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煉獄の焔  作者: yukke
第七章 全てを託され前へと進む
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第九話 神楽家急襲 ~ 集う四天龍 ~

 解放された花凛の力は、凄まじかった。

まるで、一瞬で人を焼き尽くすかのような業火を、瞬時に広範囲出したのだから。


「なんて、熱量ですか。私の氷の壁でも、何重にも張らなければ防げないほどじゃないですか。これなら、さすがのグラディウスも」


 だが、炎の中から上着が燃え尽き、上半身を露出させた源十朗が炎を払い、突撃してくる。


「ぐぅぅぅう!! やってくれたなぁ!!」


 ものすごい雄叫びを上げ、肩から巨大な剣を生やしている。

更に、背中にも何本か刀剣が突き出している。


「不味いですね。グラディウスが本気になった!」


 さすがののんびり屋のネーヴァも、この事態に危機感を感じて花凛に加勢に向かう。


「ふぅ、あっぶなかったわ! あの人、凄いな。ってか、リエンの奴……」


「はいです、全て花凛ちゃんに託したようです」


 紫電達を襲っていた敵も、先程の花凛の攻撃で全てやっつけたようで、周りに土や岩の人形の様な物が転がっている。


「舐めてくれたものだな。襲って来ていたのは、数人だけ。後は、全部この人形みたいな物だったんだ」


 神田が辺りの光景を見て、言ってくる。

透明化能力の奴も、気絶したようであり。透明化が解除されていた。

その本人は、木の後ろに隠れていた。

『ブーンドック セインツ』は、全員息があるようで神田がロープで次々と縛っていく。


「よっしゃ、ほな俺等も加勢に行くで!」


「はいです!」


「よし!」


 紫電に続き、アシエと神田が花凛の元に走って行く。

そして、すぐにその場にたどり着くが。

そこはまさに手を出す事が出来ないくらいの、大激戦が繰り広げられていた。

あのネーヴァですら、弓を引きながらもどうすれば良いのやらと、困った顔をして硬直している。


 辺りには、鉄と鉄がぶつかり合う音。そして、花凛の放った業焔の熱気が舞っている。


「そこ!!」


 源十朗の、日本刀よる攻撃をしゃがんで回避した花凛は、相手に足払いをかけ、そのままあごに掌底をくらわすべく、左手を突き出すが。

相手の目がぎらついていることに気づき、咄嗟に手を引く。

すると、相手の髪の毛から小さな刃が飛び出して来て、花凛の左手のあった部分を通り過ぎる。

引いていなかったら、危なかった。


 そして、源十朗は地面に倒れる事無く体勢を立て直すと、次々と右足で蹴りを入れてくる。

ただ、その蹴りからは次々と真空の刃が飛び出してくるので、花凛は回避がギリギリになっている。

偃月刀でも受け止めながら、源十朗の攻撃を防ぐが、続けて日本刀の攻撃が襲ってくる。


「くっ……!!」


 それも、偃月刀で辛うじて受け止める。


「ふっ、確かに先程とはうってかわってだが。まだ、甘い」


 源十朗の姿は、体の至る所から刀剣が出ており、表情も厳つく変化し完全に龍化していた。


「甘い? これでも?!」


 そう言うと、花凛は左手を離すとパッと手を広げる。

すると、炎の塊が出現し形を成していく。

そして、細くなった炎の部分を掴むと。炎の中から、もう1本の偃月刀を出現させる。


「なっ?!」


 そして、それを源十朗の顔を目がけて振り抜く。

しかし、激しい音と共に源十朗の口元でピタリと止まった。

なんと、源十朗は歯で花凛の攻撃を受け止めていたのだ。


「うそっ?! こいつ、獣か何か?」


「くく、だから。甘いんだ」


 どうやら、源十朗は剣閃や刃を操るだけで無く。

