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魔核戦機アストレイア  作者: 秋紅葉リュウ
第一章 始動

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第7話 混乱と遭遇

「そんな......コロニーの外壁が......」




 俺に続いてその光景を見たヒナタが絶句する。そうなるのも仕方ない先程まで平和な日常だったコロニーの中にクリーチャーが続々と入ってきているんだ。俺だってこの状況をうまく呑み込めていない。だが、俺はそれに加えてひとつ気になることがある。




(あの頭が割れるような痛みが来るほどの激しいノイズ音――まるで、クリーチャーたちがコロニーに入ってくるのを予知していかのようだった......もしそうだとしたら、俺は一体......)


「――ュウ、シュウ!ねえ、聞こえてるのシュウ!」




 俺があのノイズ音に関して考えていると、ヒナタが俺に対して呼びかけているのが聞こえた。




「ヒ、ヒナタ......」


「何ボーっとしてるのシュウ!早く避難所に逃げないと!」


「あ、ああ......」




 あのノイズ音について気になることは多くあるが、今はヒナタの言う通り避難所に行くのが先決だ。俺は頭痛を抱えつつも、ヒナタと共にここから近い位置にある地下避難所へ向かう。




「それにしても、どうしてコロニーの外壁が崩れちゃったの......?あれって何重にも厚く作られてたよね......?」




 駆け足で避難所へと向かう足を運びながら、ヒナタがそんな疑問を投げかけてくる。




「分からない――でも、もしかしたら、そんな外壁を壊しちまうような化け物じみたクリーチャーがここに来たのかもしれない……」


「そ、そんなのが来てるのなら、もうここは――」




――ドゴォォォォォォォォッ!!




「きゃあ!!?」


「な、なんだ!?」




 崩落したコロニーの外壁から再び轟音が鳴り響く。俺たちの近くで一緒に避難していた人々も思わず足を止め、その方向を見る。


 その直後、怪獣映画に出てくる怪獣と似た、耳を劈くような激しい咆哮が聞こえた。その音量の暴力に俺たちは思わず耳を塞ぐ。




『うおおおおおっ!?』


『ひえええええっ!?』


『耳が、耳が痛い......!』




 大気が強く震えているのを肌に感じながら、俺は崩落した外壁の方向を見る。そして、俺はそこに現れた存在に言葉を失い、一緒に見ていたヒナタは顔を青ざめる。




「なに......あれ......」




 そこには巨大なクリーチャーが立っていた。そして、その姿は小さいころに読んでもらった絵本に出てくるような怪物とそっくりだった。それを見た俺は、思わず言葉をこぼす。




「ド、ドラゴン......?」




 直後、そのクリーチャーは翼をはためかせ、その巨体を空中へ浮かせる。そして、そのまま近くにいた別のクリーチャーへと向けて急降下し、それに食らいつく。そして、獲物を咥えたその口が咀嚼を行い、夥しいほどの血が流れ落ちる。




『く、喰ってるやがる......!』


『もしかして......私たちもあんな風に......?』


『い、嫌だ!俺は喰われて死ぬなんて御免だ!』


『私も嫌よ!』


『逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


『うわぁぁぁぁぁぁ!死にたくないぃぃぃぃぃぃ!!』




 コロニーに侵入してきたクリーチャーが後から現れた上位存在のクリーチャーに捕食される。そんな光景を目撃した人々は恐怖に支配され、生存本能のままに逃げ出す。


 生存することだけを考えた人々は、周囲のことなど気に掛けることなく、その足を走らせる。我先に生き延びようと目の前の者を押しのけ、他人の足を踏もうが、転倒した者がいようが、子供が泣き叫ぼうが、人々はその足を止めることはなかった。




「邪魔だ、どけっ!!」


「あうっ!」


「ヒナタ!」




 逃げ惑う人々は中の一人にヒナタが突き飛ばされ、俺はとっさにヒナタの身体を支える。しかし、突き飛ばされた拍子にヒナタが手に持っていた父さんの誕生日プレゼントの猫のマグカップが入った紙袋が吹き飛び、地面に落ちたそれは誰かの足に蹴飛ばされ、雑踏の中へ消えていく。




