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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な海のテツロウ
14/32

第二章 不思議な海のテツロウ⑦

第二章・最終話です。


青星テツロウと、

エミ、ミニ、リオ、エアリ。


スケールの異なる世界の中で進んできた物語も、

いよいよひとつの区切りを迎えます。

■第二章 第七話


 潜水艇が、


 洞窟の奥へと進んでいく。


 外の光は、


 すでにほとんど届かない。


 岩肌に囲まれた空間。


 水の音だけが、


 静かに響いていた。


 その先に――


 淡い光が浮かび上がる。


 青く、


 静かに、


 しかし確かに存在している光。


 「……あれか……」


 潜水艇は、


 ゆっくりと減速する。


 その中心に――


 スターライトがあった。


 テツロウは、


 息をのむ。


 視界の端に、


 淡い表示が浮かび上がる。


 TYPE:α

 ID:668899

 STATUS:VALID


 (……α、か)


 識別は問題ない。


 これまで回収してきたものと、


 同じ形式。


 (……本物だな)


 だが――


 そこにあったのは、


 ただの鉱石ではなかった。


 人工的に整えられた、


 均一な構造。


 岩肌とは明らかに異なる、


 滑らかな造形。


 その中央に、


 スターライトは収められている。


 (……やっぱり、これか)


 テツロウは、


 わずかに視線を細めた。


 過去に回収してきた個体も、


 ほとんどが――


 こうした、


 台座のような構造の上にあった。


 (……どの個体も、同じだ)


 自然とは思えない配置。


 だが――


 理由は、


 まだ分からない。


 テツロウは、


 潜水艇を停止させた。


 ハッチを開く。


 外へ出る。


 水が、


 静かに全身を包む。


 音が消え、


 ただ光だけが残る。


 テツロウは、


 ゆっくりと近づいた。


 スターライトは、


 そこに在る。


 静かに、


 待っているかのように。


 (……回収する)


 手を伸ばす。


 触れる。


 その瞬間――


 じん、と。


 微かな振動が、


 掌に伝わった。


 「……っ?」


 (……反応してる……?)


 わずかな違和感。


 だが、


 任務は変わらない。


 テツロウは、


 そのまま持ち上げた。


 軽い。


 だが、


 存在の重みだけが残る。


 回収ボックスを取り出す。


 開く。


 固定機構が展開される。


 スターライトを、


 慎重に収める。


 カチリ――


 ロックがかかる。


 「……α668899、回収完了」


 その瞬間。


 ゴォ…………


 洞窟全体が、


 低く震えた。


 「……!」


 振り返る。


 入口。


 そこは――


 完全に閉ざされていた。


 岩が、


 隙間なく塞いでいる。


 「……おい……」


 空気が、


 わずかに重くなる。


 そのとき。


 ザー…………


 通信機に、


 ノイズが走る。


 テツロウは、


 急いで潜水艇へ戻る。


 ハッチを閉じる。


 音が戻る。


 通信が、


 つながる。


 『……テツロウさん……』


 「エアリか!」


 『……聞こえますか……?』


 「聞こえる!洞窟の中だ!」


 わずかな間。


 『……よかった……無事ですね……』


 だが、


 すぐに声が引き締まる。


 『洞窟入口が閉鎖されています』


 「……やっぱりか」


 『外側からの干渉は危険です』


 『水圧の影響で崩落の可能性があります』


 別の声が重なる。


 『兄さん……大丈夫ですか……?』


 エミ。


 『お兄ちゃん、転んでない!?』


 ミニ。


 リオの声が続く。


 『落ち着いて。出口はあるはずよ』


 エアリが言う。


 『内部に水流があります』


 『その流れに沿って進めば、


  どこかに繋がっている可能性が高いです』


 テツロウは、


 ゆっくりと前を見据えた。


 暗い洞窟の奥。


 わずかに感じる、


 水の流れ。


 (……出口は、ある)


