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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な年の瀬、その先に
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第九章 不思議な年の瀬、その先に⑥

第九章第六話です。


いよいよ始まる、ヴァルゴmk2の本格試験。


陸上、水面、そして水中へ――。

新しい機体は、どこまで動けるのでしょうか。


どうぞお楽しみください。

■第九章 第六話


 テツロウはヴァルゴmk2の

 コクピット内から、

 巨大で水着姿のタリアとリオ、エアリ、リブラを

 見上げていた。


 透明なキャノピー越しに見える四人は、

 期待と少しの緊張を胸に、

 静かにヴァルゴmk2を見守っている。


 テツロウは、

 ヴァルゴmk2を起動させようと、

 以前のヴァルゴと同じように電源スイッチを入れた。


 しかし――。


 ヴァルゴmk2は、まったく反応しない。


 「タリアちゃん、電源入らないんだけど……」


 そう言って前方にいるタリアへ声をかける。


 「これはですね~」

 

 タリアは少し照れたように笑うと、

 テツロウが乗るヴァルゴmk2を、

 壊れ物を扱うように両手でそっと持ち上げた。


 透明なキャノピーいっぱいに、

 巨大なタリアの姿が映り込む。

挿絵(By みてみん)


 「タリアちゃん……?」


 テツロウは困惑しながら声を上げた。


 タリアはヴァルゴmk2を優しく抱えたまま、

 機体背面に備えられたゼンマイを、

 ゆっくりと巻いていく。


 その間もキャノピー越しには、

 巨大なタリアの姿が

 目の前いっぱいに広がっていた。


 やがてゼンマイを巻き終えると、

 タリアはヴァルゴmk2をプールサイドの片隅へ、

 そっと丁寧に下ろす。


 「テツロウ氏。これでもう一度、

  電源を入れてみてくださいですぞ」


 テツロウはタリアに言われるがまま、

 電源スイッチを入れた。


 すると――


 ヴァルゴmk2の各種装置が、

 次々と静かに起動し始める。


 「おっ、動いた!」


 テツロウが驚いた声を上げると、

 タリアは満足そうに頷いた。


 「テツロウ氏、これは予備電源のテストですぞ。

  機体背面のゼンマイを巻くことで、

  万一、主電源が使えない状況でも、

  最低限の機能を起動できるように

  してあるのですぞ!」


 タリアは胸を張って、誇らしげに説明した。

 続けてタリアは、


 「次は、主電源ユニットを取り付けますぞ!

  エアリ殿、お願いします!」


 「はい。テツロウさん、失礼しますね」


 エアリは優しく答えると、

 ヴァルゴmk2を両手でそっと持ち上げた。


 透明なキャノピーいっぱいに、

 今度は巨大なエアリの姿が映り込む。

挿絵(By みてみん)

 「また、これか……。

  エアリちゃん……」


 テツロウは再び困惑したように声を上げる。


 エアリはくすりと微笑み、


 「もう、テツロウさん。

  大丈夫ですよ。安心してくださいね」


 そう優しく語りかけると、

 ヴァルゴmk2の背面へ

 主電源ユニットを取り付けた。

 

 エアリはヴァルゴmk2を再び、

 プールサイドへ優しく下ろした。


 タリアは嬉しそうに胸を張る。


 「テツロウ氏、これでヴァルゴmk2は、

  以前のヴァルゴと比べて

  連続稼働時間が数倍になりますぞ!」


 エアリも穏やかに微笑み、


 「テツロウさん。

  操作に慣れるためにも、

  まずはプールサイドで

  基本操作の確認をしておきましょうね」


 「まずは前進ですぞ!」


 タリアの合図に合わせ、

 テツロウは操縦桿へ手を添えた。


 「よし……少しだけ」


 慎重に出力を入れる。


 しかし――。


 「うわっ!」


 ヴァルゴmk2は予想以上の勢いで走り出した。


 「速い、速い!

  止まらない!」


 プールサイドを一直線に駆けていく。


 「お兄様!」


 リオは素早く前へ回り込むと、

 両手を差し出した。


 ふわっ。


 ヴァルゴmk2は、その柔らかな掌の中へ

 優しく受け止められる。


 衝撃はほとんどなく、

 機体は静かに停止した。


 「大丈夫ですわ、お兄様」


 リオは安心させるように微笑む。


 「最初は加減が難しいものです。

  少しずつ慣れていきましょうね」


 「ありがとう、リオ。

  思ったより速くて驚いたよ」


 タリアは嬉しそうに頷いた。


 「推進装置は予定どおりですぞ!

