第八話 雷光龍 紫電 VS 三つ子の処刑人 清太 ②
気付くと清太は後ずさりをしている。
自分達が喧嘩を売った相手、そのレベルを測り間違えていた。
目の前の相手は、自分の攻撃が一斉効かない。それどころか、龍化したその姿は威圧的で目の前に対峙しているだけでも、冷や汗が出てくるレベルである。
そんな清太の様子に気づいた紫電は、ほくそ笑むと徐々に清太に近づいていく。
「なんや、なんや? 今更怖じ気づいたんか? あぁ?!」
「ひっ、ひぃ。く……くそ! こんなんじゃ、兄ちゃん達に顔向け出来ない。博士の役に立てない。このままじゃ、処分される~!!」
パニクった様子で、清太が回りの物を浮かせると乱雑に回転させ、加速を付けて紫電に当てる。
「こんなん、もう効かんわ!!」
紫電は、全身を紫の雷でスパークさせると飛んでくる物を自分に当たる前に、消し炭にしていく。
「くっ、くそ!!」
清太は、もう一度紫電を浮かせようとしてくる。
しかし、紫電はそれよりも早く雷の速度で清太に突撃すると、清太の両腕をガシッと掴み、上に挙げるのを阻止する。
「うっ、くそ!! は、離せ!」
「はっ、こうすると何も動かせへんやろうが。簡単な事やったな、今度はお前がどこまで耐えられるかやで!!」
そう言うと、紫電は電気ショックの様に清太に向けて雷を浴びせる。
「うぁぁぁあああ!!」
苦痛の叫び声を上げる清太に、死なない程度に徐々に電力を上げていく。
「おら、降参せぇ!! お前かって死にたくはないやろ?! って、何?!」
すると雷を浴びせる紫電の周りに、またしても様々な物が集まってくる。そして、紫電までも浮き上がる。
その様子に、紫電が驚きの声を漏らしていた。
よく見てみると何と、清太が物を動かしていたのだ。手首を動かしながら。そして、何故か自分自身をも浮かせている。
「アハハ、何だ怖がる事無かったな。ドラゴンって意外とバカ何だね!! 装置から発せられる、特殊なオーラを当てた物を動かせるんだよ! バレたかと思ってひやひやしたね」
「なっ、何やとぉ?!」
どうやら紫電が見当違いをしていたらしい。
腕を前に伸ばしていたのは、そうやってオーラを出しその先の物を動かす為。両腕を横にしていたのは、自分自身にオーラを向けて当てる事で自身を浮かす為の動作だったのだ。
そう考えると腕を横にしていた時、手のひらを上にして自身に向けていた。
それを思い出した紫電は、自分の思考力の無さに嫌気がさしていた。
そして同時に、勝てたと思い大見得をきってしまっている自分にも、恥ずかしさを感じていた。
「ちっ、俺もまだまだやな……」
紫電は、そう呟くと徐々に上がっていく視界の先の雲を眺める。
紫電達の周りには、パイプ椅子に屋台で使われている鉄板等までもが回転しながら上がっている。
「で、何で物まで一緒に浮かせとんねん。俺等だけでええんちゃうか?」
「君を逃がさない様にさ。それより、そろそろ腕離してくれないかな~?」
「はっ? アホか、離さへんわ。ついでに、俺の領域へ招待したるわ」
すると、上空から雷音が鳴り響く。
清太が空を見上げると、いつの間にか雷雲が発生しそこから紫の雷が帯電していたのだ。
「なっ、これは?!」
「おらぁ!! 覚悟せぇよ!」
清太が気づいたときには、既に遥か上空数百メートルにまで上がっていた。そう、紫電も自らの脚に雷を纏わせ、凄いスピードで上空へとあげていたのだ。
すると、この高さは清太自身始めてなのだろうか足が震え始めていた。
「はぁ、はぁ。ま、まさか……」
いや、清太の足が震えているのは、この男がやろうとしていることに気づいたからである。
