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煉獄の焔  作者: yukke
第四章 動き出す巨悪
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第五話 ~ 悪の鼓動 ~ ①

 翌朝、登校中花凛は浮かない顔をしていた。

結局、あれから神田の連絡は無かったからだ。

しかし、花凛は恐らく鬼化した者の犯行なのは確信していた。

よく考えると、神田は暴力団の事件を担当する刑事ではないからだ。

なのに神田が呼ばれた。


 それは、神田が追ってる事件と関係があるから。そして、神田は鬼化した者の起こした事件を担当している。

つまり神田が呼ばれた時点で、鬼化した者の仕業と警察は断定しているのだ。

その答えにたどり着いてから、ずっと花凛は神田の連絡を待ち続けていた。しかし、結局昨日は何の音沙汰もなかったのだ。


 学校に着き、教室に向かう最中花凛はため息をつく。


「まだいろいろ情報集めしているとこなのかな?」


『焦らなくても、そのうち連絡くるわよ』


「そうなんだけど」


 花凛は、昨日からの不安が拭いきれなかった。


「おっはよう~花凛!」


「おはようございます、花凛さん」


「花凛、おはよう。昨日はどうだった?」


 夏穂、美穂、志穂が仲良く挨拶してくる。


「あっ、おはよう。ん~と、昨日の事はあんまり報告できないかな、ごめん」


 花凛は、丁重に断る。そうしないと、この3人にも危険が及ぶのではと考えていた。


「ん~そうだと思ったよ。まぁ、あたしらはメディアの情報しか知ることが出来ないしね~ところで、元気がないですね~花凛」


 花凛の顔色を伺うように夏穂が聞いてきたので、花凛はビックリして目をパチクリしてしまう。


「花凛さんが浮かない顔をしているのは、やっぱり昨日の夜と今朝のニュースでもやっていた事件ですよね?」


「やっぱり、あれ化け物の仕業なの?」


 美穂と志穂も会話に加わってくる。さすがに、これ以上口ごもってるわけにもいかなかったが、花凛もまだ詳しい情報ははいってきていないのでその旨を伝えるしかなかった。


「そっか~。まぁ、私らが集められる情報なんてたかがしれてるしね~」


 夏穂がそう言いながら、腕を頭の後ろに組みイスを後ろに傾けている。よっぽど、自分達が役に立っていないのが腑に落ちないらしい。


「そうは言っても夏穂、あなたが集めてくるのはどれも適当な物ばかりじゃない」


「いやいやいや、そんなことないって。『トンネルの花子さん』なんて有力だと思うじゃん!!」


「夏穂、それを言うなら『トイレの花子さん』でしょ?」


「いやいや、違うんだって! 良い? 町外れにある山の麓にさーー」


 夏穂と美穂が怪談話で漫才を始めたので、花凛はこれはこれで面白いと思い聞き入っていた。


「ごめん。こんな2人で」


「ん? 良いよ志穂。これはこれで楽しいから」


「それなら良かった」


 そう言って、滅多に笑わない志穂が笑顔を向けてきた。


「あと、もうすぐ学園祭だから。皆準備に追われている。ほんとは、皆も花凛と話したいはずだよ」


「そっか」


 志穂にそう言われ辺りを見渡すと、確かに皆慌ただしく打ち合わせの様なことをしていた。

転校したばかりの花凛は、半分お客みたいな扱いで学園祭を見て回る事になりそうだなと感じていた。



 1限目が終わり、休み時間に入った直後に狙ったかの様に神田から電話が入る。

花凛は、ようやくかと思い人気の無い所に行き電話にでる。


「すまん、花凛。連絡が遅れた。だいたいは分かってるとは思うが、ニュースでやっていた事件、あれが鬼化した奴の犯行だと断定された。なので力を貸して貰いたいが、まず犯人探しが難航しているのだ」


「と言うと?」


 電話の向こうでは慌ただしく動いてる人達の声や音が聞こえてくる。相当な事件であることが伺えた。


「犯行を目撃した者は誰もいないのはもちろんだが、関係者をあらっても怪しい人物が出てこなくてな。それで、身内だろうと片っ端から暴力団と関係しているか、知っている者を探っているんだ。花凛は、誰か知っているか? そういう人物か、知り合いに暴力団の関係者がいるとか。いてくれない方が有難いんだが……」