  制御も問題ありませんな!」


 エアリも穏やかに微笑む。


 「それでは次は、ジャンプの確認をしましょう」


 その言葉に、

 リブラが一歩前へ出た。


 「それでしたら、

  リブラがお手伝いします~♪」


 そう言うと、

 リブラはプールサイドへそっと横になった。


 「テツロウ様、

  リブラを飛び越えてみてください~」


 「えっ、本当に?」


 「はい~。

  もし失敗しても、

  リブラがちゃんと受け止めますから♪」


 その優しい笑顔に、

 テツロウも決心する。


 「よし、やってみる!」


 ヴァルゴmk2は助走を始めた。


 「今だ!」


 勢いよくジャンプする。


 しかし――。


 「わあっ!」


 高さが足りない。


 ヴァルゴmk2は放物線を描きながら、

 リブラの体へぽすんと落ちた。


 「ご、ごめん!」


 テツロウは慌てて謝る。


 リブラは機体を両手で優しく包み込み、

 にっこりと微笑んだ。

挿絵(By みてみん)


 「大丈夫ですよ~。

  ちゃんと受け止めましたから♪」


 エアリも安心したように頷く。


 「衝撃もありませんね。

  機体も問題なさそうです」


 タリアは腕を組みながら言う。


 「今度はもう少し速度を乗せて、

  踏み切る直前にジャンプですぞ!」


 「分かった!」


 テツロウは深呼吸すると、

 もう一度助走を始めた。


 加速。


 そして踏み切る。


 ヴァルゴmk2は美しい放物線を描き、

 今度はリブラの体を見事に飛び越えた。


 「やった!」


 着地もきれいに決まる。


 「成功ですぞ!」


 タリアは嬉しそうに拍手した。


 リオも優しく微笑み、


 「さすがお兄様ですわ」


 エアリも頷く。


 「もう基本操作は大丈夫そうですね」


 リブラは起き上がると、

 嬉しそうに両手を合わせた。


 「テツロウ様、おめでとうございます~♪」


 タリアは嬉しそうに頷いた。


 「テツロウ氏、

  ではいよいよ水中テストを行いますぞ!」


 そう言うと、

 タリアはヴァルゴmk2を

 両腕で大切そうに抱え上げた。


 「それでは、行きますぞ!」


 大きく踏み切ると、

 そのまま温水プールへ飛び込む。


 ざぶん――。


 大きな水しぶきが舞い上がり、

 ヴァルゴmk2もタリアに抱えられたまま、

 水中へと入っていった。


 透明なキャノピーの向こうには、

 巨大なタリアの姿がいっぱいに広がっている。


 やがて、エアリ、リオ、リブラも

 次々とプールへ入り、

 ヴァルゴmk2を囲むように

 ゆっくりと泳ぎ始めた。


 エアリは穏やかに微笑みながら説明する。


 「テツロウさん。このプールは、

  以前、南の島でスターライトを

  取りに行った時の海を参考に、

  水深を調整してあるんですよ。」


 テツロウはキャノピー越しに

 周囲を見回しながら、小さく頷いた。


 「なんとなくだけど……。

  深い海の底まで潜水艇みたいなので潜って、

  スターライトを取りに行ったんだっけかな。」


 エアリは優しく頷いた。


 「ええ、その時のことを参考にしています。」


 タリアはヴァルゴmk2を両手で

 優しく支えたまま、

 にっこりと笑う。


 「それでは、いよいよ潜航テストですぞ!