 操縦桿を握る。


 潜水艇が、


 ゆっくりと動き出す。


 水の流れに乗る。


 奥へ――


 さらに奥へと進んでいく。


 やがて、


 流れが変わる。


 下ではなく、


 上へ。


 「……登ってる……?」


 水路が、


 上方へと続いている。


 『そのまま進んでください』


 エアリの声。


 『位置、上昇しています』


 (……出口か……)


 そのとき。


 『兄さん!』


 エミの声。


 『すぐ上にいます!』


 『お兄ちゃん、もうすぐ!』


 ミニ。


 『そのまま来なさい』


 リオ。


 そして――


 『位置、完全に一致しました』


 エアリ。


 やがて――


 視界が、開けた。


 そこは、


 広大な空間だった。


 「……地底湖……か」


 洞窟とは思えないほどの広がり。


 天井は高く、


 水面は静かに広がっている。


 そのとき――


 ゴゴゴ…………


 低い振動が、


 空間全体に響いた。


 「……!」


 テツロウは、


 反射的に上を見上げる。


 地底湖の天井。


 そこに、


 亀裂が走っていた。


 ゆっくりと現れる。


 最初に見えたのは、


 指先。


 光を背に、


 空間へと差し込まれる、


 巨大な手。


 その指が、


 岩を押し広げていく。


 続いて、


 腕。


 そして――


 顔。


 光の中から、


 覗き込むように現れる。


 エミ。


 リオ。


 ミニ。


 そして、


 エアリ。


 四人の姿が、


 太陽を背にして、


 地底湖を見下ろしていた。

挿絵(By みてみん)

 その輪郭は、


 光に包まれ、


 まるで神話の存在のように、


 神々しく浮かび上がっている。


 だが――


 その表情は、


 どこまでも優しかった。


 「兄さん――!」


 エミの声が、


 やわらかく響く。


 テツロウは、


 ゆっくりと息を吐いた。


 「……ほんとに、迎えに来てくれたんだな……」


 そして――


 操縦席から立ち上がる。


 ハッチを開く。


 水面へと出る。


 光が、


 一気に全身を包み込んだ。


 「……ちゃんと回収してきたぞ」


 スターライトを掲げる。


 「……よかった……」


 エミが呟く。


 やがて――


 光の中。


 巨大な彼女たちと、


 その足元に立つ、


 小さな一人。


 その距離は――


 どこか、


 近く感じられていた。


 そのとき――


 巨大な手が、


 静かに降りてきた。


 「兄さん……こちらへ」


 テツロウは、


 その掌へと乗る。


 やわらかい。


 だが、


 確かな安定。


 両手で持ち上げられる。

挿絵(By みてみん)


