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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議なメイドの文化祭
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第四章 不思議なメイドの文化祭①

 第四章スタートです。今回は文化祭編となります。


【今回の主な登場人物】


・青星テツロウ

 本作主人公。不思議な日常に巻き込まれがちな青年。


・青星リオ

 テツロウの妹。落ち着いた物腰と上品さを持つ、お姉様のような女性。


・青星エミ

 テツロウの双子の妹の一人。優しく明るく、兄さん大好き。


・青星ミニ

 テツロウの双子の妹の一人。元気いっぱいで無邪気な性格。


・赤井エアリ

 テツロウの幼なじみ。しっかり者で頼れる存在。


・銀水リウス(NEW)

 今回初登場。エミたちの友人で、銀髪ショートのクールな少女。


 それでは、“もう一つの文化祭”をお楽しみください。

■第四章 第一話


 《宇宙のもと》での体験を経て――


 テツロウたちは、

 確かに“日常ではない何か”を知った。


 だが、その余韻はまだ心の奥に

 静かに残っているだけで。


 世界は何事もなかったかのように、

 いつもの日常へと戻っていた。


 ――十一月上旬。


 秋の澄んだ空気の中、テツロウはリオ、エアリと共に

 高校の校門をくぐっていた。


 今日は――文化祭。


 双子の妹、エミとミニが通う高校の催しだ。


 校内は賑やかな声と、焼き物の香ばしい匂い、

 甘いお菓子の香りに包まれている。


 「懐かしいですわね」


 リオが小さく微笑む。


 「こういう空気、嫌いじゃありません」


 エアリも周囲を見渡しながら頷いた。


 そんな二人の様子を見て、

 テツロウも自然と表情を緩める。


 「……なんだか、普通でいいな」


 そう呟いた、その時だった。


 「兄さーん!」


 聞き慣れた声が、人混みの向こうから飛んできた。


 振り向くと――


 そこには、メイド服姿のエミとミニが立っていた。


 「おかえりなさいませ、ですね」


 ミニがくすっと笑いながら言う。


 「兄さん、リオ姉さん、エアリさん。

  今日は楽しんでいただけたかしら?」


 エミは少し誇らしげに胸を張った。


 「うん、楽しいよ」


 テツロウは素直に頷く。


 その横で、


 「とても良い雰囲気ですわ」


 「ええ、完成度が高いですね」


 と、リオとエアリもそれぞれ感想を口にする。


 エミは満足そうに微笑んだあと、

 ふと思い出したように手を打った。


 「そうだ、兄さん。リウスちゃん、知ってる?」


 「リウス……?」


 聞き覚えのある名前に、テツロウは首をかしげる。


 「リウスちゃーん! こっち!」


 エミが手を振ると、人混みの向こうから

 一人の少女が歩いてきた。


 銀色のショートヘア。


 長身でスレンダー。中性的な整った顔立ち。


 そして――彼女もまた、メイド服姿だった。


 「テツ兄、お久しぶりです」


 落ち着いた声音でそう言って、軽く頭を下げる。


 「以前は、姉貴と一緒にお世話になりました」


 「ああ……ピスカさんの妹か」


 テツロウはようやく思い出し、小さく頷いた。


 「その節はどうも」


 「いえ。こちらこそ」


 短いやり取りだが、

 どこか距離の近さを感じさせる空気。


 その様子を見て、エミが満足そうに笑う。


 「ね? いい子でしょ?」


 「うん、落ち着いてるな」


 そんな穏やかな時間が流れる中――


 エミは少しだけ声のトーンを落とし、

 いたずらっぽく微笑んだ。


 「それでね、兄さん」


 「今度は――特別に」


 「兄さんのためだけの文化祭、

  やろうって話になってるの」


 「……え?」


 思わず聞き返すテツロウ。


 だが、エミは答えを濁すように微笑むだけだった。


 「楽しみにしててね」


 その横で――


 「テツロウさん。また文化祭、楽しみましょうね」


 エアリが優しく言い、


 「お兄様が楽しんでくださるなら、

  それだけで十分ですわ」


 リオも穏やかに微笑む。


 「いや、だからどういう――」


 問いかけようとした言葉は、そのまま宙に溶けた。


 この時のテツロウは、まだ知らなかった。


 それが――


 “もう一つの文化祭”の始まりになることを。


 ――そして、数日後。


 テツロウは、再び電車に乗っていた。


 隣にはリオ。


 向かいにはエアリ。


 いつものように、三人で並んで座っている。


 車窓の外には、見慣れた街並み。


 変わらない日常の風景。


 「またお出かけですわね」


 リオが穏やかに微笑む。


 「ええ。今日はいい天気ですし」


 エアリも静かに頷いた。


 テツロウは窓の外を見ながら、ふと首をかしげる。


 「……なあ、エアリちゃん」


 「はい?」


 「この前も、文化祭に行った気がするんだけど……」


 エアリは少しだけ微笑んだ。


 「そうだったかしら?」


 「でも今日は――」


 「ただの文化祭では、終わらないかもしれませんね」


 「……は?」


 意味深な言葉に、テツロウは眉をひそめる。


 「お兄様は、少しお疲れなのかもしれませんわね」


 リオが上品に微笑む。


 テツロウは釈然としないまま、

 窓の外へ視線を戻した。


 その時だった。


 電車が、ゆっくりとトンネルへ入っていく――


 窓の外は闇に包まれ。


 次の瞬間。


 カタン、と。


 どこかで“ポイントが切り替わる音”が響いた。


 「……あれ?」


 テツロウは、ふと顔を上げる。


 ――静かすぎる。


 さっきまで確かにあったはずの気配が、消えていた。


