不遇職とご案内
一年以上空いちゃいました。
二章完結させてから投稿と考えましたが、我ながら遅すぎたので少しずつ小出ししていく事にしました。
「何…これ?」
宿から出た後、人でごった返している広場を抜け、明らかに地元民と思われる人々しか見えない路地に来た私達。ここなら先程受け取った木箱の確認をしても大丈夫な気がしたので、何が出るやらとワクワクドキドキしながらいざオープン…した訳だよ。
「ちっちゃい板…だね。うん、何だろうねこれ。」
まぁこの通りウィルチェにもわからないご様子な変な板とやらが入っておりました。
うん、板だ。他に言いようが無い。表面には何も書かれていないし、裏を見てもつるっつるですよ。
あ、そうそう。つるつるなので察しがついたかもしれないけれど、木製では無い。というかそうでは無いと思いたい。もしかしたらそんな木もこの世界にはあるのかもしれないけれど…。
まぁそれは置いといて…ちょっと触ってみたり突いたりしてみた感じは木よりもプラスチックに近い…と思う。ガラス…とは違う気もするし、なんだろうな…。
…………何も出てこないや。うむ、よくわからない変な板が入っていましたという結論でいいかな。わかんない物は仕方無いよね。はい解散。
まぁそんな訳にもいかないのでどうしたものか。はて、こんな小さな板一枚で何をしろというのか…ていうか、誰から何の為に送られたのかもわからないのは本当に困るんだよね。
という事で、今一度入っていた木箱含めよーく調べてみようと思います。案外何かあったりするもんだよ。
───
「だぁー!もう何なのこれ!説明書くらい入れといてよ!」
お手上げであった。見事なまでに何もなかった。木箱はただの箱だし、板を包んであった布はただの布…肝心の板もただの板。勘弁しておくれ。
「せめて送り主がわかればねぇ。カンナちゃん本当に何か覚えは無いの?」
「無い…はずだよ。プレイヤーと関わった記憶は無いしね。」
言ってて少し悲しくなった。まま、ウィルチェがいるしね。ノー問題ですよ、えぇ。
うん、それは置いておこう。…つまる所だ、どうしようもない。解決策が不明である。一応アイテムなのかもと考えてインベントリに入れてみたけれど、名称が〈???〉でテキストも空欄になったんだよね。
もしかしたら、鑑定があれば解ったのかもしれない…。無い物ねだりだけどね。
「あーだもー!朝からモヤモヤするなぁ!」
とまぁ行き場のないこの気持ちをどうしてやろうかと考えた時である。ほぼ無意識にだが、私は板を持った右手に少し力を入れた。
それだけである。だがそれだけなのに、今までうんともすんとも言わなかったあの板が、急にぴかーっと光出したのである。
「「……え?」」
これにはウィルチェも含め二人共困惑である。はてな?私は何かやってしまったのかな?あらららら?
ついでに…当然の事ながら周りからの視線も感じる。いきなり視界の中で何かが光ったら気になるというのは仕方の無いことである。気まずい。
ま、幸いなのは光自体はその後すぐに消えた事であろう。特に注目されるとか、何かされるとかいう訳でも無く、みんな視線を戻して歩みを再開してくれた。
よかったよかった。てな訳で一体どうしたのやらと件の板に私も視線を戻すとする。
「はー…なるほどねぇ…『ご案内』か。」
光が消えた板には、先程までは影も形も無かった文字が現れていた。って別にあのちっこい板に、びっしりじゃなくて、ホログラムみたいな感じ。板から文字だけ浮いてるの。不思議。
で、内容としては何か堅苦しい言葉が長ったらしく…それはそれはもう本当に長くね。これにはマナーに厳しい方々も多分ニッコリ笑顔よ。むしろ読み辛いと思うっていう事で察して。
とりあえずそんな意味があるのか無いのかよくわからない文章をダラダラと読み進めていくと、不意にシステム音と共に何か表示された。
[クエストが開始されました]
[マップが更新されました]
…はてな?
どっかの文字がトリガーだったのかな。何か勝手にクエストが始まってしまったみたいだ。
だけどそれはとりあえず後にしよう。何でだよ…だって?