 視界が上昇する。


 そして――


 眼前。


 四人の顔。


 「おつかれさまです」


 「……さあ、帰りましょうか」


 「……ああ」


 テツロウは、


 小さく頷いた。


 「……悪くないな」


 その声は、


 静かに溶けていった。


 エミの手が、


 ゆっくりと動き出す。


 光の中へ――



■第二章 エピローグ


 テツロウは、


 エミの広大な掌のうえにいた。


 巨大な妹たち――


 そして、幼馴染のエアリに


 見守られながら。


 やわらかな光の中、


 静かな余韻が漂っている。


 そのとき――


 エアリが、


 やさしく微笑みながら口を開いた。


 「……さあ、帰りましょうか」


 その言葉に、


 テツロウはわずかに首をかしげる。


 「……帰るって……ログハウスか?」


 エアリは、


 小さく首を振る。


 「いえ――天の川市へ、ですよ」


 にこり、と微笑む。


 その瞬間。


 海の向こうから、


 巨大な影がゆっくりと近づいてきた。


 それは――


 南十字島へ来たときのフェリー。


 リオが、


 それを軽々と持ち上げていた。


 「お兄様の特別個室は、


  すでに装着済みですわ……」


 穏やかな声。


 テツロウは、


 回収したスターライトのボックスを抱えながら、


 その光景を見上げる。


 「……やっぱり、


  何度見ても圧巻だな……」


 エミが、


 やさしく微笑みかける。


 「兄さん、さあ――


  フェリーに乗ってください」


 「私たちで、


  運んでさしあげます」


 その掌が、


 ゆっくりとフェリーの甲板へと降ろされる。


 テツロウは、


 静かにその上へと降り立った。


 リオが、


 くすりと笑う。


 「今度もエミが運ぶ……?」


 すると、


 ミニが元気よく声を上げる。


 「私が、お兄ちゃん運ぶー!」


 そのまま勢いよく、


 フェリーへと手を伸ばしかける。


 「ミニちゃん、待ちなさい」


 リオが、


 やさしく制止する。


 「まだ、お兄様が甲板にいるのよ」


 「……やっぱり、エミにお願いしましょうか」


 そう言って、


 視線をエミへと向けた。


 エミは、


 静かに頷く。


 テツロウが特別個室へ入るのを見届けて――


 そっと、


 フェリーを持ち上げた。


 「……さあ、兄さん。


  帰りましょう」


 そのまま、


 ゆっくりと海へと入っていく。


 リオも、


 ミニも、


 そしてエアリも――


 並ぶように海へ入り、


 テツロウを見守りながら進んでいく。


 特別個室の中。


 テツロウは、


 展望窓から外を見ていた。


 広がる海。


 その中を進む、


 巨大な彼女たち。


 その光景は、


 現実とは思えないほど、


 穏やかで、


 静かだった。


 やがて――


 心地よい揺れに包まれながら、


 テツロウの意識は、


 ゆっくりと遠のいていく。


 (……少しだけ、寝るか……)


 そのまま、


 深い眠りへと落ちていった。


 ――――


 「兄さん」


 やさしい声。


 テツロウは、


 ゆっくりと目を開ける。


 視界に映ったのは――


 すぐ目の前にある、


 笑顔。


 等身大のエミだった。


 テツロウは、


 彼女の膝の上に頭を預けていた。


 「……もうすぐで、


  天の川市に着きますよ」


 やわらかな声。


 テツロウは、


 ぼんやりと周囲を見渡す。


 「……夢を見てたのか……?」


 ふと、


 思い出したように口にする。


 「……あ。スターライトは?」


 そのとき。


 「大丈夫ですよ、テツロウさん」


 エアリが、


 そっと部屋に入ってくる。


 「今回も、ちゃんと回収できています」


 安心させるような、


 落ち着いた声。


 リオも、


 静かに微笑みながら続ける。


 「お兄様、お疲れ様でした」


 ミニも、


 元気よく顔を出す。


 「お兄ちゃん、ミニも疲れたー!」


 「おんぶしてー!」


 エミが、


 少し困ったように笑う。


 「もう、ミニちゃんったら」


 「兄さんが一番疲れているのですよ」


 穏やかな空気。


 そのとき――


 アナウンスが流れる。


 「本船は、まもなく天の川港へ接岸します……」


 その声が、


 静かに響いた。


 ――――


 やがて、


 カメラはゆっくりと引いていく。


 天の川の港へと入る、


 フェリー。


 その姿を映しながら――


 さらに外側へ。


 そこには、


 巨大な三姉妹と、


 エアリの姿。


 水着姿のまま、


 静かに見守っていた。


 やわらかな光の中。


 声が、重なる。


 「兄さん、お疲れ様……」


 「お兄ちゃん、おつかれー!」


 「お兄様、お疲れさまでした」


 「テツロウさん、お疲れ様でした」


 その声は、


 どこまでもやさしく、


 穏やかに響いていた。


 光の中へ――



第二章 完 第三章へ続く

第二章 第七話、最後までお読みいただきありがとうございます。


本章の特徴であるスケール感について、

参考としてスケール比較図を掲載しています。

イメージ補助としてご覧ください。

挿絵(By みてみん)

(テツロウは彼女たちの足元にいます。足の指サイズです)


第二章より登場した人物の由来

赤井 エアリ:牡羊座/Aries より


次回から第三章

引き続きよろしくお願いいたします。

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