不遇職と急成長
キャンペーンが終わるとキャンペーンが来ていつになったら終わるんだ状態でした。
「んでカンナちゃん。今から何かやる事とかやりたい事ってある?」
あれから暫し談笑した後、私はそう聞かれた。
「やりたい事…?」
ふむ。まあこれはあれがやりたいとかの大まかなやつじゃなくて、特に無ければどこか行こうか的なあれだろう。
「そうそう。カンナちゃんは把握してないと思うんだけどさ、今ってもう朝じゃなくてお昼なんだよ。」
「へ…?」
おひる?待って私どれだけ寝てたの。いや夜中まで起きてたから睡眠時間的には普通なくらいか。って違う今はそれはいいんだよ。
「だからカンナちゃんの腕を作りに早速行こうかなーって。あ、ちゃんとお昼は食べてからね。それで何かあるならそっちを優先しようかなと思ったんだけど…どうかな?」
うん、やっぱりそういう意味合いだったみたい。そして腕を作りに行くというのが実に怪しい感じだ。黒魔術的な危ないやつに聞こえる。まあ当の本人なので口に出してはツッコめないけど…。
にしても今やりたい事…とは言われても特にやれる事が無いのが私である。というか腕をどうにかするのが今やりたい事になる気がする。
何せまさかこんな事になるなんて思ってもいなかった訳でして。現実の私は五体満足なのに、こっちの私は片手紛失だから違和感が凄い。
それにこうなると殆ど何も出来なくて単純に不便でそれもどうにかしたい。いや失礼かもしれないなこれは。反省。
私は少しだけ考える。そしてやはり特には無いなと結論づけ、それをウィルチェに伝える。
「うん?まぁ特に無いなら早速…と行きたいけど、大丈夫?」
「もう寝起きでも無いし大丈夫だよ。ほらちゃんと歩けるし!」
そう言って私はベッドから立ち上がり、その場でくるりと一回転した後ぴょんぴょんと数回跳ねてみる。うむ、何も問題無い。
何でこんな事したかって昨日左脚を思いっきり踏み潰されてたからである。正直まともに歩けなかったよあれは。
それが寝て起きたらこの通りである。現実じゃ絶対無いであろう回復力だ。睡眠の力って凄い。
まぁ戦闘中やダンジョン攻略中にじっくり寝て回復なんて難しいだろうからバランス的には悪くないのかもしれない。休憩したらまた冒険に出れるって感覚だしね。
それでも早く治したいなら何らかの手段をとってねっていう事なのだろう。アイテムとか魔法とかなんやらでね。
…ん、魔法?
「あ、あった。」
私は思わずポツリと言葉を漏らす。いやはや、あったじゃないか、そういえば。やろうやろうと思ってたけど結局忘れていた事が。
「ごめんウィルチェ。ちょっとだけいいかな?」
「ん?別にいいよ。急いで行かなきゃいけない訳でもないし…それより何するの?」
「えっとね。昨日の成果を見てなかったの。ドロップとかも拾ってそのままだし、ステータスとかも見てなかったなって。」
私が言うとなるほどねー、とウィルチェはまた私の隣に来た。
「それ私も見ていい?あっと、アイテムの方だけね。レベルとかはいいよ。」
「うん、全然大丈夫だよ。それにレベルとかだってウィルチェに隠すようなものじゃないからいいよ。」
「お、私信頼されてる?いやー嬉しいねぇ…じゃあ見ちゃうよ?」
うむ、どうぞどうぞ。ま、自分で言うのもなんだけど、大して面白いものがある訳でも無いだろうしね。
「んじゃちゃちゃっと済ませちゃお?設定弄るねー…」
早速と言わんばかりに私はメニューを開き、公開設定を変えようと思った矢先の事だ。
それはメニューのトップ画面にチラッと表示されている、レベルやHPMPといったステータスバーなのだが、それが目に入り私は困惑した。
「あ、あれ…何か変な数字が見えるんだけどぉ?」
「え、どうしたの?」
「あぁごめん、今見えるようにするね……。えーっと、よいしょ…どう、見えるかな?」
私は設定を変えて他人にも見えるようにし、向きを少し傾けウィルチェに見せるようにする。
「どれど…れー…え?なにこれ!?」
「ね、ね?おかしいよねこれ!?」
ウィルチェもその数値を見て訳がわからんという表情だ。しかし無理も無い。それだけおかしいのだから。
「いやいやカンナちゃんさん?上がり過ぎでしょ!何やったのさ、やましい事してないよね!?」
「いやいやいやいや何も変な事してないって!ほら見て私のネームを!清き正しき真っ白ネーム!ホワイト!いえす、おっけー!」
手をぶんぶんと振りながらよくわからないテンションで否定する私。いやほんとご存知の通り、私はやましい事などしておりませんよ。
「ま、まあ…とりあえず詳細見てみよ!そしたらそんなおかしくないわけが……あひょわああああい!?」
ポチッとステータス詳細を開く私。そして表示された画面を見て、変な声を挙げながらベッドに倒れる私。
「はぇー…」
