ヘンテコ兎と不遇職
一話で纏めたかったけどまた作者の脳内が寄り道しすぎて駄目でした。許してください。
「いらっしゃいませ冒険者様。ご用件をお伺いします。」
ウィルチェさんとクエストを選んだ後、私達はカウンターへの待機列に並んだ。それで今やっと私の順番になったってとこだ。
「えっと、とりあえず受けていたクエストの報告をしたいと思いまして。」
まずは昨日報告出来なかったクエストを報告する。するとギルドカードをこちらにと言われたので、私はインベントリからカードを取り出して受付の人に私した。
「はい、確かにクエストの達成を確認しました。報酬については今お渡しするか、後程お送りするかを選べますが、どちらになさいますか?」
「あー、じゃあ今でお願いします。」
うむむ、やっぱり私はこういう事務的な会話が苦手だ。現実でも手続きとかは苦手だったし、こっちの世界でもなんか緊張しちゃうよ。
ま、まあ言われた通りに対応していけばいいんだよ。簡単簡単。私はできるこ。
私がそんな些細な悩みを抱いているのを余所に、受付の人はカウンターに銀貨を一枚出した。
「こちらが報酬の1000Gとなります。こちらの銀貨をインベントリに収納して下さい。」
ふむふむ、この銀貨一枚が1000Gの価値になるのか。頑張ったのに銀貨一枚を渡されるだけというのも少し寂しく感じるけど、価値は確かなんだし文句言っても仕方ないよね。さて収納っと。
「お疲れ様でした、これでクエスト完了の報告は終わりとなります。他にご用件はございますか?」
あっさりと報告は終わってしまったよ。まあ最初のチュートリアルみたいなクエストを一つ受けてただけだもんね。そりゃ早いよね。
「えーっと、このクエストの受注をお願いします。」
さて次はクエストの受注だ。これは昨日もやったのでやり方は覚えてるよ。ギルドカードはカウンターに置いたままなので受付の人はクエスト用紙とカードをあの黒い板に置くと、すぐに返してくれた。昨日より早くない?
「クエストの受注が完了しました。このクエストは対象が指定されておりますが、対象の魔物についてお聞きになりますか?」
お、それはありがたい。元々こっちから聞けたらよかったなと思ってたけど、最初からシステムで用意されてるのなら利用しない手はないね。
「はい、是非お願いします。」
私がお願いすると、畏まりましたと受付の人は説明を開始した。
「このクエストの対象となっている【ロケットラビット】ですが、出現地域はオスロンの東門を出てしばらく進んだ草原地帯となります。姿は通常の兎に白い角が生えたものと思って頂ければ。」
ふんふん、それだけなら正によくある角兎だね。でも何かあるんでしょう?そのヘンテコな名前が物語ってますよ。
「通常の兎と最大の点は、名前の通り高速で突進をしてくる事です。全身に魔力を纏い更にその威力を高めてきます。」
攻撃方法は突進っと…。まあ高速と言っても序盤だしそんなに速くはないでしょ。理不尽な速度だったら適正レベルも上がってるだろうしね。
「弱点としては速度と攻撃力に特化しているため体力や防御力が低いです。突進後はしばらく魔力の回復に勤しむため連続で突進される事はないです。なので回避をしてから反撃するのをおすすめします。」
なんかロマンの塊みたいな兎だね。回避してから反撃、戦闘の基本が大事と。うんうん、食らわなければいいんだよ、簡単そうだ。
「説明は以上となります。討伐期限は一月となっていますのでお気をつけ下さい。それでは、ご健闘を。」
「はい、ありがとうございます。いってきます。」
私はぺこりとお辞儀してからカウンターを離れた。うーっん、やっぱり堅苦しいのは苦手だよー。これからも利用するんだし慣れないとなぁ。
それから私はウィルチェさんがクエストを受けている間にアイテムを補充しておこうとアイテム販売所に来ていた。ちゃんと事前に知らせてるから安心だよ。
何を買うかって昨日シーナさんに教えてもらった毒消しと、スキルを連発できるようにMPポーションの2つだ。
回復ポーションでもいいんだけど、回復魔法のスキルレベルを上げる意味も込めて今回は買わない。今は性能も低いけど、スキルレベルを上げていけば変わるかもしれないしね。
てことで私は毒消し3個とMPポーションを10個購入した。お値段2400G也。高くない?さっき貰ったばかりの報酬の倍以上が消し飛んだよ。これは辛い。
とはいえアイテムはあるに越したことはないはずだよ。備えあればなんとやらってね。
いやーこういう施設はやっぱ最初に確認すべきだったよね。回復アイテムに食料、明かりとかの探索道具に野営道具などなど。それこそ冒険に行くのに必要な物が揃っていたよ。
これは今回クエストを終わらせたら装備も変えた方がよさそうかねー。流石にこの初心者装備じゃまずいだろうし。今日行けって?お金がもう4600Gしかないから無理だと思うの。
私が買い物を終えた所で、丁度クエストを受け終わったウィルチェさんと合流できた。我ながらタイミングばっちりで感激だよ。
その後は行った事ない場所なんだから早めに出た方がいいというウィルチェさんの言葉を受けて、中央広場のウェイポイントで私達はそれぞれのクエストに向けて出発した。
そんな訳で私は東門広場に到着したのであった。広場の様子としてはあまり西門と大差無い様に見えたが、心無しかこっちの方がプレイヤーらしき人が少ない。いやまあ心無しか程度だから結局多いんだけどさ。