すると、下の方から頑張って追いかけていた様々な物が急に下へと落ちていく。どうやら、動かしている物がある程度離れると、制御出来なくなるようであった。
落ちていく物を眺める清太。
それが、正にこれから起こることを暗示しているかのようである。
「そうや、いっちょ度胸試しといこうやないか。ここから、一気に雷を俺達に纏わせ、雷となって下へと落としたる。俺は、お前の制御で動けへん。お前は俺が掴んでいて逃げれへん。さぁ!! どっちが先にビビって離すかや!!」
「ア、アハ。アハハ、アハハハハハハハ!!」
まるで狂った玩具の様に高らかに笑い出す清太に、紫電は気持ち悪さを感じていた。
「あまりの恐怖に気でも狂ったんか?!」
「アハハハハハハハ、君は僕達の事を全く知らない。だから、こうすれば怖じ気づくと思ったんだろ? 残念だな! やるならやってみなよ!! お前もこの高さからはただじゃ済まないんだろう?!」
「よぉ言うたわ。俺は、はなからやる気やで。泣いて謝ったって止めへん
つもりでいたわ!」
紫電がそう言うと、上空の紫の雷が紫電達に纏わりつく。
そして、1本の巨大な紫の雷となり地面に引っ張られる強力な力を使い、地面へと光速で落ちていく。
「おら、ただのチキンレースちゃうんやぞ!! 一瞬やねんでぇ!!」
「アハ、アハハハ。どうせ、お前を殺せなきゃ処分……されるん、だ」
「なっ……?!」
その刹那。激しい雷音が辺り一体にに鳴り響き、眩い雷光が辺りを一瞬で包み込む。
「はぁ、はぁ……ったく。なんやこのガキは」
大量の土煙と、未だにステージ前辺りを放電している紫の雷の中に、立ち上がっている紫電の姿があった。
そしてその右手には、意識を失った清太をぶら下げている。
「ちっ、あまりの速度に意識が飛びやがったか。やっぱ中身は人間やな」
そう、あまりの速度と重力により、清太は地面に激突する前に意識を失っていたのだ。
そのおかげで、動ける様になった紫電が清太を掴み地面に着地したのだ。
「しかし、あのまま気絶せ~へんかったら、俺もろとも死ぬ気やったんか?」
何か、納得出来ない表情の紫電は清太に目を落としていた。
「こいつらに指示を出している奴を何とかせんと、このままやったら処分されるんか? ちっ、学校内でのんびりと、高みの見物しとるんとちゃうやろな?」
紫電は、辺りを見渡すもののそれらしき人物はいなかった。
そもそも、目に付く人々は全て洗脳されていたからだ。
ステージ前には人がいなかったので、先程の戦闘の影響を受けた者はいなかったが、この3人の処刑人との戦いをどこかで誰かが見ているとなると、あまり穏やかな心境にはなれない紫電であった。
「ちっ、しゃ~ないな。まずはこの3人との戦いを終わらせなあかんか。というか、警察はもう着いとるはずやのに突入してこんのか? まさか、一般人が洗脳されとるのを見て、警戒しとるんか?」
紫電は、珍しく頭を使い状況を把握しようとしていた。
「あかん、頭痛なってきたわ。どちみち警察じゃ相手にならんし、俺等がやるしか無いな。とりあえず、どっちかの助太刀に行くとするか」
ほんの数分で思考を止めた紫電は、清太を引きずりながら校門前へと向かっていく。
「あ~、しかし。初日でこれとは学園祭とやらは、中止になるやろうな~せっかく、美味いもん沢山食える思たのに……あかん、考えたら腹減ってきた」
現在の状況等全くピンチでは無いと思っている紫電は、ブツブツ言いながら中止になるかもしれない学園祭の屋台の心配をしている。
しかし、その先は未だに戦闘の音が聞こえている。
アシエも花凛もまだ決着がついていなかった。