体中を刀剣に変化させることも出来るようである。

つまり、歯を刃に変えて受け止めたのである。


 そして、そのまま花凛の腹部目がけて、横に蹴りを入れてくる。足の刃で切り刻むつもりである。

そうはさせまいと、花凛は左手に力を入れ刃先に炎を出現させる。


「ぬっ?! ぐぅ!」


 炎の熱さと焼ける痛みで顔が引きつるも、離すつもりは無いようである。

すると、花凛は日本刀を引いた為に空いた右手の偃月刀で、挟み込む様にして切りつける。

間に合えと心の中で念じながら。


 だが、お互いの攻撃は同時に当たった。


「くっ!!」


「ぐぉ!」


 お互い、後ろに弾かれる様に吹き飛ぶと地面に転がる。

源十朗は、結局顔から斜めに斬りつけられ。

花凛は、腹から斜め上に斬られていた。


 しかし、お互い龍であり龍化している為、傷は一瞬で自然治癒した。

そして、再び。お互いが向き合う。

花凛は、今2本の偃月刀を両手に持ち、相手の大量の真空の刃に対抗しようとする。

もちろん、源十朗はそれに気づいているが戦闘技術は、まだまだ自分が上だと判断し、花凛に向かっていく。


 花凛は、向かってくる源十朗に対し、2本の偃月刀を持った両手を交差させると、斜めに交わる様に切り払った。

すると、十字に重なった炎の刃が源十朗に向かっていく。

だが、源十朗はこういう刃を扱うのが得意であるため、右手に持った日本刀で前方から飛んでくる炎の刃を、自分の日本刀に巻き込む様にして斬りつける。


「また、同じミスをするのか。俺には、こういうのは効かんといっただろう」


 源十朗はそう言うと、日本刀を振り抜き花凛の炎の刃を巻き込む様にして、真空の刃を放つ。

しかし、目の前に花凛の姿はなかった。


「チッ! 上か?!」


 花凛の行動を読んだ源十朗は、上を向く。

だが、そこにも花凛の姿はなかった。


「なっ?! どこに?」


「う・し・ろ!」


 その言葉に、源十朗が振り向くが、既に花凛は1本だけに減らした偃月刀で後ろから斬りつけていた。

背中に生えている刀剣すらも、無残に折れていく。


「あっ、がぁっ!」


 この時、花凛は初めて源十朗に膝をつかせることが出来た。


「ちっ、この野郎が。俺が、膝をつくなど何十年ぶりだ」


 そう言いながら、源十朗は起き上がり手をかぎ爪の様な形にすると、指の1本1本を刀剣に変化させていく。


五刀掌斬(ごとうしょうざん)!!」


 源十朗はそう叫ぶと、まるで瞬間移動したかの様に花凛の後ろに現れた。つまり、それだけのスピードで花凛を斬りつけたということである。

そうなると必然的に、花凛の体は瞬時に切り刻まれる。

しかし、今回は違っていた。多少動きが読めていた花凛は、何とか防御姿勢をとり直撃を免れていた。

そして振り向き様に、刃先に業焔と呼ぶに相応しい程の炎を纏わせた偃月刀で、源十朗を斬りつける。


「この進化した、“煉獄偃月刀”を舐めないでよね!! 神焔煉獄斬(しんえんれんごくざん)!!」


「ちぃ!! 俺の一撃の威力を削ぐなんてな、神龍の加護を得た龍がここまで厄介だとはなぁ!!」


 花凛の凄まじい業焔による斬撃を、刀剣の指をした両手でガシッと受け止める。

本来、普通の龍や真鬼程度ならこの攻撃をこの様に受け止める事は、不可能に思える。そんな強力な花凛の攻撃を、ギリギリではあるが受け止めるなど、さすがは四天龍と言うに相応しいレベルだあった。


「私は、リエンに託されたんだ!! あなたを倒すために、そして前に進む為に!! この逆境を覆してみせる!!」


 花凛の腕に力が入る、お互いが1本も引かず激しく燃え上がる炎の音と、それを受け止め押し返そうとし地面を踏みしめる音が、周りで手をこまねいている紫電達に、どれ程の打ち合いかを報せていた。


