど、貰い続けてしまっては前には進めないと思うんだよ。
どれだけ力を貰っても、私自身が成長しないと活かせないまま終わっちゃう。ヨハンさんに戦闘のやり方を教えて貰えば確かに効果的だと思う。スタートダッシュってやつと同じ感じじゃないかな。
私はもう一度頷く。
これもまた、自分を納得させるためなんだろう。私は思ってたよりも自分勝手なんだなーって今感じているよ。ここまで自分に言い聞かせないといけないなんてね。
「では、中途半端と言わざるを得ない所ですが、これで工房からの説明を終了致します。わざわざこちらまで出向いてくださったのに、満足のいく説明が出来ず申し訳ありませんでした。
もしまた機会がありましたら、当工房を是非よろしくお願い致します。」
「こちらこそありがとうございました。」
そんな、妙に定型じみた言葉をお互いに言い、この説明会?はあっさりと終わったのであった。