そりゃ要領の悪い私が読み途中でそっちを見に行ったら戻ってこなくなるからだよ。落ち着いて一つ一つ片付けていこうじゃないの。私はね、ここ数日で学んだのである。痛い程にね…。
それじゃあ読んでいきましょうか。
───
「ふむぅ…。」
「どうする?こっちに来る余裕無さそうだけど…。」
全部読み終わった私は、ウィルチェと内容を共有した後、そう口にした。
まぁ、先にどんな事が書いてあったのかだね。長ったるい文章だったけれど、簡単に言うと昨日工房で説明しきれなかった詳しい&安全な義腕の使い方を説明させて欲しいってお願いだった。
それと諸事情により場所も工房では無く、こちらが指定する場所にして欲しいと…これについては私達が知らない場所なのでよくわからない。ただ更新されたマップを見る限りは南東でそこそこ距離がありそうって感じ。
んで一番大切なのが、時間制限がある。それも結構短い。本来の予定通りイニシエスタさんの工房に行ってあれこれやって…というのはかなり厳しそうなくらいには…。
なので余裕が無さそうとウィルチェは言ったのだ。
「うーん…わざわざ連絡をして来たって事は当然理由があるからだろうし、無視するのは悪いよね。」
「そうなんだろうけど、ここまで急かすような時間にしなくてもいいと思うんだよねー。」
「それについては同意。」
「ん、じゃあこれ優先してく?」
流れな感じでウィルチェにそう提案される。ま、まぁ実際私もそうするしか無さそうだっていうのは何となくわかっていたよ。
「いいの?」
それでも聞いてしまうのは、元々あったウィルチェとの予定とズレてしまうからである。
…と、言ってもその予定していた目的地からのお願いがこれだから、本当に念の為の意味が強い。
「行ってきなよ。ていうか行かないと駄目なんじゃないかな。」
うん、やっぱり即答で返ってきた。しかもやれやれって腕上げて首振るモーションまでしておられる。
「私の事は気にしないでいいよ。カンナちゃんがやりたいようにすればいい。私も、私なりに適当にやってるからさ。」
ははーん、これは私がウジウジ粘るって事を想定していたな?その通りだよ。だって軽々しく「あ、じゃあ何か出たから行ってくるね〜。」なんて言えないよ。うわって思われそうで怖い。
「あ、それと言っておきたい事があるんだけど…。」
「うん?なに?」
私は思考の海から彼女へと顔を戻す。おや、何やら神妙なお顔ですね。
「やっぱりスキルとかは隠さなくていいよ。」
はぇ?
いきなりそんな事言われてしまったものなので、私は脳内で素っ頓狂な声をあげてしまった。
「そんなすぐに変えていいのかーってのは私も思うよ。だけど強くなるって決めたんだから、堂々としていいんじゃないかな。」
そして、ほへーっとしてる私を置いといてウィルチェは続ける。
「カンナちゃんの為だって思ってたけどさ。結局は私の我儘でしか無かったんだよ。自由を奪って縛り付けようとしてた。」
「え、ちょっとちょっと…」
何かネガティブな方向へ進んでおりませんか。気のせいですか。大丈夫かな?
「でもそれは違うんだよ。カンナちゃんの進む道はカンナちゃん自身が決めるもの。そこに枷なんていらないだろうってね。」
「う、うん。」
ウィルチェ…何か罪悪感みたいなやつを感じてるのかな。段々と声色が弱々しくなってきているし、表情も明るくは無い。
「わかったよウィルチェ。」
うむ、このまま彼女に続けさせると空気悪い感じになりそうなので、私は少し慌てつつもキリッとわかってますよ感を出して返答をした。
「ウィルチェが私の事を心配してくれたっていうのは知ってるよ。だからウィルチェも私の事はそんなに気にしなくていいよ。」
私が色んな意味で弱いのは事実だしさ。
「お互いゆるーくやっていこうよ。ウィルチェが気に病む必要は無いと思う。むしろ…私が周りに隠さなくなって、有名になっちゃったらウィルチェも大変かもよ?そっちの心配する方が大事かも?」
最後の方はおどけて言ってやった。まぁ、でも多分現実になる可能性は割とあると思うのだよ。前が前、だったしね。
「……だーっ!!」
「うひゃあ!びっくりしたぁ…いきなり叫ばないでよ…。」
私の言葉を無言で聞いていたかと思うと、急に髪をくしゃくしゃーってしながら叫ぶウィルチェ。ご乱心でありましょうか…?どしたのさ。大丈夫?