「ふん! 四天龍の2体だけなら、なんとかなるだろうなぁ。だが、サディアス。奴はなぁ……」


「それ以上の発言は、その口をもいででも止めますよ。グラディウス」


 すると、源十朗の後ろから綺麗な声が聞こえてくる。

澄み切ったネーヴァの声とは違い、鈴の様な綺麗な声。

そして、その声を花凛は知っていた。


 源十朗の後ろには、金髪碧眼のサラサラのロングヘアーでネーヴァにも負けず劣らずのモデル体型である、アビゲイルの姿があった。

そして、そのアビゲイルの姿を見たネーヴァが弓をそちらに向けて引き絞る。


「あら、これはこれは珍しい。お久しぶりですね、“陣風(じんぷう)龍 ベェーチェル”。今までどこに?」


 そのネーヴァの言葉に、アビゲイルが答える。


「私の大切な人の元にいたわ。それより、私もその龍の名前を捨てているのよ。今はアビゲイルよ」


 アビゲイルの返答に、ネーヴァは顔をしかめた。のんびり屋のネーヴァが、ここまでの表情を見せるのは珍しいらしく、紫電達が目を見開いていた。


「アビゲイル。『父の喜び』ですか。何の冗談ですか? 四天龍ともあろう者が。今の邪悪な龍王に味方し、人々を鬼化させて。あなたの言う大切な人は、タルタロスの怨念を流出させて何が目的ですか?!」


 ネーヴァの言葉から、何とアビゲイルは四天龍の1体。陣風龍 ベェーチェルであることが分かった。


 すると、激しい爆発音が響きわたり、ネーヴァの元に花凛が転がり込む。

そして、源十朗が衝撃で後ろに下がりながら、アビゲイルの横につける。


「源十朗社長。退いて下さい。厄介な人物が到着しましたよ」


「あぁ?!」


 すると、花凛達から少し離れた所で激しい火柱と、濃い霧が発生する。

その様子を見て、源十朗はアビゲイルの言葉の意味を理解したのか、非常に不機嫌な顔をしてみせる、


「ちっ、確かに厄介な奴だな。煉獄王、フェーゲ!!」


 すると、火柱の中から40代に見える大きな男性が現れる。その姿は筋骨隆々であり、炎の様なミディアムの赤い髪を、後ろに流して数本をまとめて固めた様に立ち上げ、厳つい目つきで威厳ある風貌を醸し出している。


 そして、その傍には濃霧から姿を現したもう1人の男性もいた。

20代に見えるその風貌は、炎の中から現れた男性より少し背が低めである。

その目も眠そうな目であり、ボサボサのくせっ毛のショートヘアーは、寝癖で更に情けないことになっている。

服装も、よれよれの物を着ており、ズボンからシャツがだらしなく出ている。


「ふぅ、連れて来るのが遅いですよ。“瘴霧(しょうむ)龍 ネブラ”。あなたも四天龍です、自覚をして下さい」


 その姿を見た、ネーヴァが呆れた顔で眠そうな男性に小言と言っている。

しかし、その男性は動じずに頭を掻きながら反論する。


「はぁ、こんな面倒くさい事にいちいちかり出される身にもなれ。あと、お前にだけは言われたくないな、ネーヴァ」


 一理あるが、どっちもどっちであった。

四天龍のうち2体は、今何かNECと手を組み悪だくみをしようとしている現龍王に異を唱えている。


 ということは、今NECに味方している刀刃龍グラディウスと、陣風龍ベェーチェルに敵対している、この絶氷龍ネーヴァと、瘴霧龍ネブラと呼ばれた人物2人が、四天龍の中でも花凛の味方をしてくれる龍となるのだろう。


 だが面倒くさがりと、のんびり屋。果たして戦力になるのかどうか、疑問に感じた花凛である。


「まぁまぁ、君達。こんなところでガチで戦って欲しくはないものだね。君達、四天龍同士にらみ合っているだけでも、周りの動物達が逃げているくらいだからね」


 花凛は、煉獄王から放たれた声に目を見開き驚いた。

その声を知っていたからである。体格に似合わない、なんとも優しい声。


「え、ま、まさか。リエンのお父さん?!」


 その声に、煉獄王は花凛に目を向けにこりと微笑んだ。 

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