表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煉獄の焔  作者: yukke
第七章 全てを託され前へと進む
76/122

第十一話 増える怨念

 激戦が終わった神楽家の夜。

3人と一緒に、疲れ果てたように布団に倒れ込んでいる花凛。

しかし、そこにいつも笑って話しかけてくるリエンは居ない。

いつも一緒に居るのが、当たり前になっていた花凛は、知らないうちに涙が頬を伝う。


「寂しいのですか? また会えるのですから、泣く必要はないでしょう?」


「でも、私の知っているリエンじゃないかも知れないし……。何だか、怖い」


「そうですか、大丈夫ですよ。フェーゲさんを信じて上げて下さい」


 そう言いながら、ネーヴァが花凛の頭を後ろから優しく撫でてくる。

花凛の布団に、ネーヴァが一緒に入っていた。


「ん? あれ? ちょっと待って、何でネーヴァさんが居るんですか?」


「え? あなたが心配でしたから。大切な友人と暫しのお別れで、悲しんでいるかと思いまして」


 そのものズバリな事をネーヴァに言われて、花凛は顔が赤くなっていた。


「ちょっとあなた。花凛さんは、私達が慰めるのです」


 その様子を、隣の布団から見ていた美穂が、花凛の布団に潜り込んでくる。


「ちょっと、美穂! ズルいわよ、私も慰めるんだから!」


「私も」


 そう言って、夏穂と志穂も花凛の布団に入ろうとしてくる。


「ちょっ、待って。全員は無理だってば!」


 さすがにこの状況に花凛は焦るが、お構いなしに花凛に密着してくる3人に、ありがた迷惑な友人だなと感じていた。


「神龍の巫女に、ここまで大事にされる龍は珍しいですわね」


 その様子を見て、パジャマ姿のネーヴァが花凛の布団から出て、花凛達を眺めた。


「それだけ想ってくれる友人がいれば大丈夫でしたね。私は、別の部屋で護衛も兼ねて待機していますので。花凛さん、あなたはしっかりと休んで下さい」


 あの後、味方をしてくれた四天龍達と挨拶を交わしていた。

ネーヴァは、のんびり屋だけれども良いお姉さんといった感じで、話していて落ち着くので花凛は好きであった。


 ネブラの方は、少し取っつきにくい感じではあったが、面倒くさがりさえしなければ、その仕事ぶりはテキパキしていて出来る人間のイメージである。

ただ、取り組むのに時間がかかるのが難点であった。


「ありがとうございます。ネーヴァさん」


「どういたしまして。神龍復活の儀まで、あなたはしっかりとその3人を守るのですよ?」


 そう言いうと、ネーヴァは部屋を出て行くと隣の部屋に向かった。


「あんな龍も居るんだな」


「もしかして、私達は今まで低級の龍しか見ていなかったのでしょうか?」


「それを言うと、リエンもそうならない?」


 志穂の言葉に、 美穂が咄嗟に口を塞いだ。

そして、おずおずと花凛を見る。悪い事を言ってしまったという感じの顔で。


「大丈夫だよ、美穂。昔のリエンは確かに、上から目線で色々ダメだった所もあるかもだけれど、それも含めてリエンは大切な友人だよ。ちゃんと、ダメな性格は私が直すよ。もし、戻って来た時に性格が昔に戻っていたら、私が直すからね」


 花凛は3人に気を使わせまいと、必死に笑顔を作っていた。


「花凛さん」


 その言葉に美穂が花凛を抱きしめてきた。


「あっ、私も!」


「もちろん、私も」


 夏穂と志穂まで花凛に抱きついてくる。

さすがに、3人にも抱きしめられると少し息苦しくなっているようである。


「待って3人共、苦しいから。っていうか、そろそろ私の布団から出てよ~」


 こうして、長い一夜が更けていく。










 アメリカにあるNEC本社ビル、その屋上には大きな流線形の装置が置かれている。

そして、その装置の前にはサディアスが立っている。


「くく、龍達の身勝手な権力争いの間に。こちらは、タルタロスまでの道が出来上がりましたね。後は、これを指定の場所に置き、開け放たれたタルタロスへの裏口に繋げば完璧です」