 「リオ……?」


 返事はない。


 「エアリ?」


 向かいの席も、空だった。


 そこにいるはずの二人が――


 まるで最初から存在しなかったかのように、

 消えている。


 テツロウは、小さく息を呑んだ。


 だが――


 電車は何事もなかったかのように、走り続けている。


 やがて、トンネルを抜けた。


 光が差し込む。


 そして――


 電車は、ゆっくりと駅へ滑り込んだ。


 ドアが開く。


 テツロウは、一人でホームへと降り立った。


 その瞬間――


 影が差した。


 「兄さん」


 頭上から、やさしい声が降ってくる。


 振り向いたテツロウは――


 思わず言葉を失った。


 そこにいたのは、メイド服姿のエミ。


 だが――


 あまりにも、大きかった。


 駅の屋根よりも高く、

 建物の一部のようにそこに立っている。


 「迎えにきたよ」


 エミは、いつもと変わらない笑顔でそう言った。


 ゆっくりと手が差し出される。


 その掌は、テツロウにとって広い床のようだった。


 「さあ、乗って」


 迷う間もなく――


 テツロウは、その手の上へと乗せられる。


 ふわりと身体が持ち上がった。

挿絵(By みてみん)

 視界が一気に高くなり、

 世界のスケールが崩れていく。


 そのまま支えられながら、

 エミの胸元近くへと運ばれる。


 「……近いな……」


 思わず、そんな言葉が漏れた。


 メイド服の布地が、すぐ目の前にある。


 普段なら意識しない距離のはずなのに、

 今はどうにも落ち着かない。


 視線の置き場に困り、

 テツロウはわずかに顔をそらした。


 「兄さん?」


 エミが小さく首をかしげる。


 その仕草ひとつで、また距離が近づく。


 「な、なんでもない」


 慌てて答えるテツロウ。


 しばらくじっと見つめていたエミは、

 ふっと柔らかく微笑んだ。


 「ふふ……」


 「あとで、もっとちゃんとご奉仕するね」


 その言葉はどこかいつも通りで――


 けれど今の状況では、妙に現実感がなかった。


 「……いや、その言い方……」


 思わずツッコミかけて、言葉を飲み込む。


 エミは気にした様子もなく、テツロウをそっと支えながら歩いていく。


 やがて見えてきたのは、校舎。


 ――のはずだった。


 「……あれ?」


 その一角に、見覚えのある建物があった。


 木造の外壁。


 どこか懐かしい造り。


 ――ログハウス。


 「入ろっか」


 エミは、その建物へと歩み寄る。


 そして――


 テツロウを乗せたまま、中へと入った。


 そこは、畳敷きの大広間だった。


 以前、泊まったことのある――


 あの場所と、よく似ている。


 足元の感触。


 空気の匂い。


 記憶の奥に、何かが引っかかる。


 「……ここ……」


 はっきりとは思い出せない。


 けれど確かに、知っている気がする。


 断片的な感覚だけが、胸の奥に残っていた。


 どこかで――


 似たようなことがあった気がする。


 「やっぱり……同じ……?」


 テツロウが呟いた、その時だった。


 カチッ――


 小さな音が響く。


 エミが壁の一角へ手を伸ばしていた。


 何かのスイッチを押したらしい。


 すると――


 ゴゴゴ……と低い音を立てながら、

 床の一部がゆっくりと開いていく。


 現れたのは――


 地下へと続く階段だった。


 その一段一段は、

 テツロウにとってやけに大きく見える。


 「こっちだよ、兄さん」


 エミは何気ない様子でそう言うと、

 そのまま階段を下り始めた。


 深く、下へ。


 静かに、奥へ。


 やがて――


 光が見えた。


 地下へ降りきったその先。


 そこには、明るく開けた空間が広がっていた。


 木のテーブル。


 並べられた椅子。


 やわらかな照明。


 確かにそこは――


 「メイド喫茶……?」


 テツロウが思わず呟く。


 だが、そのスケールは――


 やはりどこか、おかしかった。


 その時だった。


 「お兄ちゃーん!」


 元気な声が奥から響く。


 振り向くと――


 メイド服姿のミニが、大きく手を振っていた。


 その隣には、静かに立つ銀髪の少女――リウス。


 そして、その二人の前へ、ゆっくりと歩み寄るエミ。


 三人は自然と横に並ぶ。


 巨大なメイド服の三人が、

 テツロウを見下ろす形になる。


 ――近い。


 ――大きい。


 ――現実感がない。


 思わず、息を呑む。


 ミニは楽しそうに笑いながら、少し身をかがめた。


 「お兄ちゃん、待ってたよー!」


 エミはやわらかく微笑み、そっと言葉を重ねる。


 「兄さん」


 そして――


 リウスが、ほんのわずかに遅れて口を開く。


 「……テツ兄」


 三人の視線が、揃う。


 次の瞬間――


 三人は息を合わせるように、わずかに身をかがめた。

挿絵(By みてみん)

 そして――


 「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」


 その声が、空間いっぱいに広がる。


 巨大なメイドたち。


 不思議な空間。


 そして――この距離感。


 テツロウの知っている文化祭とは、

 もはやまったく別のものだった。


 ――不思議な文化祭は、ここから始まる。


 第四章 第二話へ続く

 お読みいただきありがとうございます。

 第四章は文化祭編として、にぎやかに進んでいく予定です。

 第四章 第二話は 5月19日(火)ごろ公開予定 です。

 今後は 毎週火曜日・金曜日 を目安に更新予定です。よろしくお願いいたします。

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