  まずは浅い場所から始めますぞ!」


 「了解!」


 テツロウは操縦桿をゆっくりと倒した。


 ヴァルゴmk2の後部スクリューが

 静かに回転を始める。


 ぶくぶく、と細かな泡を残しながら、

 機体はゆっくりと水中を前進した。


 「おお……。」


 テツロウは思わず声を漏らす。


 以前のヴァルゴとは違い、

 水の抵抗を感じながらも、

 機体は驚くほど安定していた。


 リオ、エアリ、リブラも、

 巨大な体でヴァルゴmk2の左右や

 後方をゆっくり泳ぎ、

 その様子を見守っている。


 「直進性能、問題ありません。」


 エアリが落ち着いた口調で確認する。


 タリアも満足そうに頷いた。


 「予定どおりですぞ。

  それでは、次は水面のホバー走行テストを

  行いますぞ!」


 「テツロウ氏、操縦桿の横の青いボタンを

  押してください」


 テツロウは言われたとおりに

 青いボタンを押した。


 ヴァルゴmk2の姿勢制御が静かに切り替わり、

 機体は水面からわずかに

 浮いた状態で安定する――。


 「おお……」


 テツロウが思わず声を漏らす間もなく、

 操縦系がホバー走行モードへと移行した。


 テツロウは操縦桿をゆっくりと倒す。


 ヴァルゴmk2は水面すれすれを滑るように、

 静かに前へと進み始めた。


 「お兄様、こちらへどうぞ」


 進行方向には、水面からゆっくり姿を

 現すように見えるリオが優雅に

 両腕を広げて待ち構えていた。

挿絵(By みてみん)