「あぁごめん…。いやね、カンナちゃんは私が思ってたより全然強いなーってね。そう思ってただけだよ。」
「強い…?私が?」
「うん、強い強い。」
強い。ですか、そうですか。どこら辺がだろう?ついさっき言ったけれど、私なんて弱さの塊みたいだと思うんだけどね。
「わかんないならそれでいいよ。それよりさ、カンナちゃんが有名になって私が困るかもー、なんて言ってくれるじゃないの。」
「うん言ったね。」
「むしろ大歓迎だよ。胸張ってドヤ顔であれが私の友達だって自慢しちゃうよ。楽しみにしてるから…頑張ろうね。」
「ん、頑張るよ。」
何だか元気になってくれた、でいいんだよね。ウィルチェの様子はすっかり元に戻ったと言っていいだろう。
…心のどこかで引っ掛かっていたのかもしれないね。自分がこうしたんだって。多分だけどね。本当の事は本人にしかわからないもの。
「あーあ、私のせいで話がだいぶ逸れちゃった。ごめんね。」
「それこそ気にしなくていいよ。ウィルチェがすっきりしたのなら、むしろ良かったよ。」
ありがとね、そう言ってからウィルチェは「よし」と気合を入れ直して、
「それじゃ、余計に時間取らせちゃったし、そろそろお互い行くとこに行こうかね。」
「そーうーだね。確かに動いた方がいいかも…。」
私は最初のそうだねの所で時間を確認した後、ギリギリになるかもなーと思いながら返事をした。
別にウィルチェを責めるつもりは無いからね。あしからず。
「こっちはこっちで残りの装備作っちゃうよ。その服じゃもう限界だろうしね。」
「あー…布面積は多めでお願いするよ…。」
「そりゃ勿論。友達にスケベな装備なんて着させないよ私は。」
安心した、流石ウィルチェさん。期待しちゃうよ。
本人居なくていいのかって?聞いた話によりますと、採寸は昨日のあれで終わってる上に、元々この世界で普及している物で丁度いいのがあるっていうから、それを調整するだけらしい。
なので私は居ても居なくてもいいんだってさ。まぁそれを見たかったから今日は工房に行こうと思ってたんだけどね。
「それじゃ、終わったら連絡してね。」
「…うん、今度はちゃんとするよ。」
「気をつけてね。」
「わかってる。もう心配かけるような事はしないよ。」
私のために泣いてくれた人がいるのは嬉しくも思うけれど、それより一緒に笑ってくれた方が嬉しい。
今私が見ているその表情が…無理して微笑んでくれているその表情が、自然なものになる様に、私は頑張るよ。
二人で決めた事だから。ここで初めて出来た友達と決めた事だから。
「いってきます。」
「…いってらっしゃい。」
その言葉を聞いて、私は見せつけるように上へと飛んだ。
さあ、何かが変わった普通の一日を始めよう。
───
『どれくらい』
『……。』『………。』『…。』『………。』『……。』『……。』『……。』
やかましい
理不尽?
知らん
『こちらへと向けて』
『『『了解しました』』』
一斉に
うるさいな
「あぁ…自由が欲しいなぁ。」
誰にも聞こえぬ大きさで、ぽつりと呟いた。
相変わらず書くのが遅い。そして進行も遅いのダブルコンボ。
はたして作者にやる気はあるのかと言いたい。はい、頑張ります。
言い訳しますとやる気だけはあるんです。一番厄介なやつです。先を考えるのが楽しすぎて直近の話を書けないんです。
ここが終わればさくっと書けるんだろうなーって、そんな事絶対無いのに逃げてるんですね。困りものです。
最近は生活環境がガラッと変わり、以前よりは身の回りの欲望が減ったので少しは進みが早くなると思います。目指すは最低月イチ投稿。