 そして、サディアスはゆっくりとビルの淵に移動する。

ここは、アメリカの100階以上ある超高層ビル。

眼下に広がるは、米粒のように小さく見えるアメリカの街並みである。

強く吹き付ける強風にも、サディアスは全くビクともしていない。

不敵な笑みを浮かべ、まるで神の様に下の世界を覗いていた。


「人間共よ、まもなくだ。お前達が築き上げたものが、いったいなにを犠牲にしているのかを思い知れ。何もかも忘れ、同じ事を繰り返す人類はここで滅ぶがいい」


 そして、次は顔を上に天を仰ぐ。

まるで、何かを確認しているかのような様子である。


「さて、後はタルタロスの壁を壊し穴を広げていくだけ。今はヒビが入っているくらいだからな、もう少し壊しておくか」


 すると、サディアスの身から黒いオーラが吹き出る。

だがそれは普通の鬼のオーラとは違い、異質で威圧感があり、そして何より禍々しかった。

そして、サディアスは気分よく高笑いしている。

徐々にオーラは天にのぼり、途中で何か別の空間に入ったかのようにかき消えていく。


「さて、これでいい。で、貴様はいつまでそこで眺めているのだ」


 すると、サディアスは急に誰かに声をかけている。

その時、サディアスの背後の暗闇から誰かが立っている。暗くてその全容はよく分からない。


「ふん、こういう隙をつくやり方は気に食わんのだがな」


 暗闇からその人物がサディアスに話しかける。

その口調から、不機嫌そうになっているのがみてとれる。


「あなた達には悪い様にはしません。安心してください」


「利害が一致している間は……だろ?」


 その言葉にサディアスの表情が曇る。


「ふん、まぁいい。だが、これだけは覚えておけよ。次、勝手な事をしたらその喉食いちぎってやるからな」


 暗闇にいる人物は、獣の様な低いうなり声を上げながらサディアスを威圧すると、暗闇の中に溶けるかのように気配を消した。


「ふふ、お前の目的はタルタロスの中にある“アレ”だろう。だが、させんよ。せいぜい、邪魔者を引きつけておいてくれよ。怨念で鬼化させたものでは限界があるのでな。早く怨念を使って、人間共を生物兵器に仕立て上げなければな。それもまた、計画の要だ。沢村に一層気を締めてもらわんとな」


 そして、サディアスはゆっくりとビルの淵から下りると、屋上の出入り口へと向かっていく。

すると、月明かりに照らされサディアスの影が大きく伸びていく。

だが、それは人の姿ではなく龍の姿でもない、禍々しい悪魔のような形をしていた。


「さぁ、始めよう。人類最後の宴を。足掻き、惑い、狂い、絶滅し、嘆くがいい。負の感情を爆発させろ。それこそ、タルタロスに巨大な穴を穿つ最後の鍵なのだ。フフ、フフフハハハハハハ!!」


 月夜の超高層ビル群の中、サディアスの笑い声だけが天に響き渡っていく。

まるで、人類の不幸願うように。

そして、その笑い声が宴の合図と言わんばかりに、声はエコーし遠くへ遠くへと響いていく。


 その笑い声に何か力が込められていたのだろうか、辺りにある禍々しいオーラがうねりだし苦しそうな人の顔になると、下の街へと向かっていく。

徐々に徐々にその数は増えていき、そして次々と街へと空へと放たれていく。

それは、タルタロスに封じられていた怨念か、それともこの世界に漂っていた怨念かは分からない。

タルタロスから怨念が漏れ出している今、地上も空にも様々な怨念が満ちていた。


 まるで、人類最後の時が来るのを喜ぶかの様に、怨念は喜々として飛んでいく。

人に死体に、様々な物に取り付きその怨念を晴らすために。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