門へと歩きつつ他のプレイヤーは何をやっているのか見てみると、半分近くがパーティへの勧誘か参加したい人達であった。いやほんと2日目の朝から熱心だよね。
のんびりでもいいんじゃないのとは思うけど、昨日に引き続き外へ行こうとしてる私が言える立場でもないか。
とりあえずここに長くいると声を掛けられそうなので私はそそくさと退散する事にした。ヒーラーが一人で彷徨いてるなんてパーティ探してるとしか思えないからね。
というか明らかに目があって近寄ろうとしてきた人もいたので全力で違いますとアピールをしたのもあった。無理無理そんな知らない男性と話しをするなんて高難度な事できませんわ。
とまぁなんやかんやありつつ昨日ぶりのフィールドでございます。門を出る前にNPCの門番に話しを聞いた所、街道を真っ直ぐ進めば【ロケットラビット】が出現する地帯に辿り着くらしい。…知らない男性には話しかけられないんじゃって?門番はこの世界の公務員的な人だから大丈夫なのです。都合のいい私です。
てことで私は教わった通りに街道を進んで行く。街道から外れるとスライム狩りに勤しんでいる人や何か採取しているような人とか色んな人がいる。スライムってパーティを組んでいてもおいしいのかな?レベル1のソロで倒してもそんな経験値貰えなかったと思うんだけど…何か素材でも落とすのかな。
それと調合素材を近くで採取している人がいたから横目で見てみたんだけど、他の草との違いがさっぱりなんだよね。あれかね、『鑑定』とかないとわからないのかな?それとも調合士だとわかるとかかな。うーむ早くも頓挫している私の小銭稼ぎ。
それからも狩りをしている人達を横目に街道を進んでいると、段々と人を見かけなくなってきた。そろそろかな?
そんな私の予想が当たったが如く、前方に何やら立看板が設置してあるのが見えた。何故こんな場所に?
「えっと…『この先兎に注意! セムドへ向かう場合は街道を素早く移動すること!』。セムドって街の名前かな?」
それよりもわざわざこんな看板を用意するなんて…もしやロケットラビットって危険なやつなのでは。いやいやまだ見てもいないんだから決めつけは悪いか。
さて安全に進むなら街道ということは、兎討伐をしないといけない私は草原に入る方がいいのか。膝丈くらいまで草が生えてるから足元に注意してかないとね。
街道からどっちに外れようかなと思って周りを見渡すと、現在地から結構遠そうだけどこれみよがしに岩が見えたのであれを目安にする事にした。こんなだだっ広い草原にこの距離からでも見える岩…怪しいじゃん?どうせ他には何も見えないしあれでいいのだよ。
…草原に入ってから早数分、私は今の所は何にも遭遇せずに進めていた。
「いやね、平和なのはいいんだよ。でも私は兎退治に来たのだよ。影も形も無いじゃないか!」
時刻は多分もうお昼くらいだと思われる。のんびりと自然を眺めながらインベントリに突っ込んでいる食料を食べるとか素敵だけど、何が来るかわからないからそれは断念する。悲しいなぁ。
帰るのにも時間が割りと掛かってしまうのでなるべく早めに終らせたいのが私の気持ちである。なお最終手段は死に戻りとなります。そんなのいやじゃいやじゃ。
私が心の中で駄々をこねていると、静かだった草原に何か変な音が聞こえた、気がする。
「なんだろ…魔物かな?」
私がその何か聞こえた気がする方向に体を向けた直後である。
キィィンと空気を貫きながら先程まで私が立っていた場所を何かが通過していった。
「えっ…?何…今の…。」
その何かに呆気に取られていると、またさっきと同じ方向…つまり私の前方からドンッという音が聞こえた。
「なになになんなの!?」
思わず私はその場に伏せたがそれは正解だったらしい。元々私の胸があった辺りを高速で何かが通過していった。
もう私は冷汗ものである。あんなのに直撃したら恐らく低HPで紙装甲な私は即死しそうである。さっきまでのんびりしていた草原はどこにいってしまったの。
「そもそもあれは何…?遠距離攻撃?」
ドンッという音が射撃音で何か鋭い物を飛ばしているのだろうか。でも今見渡してもそんな魔物の姿は見えない。私と同じように伏せているのか、それとも小さいのか。
「…小さい?」
何か嫌な予感がしてきた。思い出すんだ、ギルドの人はなんて言っていたか…。
対象は普通の兎と同じくらいの大きさです。
そしてわざわざ看板まで立てて注意させているのだ。
「は…いやいやまさかそんな。こんな序盤にあんな理不尽な速度で攻撃してくるなんて…。」
とりあえず正体を突き止めるしかないと私は伏せた状態から立ち上がった。すると今度は逆の方向からドンッと音がした。
「あっぶなぁいっ!あれ?でもさっきより遅い?」
なんかさっきよりも音が鋭くないというか…あ、通り過ぎたのが少し離れたところに落ちるのが見えた。これを逃す訳にはいかない!
私が急いでそこへと向かうと、草を押し倒しながら着地…したというかその割には不格好な白いやつがいた。
「あぁ…やっぱりこれが…」
白いそれの頭上にはばっちりと、【ロケットラビット】の文字が主張していた。
先日総合ptが200を超えておりました。皆様ありがとうございます。
こんな作品ですが気長にお付き合い戴けたら幸いです。