一方ウィルチェというと何か諦観の表情で固まってしまった。
まあ、とりあえず見てみればわかるさ。わかって欲しい。でも私はわからない。んんもう何が何やら…。
【カンナ】ヒーラーLv14
・HP:950/950 ・MP:1020/1020
・STR:31
・VIT:44
・SPD:30
・DEX:32
・INT:58
・MND:87
※割り振り可能なステータスポイント:39
・物理攻撃力:94 ・物理防御力:139
・魔法攻撃力:182 ・魔法防御力:266
「はぁー…カンナちゃん強くなったねぇー。」
「ちょ、そんな理解を諦めた棒読みしないでよ!」
言葉と同時に私はウィルチェの肩を掴んで揺すってやる。うおお思考を諦めないでー。
「おう…おうおうカンナちゃん待って待って揺れる揺れてるステイステイゔぇっ!?」
「あっ…」
何か途中から抵抗が無いように感じたため、チラッとウィルチェの顔を見ると…
「し、白目…剥いちゃってる…。」
そして私がそっと手を離すと、彼女の体をそのままベッドへと倒れた。
「ちょ…大丈夫!?ああいや大丈夫では無さそう…と、とりあえず『ヒール』して…。」
そうやってワタワタしながら私は杖を構え…あれ杖はどこだ。えぇっと、インベントリにしまった記憶は無い…からどっかに置かれてるはず、だよね。
私がどこだーどこだーと杖を探して部屋をゴソゴソと探していると、不意に倒れていたウィルチェが起き上がった。
「あー死ぬかと思ったぁ…ちょっとカンナちゃん力入れすぎだってー。」
「あ…う、うん。ごめん…ごめん、なさい…。」
「うむ許す。それと杖はそこのクローゼットの中ね。他の着てたやつとかも一緒に入ってるから。」
「え、あーほんとだ!」
ウィルチェが指さした備え付けのクローゼットを開けると、言ってた通り私の装備が詰め込まれていた。
それに対して私はありがとうと礼をする。ほんと、何から何までやってくれちゃったんだなぁ。
「いいってことよ。ささカンナちゃん、気を取り直して続きをね。」
「あ、うん。体…大丈夫?ヒールしとくよ?」
私は言いつつ今度こそ杖を構えるが、ウィルチェはいいよ、と首を横に振った。
「ここって非戦闘エリアだからさ。ほっといても私くらいの低HPならすぐ回復するの。だから大丈夫だよ。」
それのお陰でこうやってすぐ起きれたし、とウィルチェはグッと指を立てる。
うーむ、まあ…そういうものなのかな。でも本人がいいって言うならいいのかなぁ。
…とまあゴチャゴチャやりつつも、私とウィルチェは再びステータス画面を眺める作業に戻った。いいんだよね、うん。
「まーあれだよ。今のでわかったわ。カンナちゃんは間違いなく強くなってる。揺すられた程度で私が死にそうになるくらいにはね。」
「ねぇ?やっぱり怒ってない?」
何かそう聞こえるのだけど…怖いし不安になるからいっそ怒ってくれた方が気が楽に…。
「いやそれは無いから安心して。まあ毎回あんな風になるのはごめんだけどさ。」
うん…ほんとごめん。以後気を付けます。
「しっかしねー。こんなに急成長するなんて聞いたことも無いよ。成長期だねーで済む話しでも無いしさ。カンナちゃん本当に何したの?」
「何…と言われても…。」
えーっと、昨日は確か…スキルを振って、山脈に向かって、山登りを少々。それで鉄鉱虫に襲われてフルスイングで崖から落としてアイテム回収。最後に巨鳥に身も心もボコボコにされて帰ってきた。
うーむこうして見るとやった事自体は少ないなぁ。まあとりあえずこれをウィルチェに大まかに話してみる。
「なるほど、なるほど?うむ…ふむ…となるとレベルが上がった要因はその鉄鉱虫とやらで間違いなさそうだねー。」
「んー、やっぱり?」
まあそうなるよね。ゴーレムとかに会っていればまだ話しはわかりにくかったかも知れないが、私が遭遇していたのは鉄鉱虫だけだったもんね。
私達がうんうんと頷きあっていると、ウィルチェが「だけどね」と続ける。
「その鉄鉱虫…とやらなんだけど、全く話題になってないんだよねぇ。そんなに経験値が高い魔物なら、それ目当てで北の山脈地帯に行く価値があるじゃない?」
「うーん、確かに。私も鉄鉱虫の存在なんて知らなかったしなぁ…。」
私が倒したのは約50体の鉄鉱虫だ。それだけで最前線とまでは行かずとも、割と前線というレベルになったのだ。
そんな超効率の敵がいるなら大多数の人が狩りに来ていてもおかしくは無いし、そうで無くても掲示板で話題が上がっていてもいいはずだ。
「だけどそんな話題は見た事も聞いた事も無いわけ。単純に今回カンナちゃんが見つけたのが初めての個体だったのかもしれないし、独占の為に秘匿されていたのかもしれない。ま、どっちかなら後者だろうけどさ。」