 ヴァルゴmk2がその腕の届く範囲に近づくと、

 リオはそっと機体を包み込むように受け止める。


 「お兄様が操縦している姿……素敵ですわ」


 そう微笑みながら、ヴァルゴmk2の

 向きをゆっくりと反転させた。


 「次はリブラさんがお待ちですよ!」


 リブラは大きく手を振る。


 「テツロウ様~!今度はこちらですよ~」


 テツロウの乗るヴァルゴmk2は、

 リブラのもとへ向かって滑るように進んでいく。


 「テツロウ氏、ちょっと失礼しますぞ!」


 タリアは進行方向に合わせるように

 巨大な手を水面へ差し入れ、

 横方向へ水を押し出すように動かした。


 途端に水面にゆるやかな横波が生まれ、

 ヴァルゴmk2の進路を揺らす。


 テツロウは操縦桿を取られそうになりながらも、 

 必死に姿勢を維持し、

 そのままリブラの目前へと到達した。


 リブラは思わずヴァルゴmk2を両手で

 そっと受け止めるように抱え込み、


 「テツロウ様、操縦上手いですね~」


 と柔らかく微笑んだ。


 タリアは満足そうに頷く。


 「一応、海での横波状況を想定した

  耐性試験ですぞ」


 リブラはヴァルゴmk2をそっと水面へ戻した。


 「テツロウ様、次も頑張ってくださいね~」


 優しく微笑みながら、機体を見送る。


 ヴァルゴmk2のキャノピー越しに、

 テツロウはリブラ、そしてタリアを見上げた。


 タリアは赤いビー玉を指先に挟み、

 身をかがめてテツロウへ見せる。


「テツロウ氏、今度はこのビー玉を

 プールの底へ沈めますので、

 取ってきてくださいですぞ。」


 エアリは穏やかに説明を続けた。


「テツロウさん、これは水中潜行と

 耐水圧のテストです。」


「南の島でスターライトを取りに行った時、

 洞窟の入り口が塞がってしまったこと

 もありましたから。」


 リオも静かに頷く。


「お兄様。あの時は本当に心配しましたわ。

 ですから、このテストも必要なのです。」


「ああ、そうだな。やってみる」


 テツロウは頷いた。


 タリアは指先に挟んでいた赤いビー玉を、

 そっとプールへ落とす。


 タリアにとっては小さなビー玉でも、

 テツロウにとっては大きく、

 直径は自分の体の三分の一ほどもあった。


 「では、行ってくる」


 テツロウはヴァルゴmk2を操縦し、

 ゆっくりと潜行を始めた。


 改めて周囲を見渡す。


 タリア、リブラ、エアリ、リオ――。

 巨大な四人が見守る中、

 ヴァルゴmk2は静かに水中を進んでいく。


 テツロウはキャノピー越しに、

 水中から水面を見上げた。


 水面近くでは、照明の光が揺らぎながら

 差し込み、

 四人の姿は柔らかな光に包まれ、

 ゆらゆらと水面越しに覆うように映っている。

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 「この光景……。

  あの時と似てるな……」


 テツロウは小さく呟く。


 はっきりと思い出せない。

 それでも、この揺らめく光と、

 水面越しに見上げる景色には、

 どこか見覚えがあった。


 すると、プールの底には、

 タリアが落とした赤いビー玉が転がっていた。


 テツロウはヴァルゴmk2を

 ゆっくりと着地させる。


 「ほう……。浮力はあるけど、

  ちゃんと着地できるな。

  さすが、タリアちゃん」


 テツロウは操縦桿を動かし、

 ヴァルゴmk2の両腕で

 赤いビー玉をそっと拾い上げた。


 そして、そのままゆっくりと浮上を始める。


 水面へ戻ると、

 ヴァルゴmk2は赤いビー玉を掲げた。


 「とったどー!」


 「お兄様!」


 リオは嬉しそうに近づき、

 ヴァルゴmk2を両手で優しく包み込む。


 「さすがお兄様ですわ!」


 キャノピー越しにリオの大きな

 姿が目の前いっぱいに広がる。


 テツロウは照れくさそうに笑った。


 「タリアちゃんが作ってくれた、

  このヴァルゴmk2のおかげだよ」


 リオはタリアへ微笑みかける。


 「さすがですね、タリアちゃん」


 リオはヴァルゴmk2を大切そうに抱えたまま、 

 タリアのもとへ泳いでいく。 


 タリアも機体へ顔を寄せ、満足そうに頷いた。 


 「いやいや、テツロウ氏の操縦技術が  

  上達しているからですぞ!」 


 ヴァルゴmk2のキャノピーいっぱいに、 

 リオとタリアの

 優しい笑顔が映り込んでいた――。 


 タリアはさらに胸を張り、力強く宣言する。 


 「これにて、本日の試験は終了ですぞ!」 


 テツロウはヴァルゴmk2のコクピットの中で、

 ほっと息をついた。


 エアリも試験結果を確認しながら微笑む。


 「大きな問題は見当たりませんね。」


 タリアは腕を組むと、嬉しそうに続けた。


 「とはいえ、

  細かな調整はまだ残っていますぞ。」


 「もう少し各部のセッティングを煮詰めてから、

  本格運用へ移りますぞ。」


 「ですので、ヴァルゴmk2の本格運用は

  来年からですな!」


 「楽しみにしてるよ。」


 テツロウは笑顔で頷いた。


 リオも優しく頷いた。


 「そうですわね。この温水プールは、

  またお兄様とゆっくり楽しみたいですわ。」


 リブラも嬉しそうに頷いた。

 「はい~♪ リブラもテツロウ様と、

  またご一緒できるのを

  楽しみにしています~。」


 テツロウは巨大な四人の女性の笑顔を見渡し、

 自然と笑みを浮かべた。


 「今年も、もうあと少しだね。」


 エアリも空を見上げるように微笑む。


 「ええ。気がつけば、明後日は大晦日ですね。」


 リオは嬉しそうに微笑んだ。


 「明後日は、お兄様と一緒に

  新しい年を迎えたいですわ。」


 タリアも元気よく頷く。


 「もちろんですぞ! 

  テツロウ氏と一緒に新年を祝いましょうぞ!」


 エアリは穏やかに微笑みながら言った。


 「いいですね、テツロウさん。

  皆さんがよろしければ、

  ログハウスで一緒に

  新しい年を迎えませんか。」


 リブラは少し申し訳なさそうに笑う。


 「テツロウ様、ごめんなさい~。

  リブラは大晦日に

  年越しライブがありますので、

  ご一緒できないんです~。」


 それでもすぐに明るい笑顔になり、


 「でも、テレビで生中継されますので、

  ぜひ皆さんで見てくださいね~♪」


 テツロウは微笑みながら応えた。


 「リブラちゃん、ああ、テレビで見るよ。

  もう、今年もあとわずかだな……」


 「はい~♪ 楽しみにしていてくださいね~!」


 リブラは嬉しそうに手を振った。


 タリアは満足そうに頷く。


 「では皆さん、撤収しますぞ!」


 タリアはテツロウの乗るヴァルゴmk2を、

 壊れ物を扱うように両手でそっと抱え上げた。


 エアリ、リオ、リブラもその後に続く。


 こうして、ヴァルゴmk2の試験は

 無事に終了した。


 そして一行は、

 それぞれ新しい年への期待を胸に、

 温水プールを後にするのだった。


■第九章 第七話へ続く

第九章第六話、お読みいただきありがとうございます。


ヴァルゴmk2の試験も無事に終了。


細かな調整を残しつつ、

本格運用は新しい年へ持ち越しとなりました。


そして、いよいよ年の瀬も大詰め。

次は大晦日へと向かいます。


次回は10月20日(火)公開予定です。


次回もよろしくお願いいたします。

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