 最後の言葉は、刑事としての不安から出た言葉であろう。

花凛は、記憶を探り誰かいないか探ってみた。しかし、亮であったときは人脈などほぼ無かった為あまり思い当たる節が出てこなかった。

だが、1人だけ浮かび上がった花凛はその瞬間声を上げた。


「あっ! 1人いる。知り合いに暴力団の人がいるって人」


「な、何だって?!」


 神田でも、これはさすがに驚きの声を上げていた。


「私が、この体になる前にバイトしていた所のオーナーよ」







 放課後、花凛と神田は一緒に花凛が亮であったときのバイト先の前に着いていた。

そこは、ペットショップであった。


「お前、こんな所でバイトしていたのか」


「悪い?」


 このペットショップは、犬猫はもちろん小動物や爬虫類まで置いてある大型の店舗になっている。

因みに、前の道路に沿うように数分進むと大型のショッピングモールもある。休日なんかは、ここで買い物をした人達がペットショップに流れて来て大忙しであった。

しかし、今は平日なので閑古鳥である。


 中に入ると、店員の挨拶があるが殆ど冷やかしが多いため本気で接客してくることは無かった。花凛の姿を見ても「久しぶり」と声をかける事もない。

そのまま、レジへと向かうと退屈そうにパソコンをいじっている1人の人物が見えてくる。

この、痩せこけている人こそここの店の店長でありオーナーでもある人物だ。

花凛は、まっすぐその人の元へ向かい。挨拶をする。


「お久しぶりです、オーナー。この姿では初めましてですけどね」


 その言葉に、オーナーは振り向き目をパチクリさせている。


「こんな姿になってしまいましたけど、谷本亮です」


「あっ、あ~! 谷本か?! 変わったな~性転換したってのはホントだったか」


 あまりの言葉に、花凛は口元をひくつかせて反論した。


「いや、そうじゃなくて。死んだけど、この体で蘇ったの!」


「いや、悪い悪い。親御さんから聞いているよ。大変な事になっているようだな」


 オーナーは悪気が無いかのように、にこやかに返している。

周りの店員も、ようやくこの女性がバイト仲間の亮だと知り驚愕している。その後しばらく他愛ない雑談を交え、花凛は本題に入る。


「で、今日オーナーに会いに来たのは少し聞きたい事があって来たんです」


「ん? なんだ?」


「その、ニュースの事件の事で何か知っている事はないかなと思って」


 その瞬間、オーナーの顔が険しくなった。


「なんで、お前がそれを知りたがる」


 すると、そこに神田が割って入ってくる。


「失礼。私は警視庁の者です。花凛は、今我々の協力者なのです。なので、知ってる限りの事で良いのでお話をお伺いしたいのですが」


 そう言いながら神田は警察手帳をオーナーに見せる。


「あ~、なるほどな。そうか、分かった。まぁ、お前には暴力団関係の事をちょいちょい話していたしな、しょうがない。ただ、ここでは話せないので。ちょっと、裏にでも来てくれませんか?」


「分かりました」


 花凛は、リエンの姿が見えないので何処だろうと辺りを見渡すと、オウムの前で目をキラキラさせて眺めていると思ったら、ウサギの所に飛んで行きまたキラキラした目で見ていた。

まるで子供みたいに楽しんでいるリエンを見て、邪魔するのも悪いかなと思い、そのままにしてオーナーと神田の後に着いていった。


 カーテンレールで仕切られた中に入ると、そこは商品の在庫やペットホテルを利用しているペット達の置き場所である。


「で、谷本……じゃない、今は花凛か。お前はいいだろう、警察だけで……ってそうか、テレビでやっていたな。お前今ヒーローやっているって」


 オーナーはそう言いながら、こぢんまりした背もたれのない丸いパイプイスを3つ取り出し、その1つに座る。

花凛と神田も続けてパイプイスに座る。


「さてと、事件の事だよな。まぁ、そこの暴力団には俺の同級生が居るんだがな。今回の事件で殺されたよ。」


「何ですって?! そうですか、それは誰ですか?」


 そう言いながら、神田は数枚の写真を見せてきた。

おそらく被害者の顔写真であろう。


「あぁ、こいつだ」


 オーナーは一枚の写真を指さした。


「そうですか、何か事件の前に話とかされましたか?」


「そうだな、これは誰にも言うなと口止めされていたが。警察に黙っていても良いことはないか」


 そう言いながら、オーナーはゆっくりと話を始めた。

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