うんまぁそりゃそうだろう。私だってそう思う。効率の良い存在を発見出来たのなら、独占してギリギリまで稼ぐのが普通ってものだ。
特にこのどれだけ周りとの差を広げて最前線プレイヤーになるか、という序盤の状況なら尚更の事である。
効率の良いレベル上げをし、新たな土地やダンジョンを見つけ名声や報酬を手に入れる。
更にそうなると必然的に効率の良い金策も見つかり、より万全な装備やアイテムを揃え冒険に行ける。
単純な事だが、これが全てだ。それを真っ先にやれるようになるなら、情報の秘匿程度はやれなければいけないだろう。
「ま、正直…そんなのどうでもいいんだけどねぇ。私は最前線プレイヤーになろうって気は無いし…ウィルチェはなりたい?」
私が素直に思った事を言うと、ウィルチェは「いんや」と肩を竦めて返事をする。
「あんな常に頑張ってるようだと疲れるでしょ。私はのんびりマイペース程々にやる方が性に合ってるよ。」
そうだよねー。のんびりっていいよね。
「それで、また逸れちゃったけどさ。実際これくらいの数値だと、どれくらい変わったの?ダメージは勿論だけどスキルとかさ。」
「うぇ?」
おっと確かに逸れていたね。危ない危ない。
えーっと、変わった…ねぇ。
「いやー、悲しい事にレベル上がってから一度もダメージ与える行動しなかったから、よくわかんないや。」
一応巨鳥に対してマジックショットを撃ったけど、あれは無効化?されたからノーカウントである。
あ、でも踏まれても生きてたし、逃げる時だって随分と魔力推進が長持ちしてた気がする。うん、気がするだけ。必死だったからあまり覚えていないのが本音だ。
…でもまぁ、数値だけ見ると魔法攻撃なんてかなり伸びてるから、蟻やらそこらの魔物ならマジックショット一撃で行けるんじゃないだろうかね。
そう思うと意外とヒーラーって火力出せない?他の職ってもっと出すのかな。どうなんだろう。
「あー…戦闘職はヒーラー以外はみんな何らかの範囲攻撃スキルを持つんだって。だから殲滅力で単純に負けてるんだってさ。」
「へぇー、なるほどね。さっすがウィルチェ!私より詳しいよね。」
「ふっふーん。そりゃカンナちゃんより調べる時間あるからね!決して暇って意味ではないよ…?」
うん、そんな事は思ってもないから安心して欲しい。それに私だって数日ぐうたらしてたし…。
「にしてもカンナちゃん、振り分け分は振らないの?育成方針決まってない感じ?」
また画面へと視線を戻した私達だったが、ウィルチェが気になったのかそれについて聞いてきた。
「あー、うん悩んでるっちゃ悩んでる。このまま魔法特化にするか、STR振りで近接と両立するか、VITとMNDで防御面強化するかの3つで迷ってる所。」
実際微妙な所なのだ。INT振り魔法特化は今のメイン火力であふマジックショットを強くできるし、MP問題も少しマシになる。
逆にSTR振りは今後を考えるとになる。今はヒーラーで攻撃手段が乏しいが、派生の神官になる事によって物理的な攻撃手段が増えるらしい。使い分けしてもよくなり、ソロで色々対応出来るようになるのは大きい。
まあ欠点は当然ながら器用貧乏になる事なのだか…。
最後の耐久よりの振り方は事故防止のためだ。いくら魔力推進で素早く動く事が出来ても、広範囲攻撃などで一撃瀕死や即死してしまうとどうしようもない。なのでそれを防止できるようにする。
また自前ヒールにより時間を掛ければ倒せるという形に出来るのは、これまたソロでは大きな利点だ。
欠点は当たり前だが火力が低くなる。反復した作業狩りだと却って面倒くさくなる可能性がある事かな。
私がそうやってどうしようかと悩んでいると、ウィルチェが口を開く。
「うんうん、それなら私達が考えていたのと同じ感じみたいだねぇ。よかったよかった。」
「うん?」
私達が、考えていた?しかも同じ感じ…とは。
「カンナちゃん、残りは歩きながらでもいいかな?ふふ、今日行く所でわかるからさ。それに、そろそろお腹も減ったでしょ?ささ、どうかな。」
「ん?うん?あぁ、うん。そう…だね?」
な、なんだか急にウィルチェが機嫌良くなっちゃったよ。そんなに私は良い答えをしたのだろうか。うーむ……うん、わかんない。
でも何となくわかるのは、ウィルチェは私に誰かを紹介したいんだな、という事だ。
「わかったよ。それじゃ、どこに行くのか楽しみにしてるね?」
「ふふーん、期待しちゃっていいよ。私の師の所だからね!」
ウィルチェはバッチリとウィンクを決めつつ、そう言い放った。…ウィンク似合うね。私も後でやってみようかな…。
何だか結局ステータスをあまり書いてない気がする。
何時も通りと言われましたらそうなんですけどね。あっちこっち話が脱線しちゃうんです。そういうものなんだと軽く流してください。
次回はスキルとかですかね。投稿は5月中旬までにはやります。