「大丈夫か?」


「うん、......ありがとうシュウ......」


「良かった。じゃあ俺たちも逃げるぞ。走れるか?」


「大丈夫。でも、おじさんの誕生日プレゼントが......」


「今は生き延びるのが先だ!俺たちがここで死んだら、父さんたちが悲しむ......!」


「うん......」




 俺はヒナタを立ち上がらせた後、再び目的の避難所へ向けて足を走らせる。その後も俺たちは無我夢中で走り続け、もうどれだけ走っていたのか分からなくなっていた。


 恐怖を感じながら逃げ続けていたためか、俺の横で走っていたヒナタもかなり疲弊している。そんな時、急に前方を走っていた人々が足を一斉に止め始めた。




『う、うわあああああああ!!』


『な、なんでクリーチャーがこんなところまでっ!?』




 その声を聞いた俺は奥の方を見て、十字路の正面前方からクリーチャーたちが走ってきている光景を目の当たりにした。


 このままでは間違いなくクリーチャーたちと衝突する。命の危険を間近に感じた人々は考える暇もなく慌てて左右の道に逃走する。俺たちも十字路の中央に差し掛かり、避難所が近い右の道に逃げようと走ろうとしたそんな時だった。




――ゴォォォォォォォォォ......




 上空から何かが聞こえた俺はとっさに上を見上げる。そこには目の前の獲物を喰らわんと急降下しているあのドラゴンのようなクリーチャーが見えた。




「まずい!ヒナタ、急いで逃げろ!!」


「えっ......?」




 直後、凄まじい地響きと衝撃が俺たちを吹き飛ばす。あのクリーチャーは道路のアスファルトを砕き、周囲の建造物をなぎ倒してながら獲物へと食らいついていった。




「ぐっ......うぅ......」




 先程の大破壊で吹き飛ばされた俺はその身を起こし、閉じた目をゆっくりと開く。




「なんとか生き延び――!!?」




 視界が開けた後、俺は壮絶な光景を目にした。十字路は瓦礫によって完全に分断され、反対側の道へ行くことができなくなっていた。そして、俺の周りには――




「う、うわあああああああ!!こ、これ、死んで......!?」




――瓦礫に押し潰され、血だまりを広げている者。首や手足が有り得ない方向へ曲がった者。


そんな死体の数々が、俺の周囲に転がっていた。


 俺は、目の前の地獄のような光景とそこから漂う強い血の臭いに今までに感じたこともない強い吐き気を催す。俺は止まらない吐き気のあまり、喉が焼けそうな感覚を覚える。




「げほっ、げほっげほっ......!」




 喉が焼けるような感覚と共に口の中が不快な酸味で支配され、俺は強く咳き込んだ。咳で焼けたような感覚を感じる喉を刺激し、さらに痛みを伴う。


 そんな時、聞きなれた声が瓦礫の向こうから聞こえた。




「シュウ、大丈夫!?生きてるなら返事をして!!」


「ヒ、ヒナタ......!」




 ヒナタの声だった。どうやら瓦礫の向こう側で生きていたようだ。俺の安否が確認できたことに安堵したのか、瓦礫の向こうで「良かった......」と言っているのが聞こえる。




「本当に無事で良かったよ......」


「そっちもな......でも、完全に分断されちまったな......」


「みたいだね......」




とりあえず、ヒナタの生存が分かっただけでも良かったが、瓦礫が邪魔して合流することができなくなってしまった。俺はヒナタへ言葉を投げかける。




「ヒナタ、とりあえず後で避難所で合流しよう。今はこの瓦礫の山で分断されて一緒に行動できないだろうから」


「......うん、分かった。シュウも気を付けてね」




 瓦礫の向こうで俺の提案を受け入れたヒナタの足音が遠ざかっていくのが聞こえる。それを聞き届けた俺は、自分が進む道の方向へ身体を向ける。




(この先は確かIDO軍の基地だったな......少し遠回りになるが、仕方がない......)




 俺はヒナタが無事に避難所に辿り着けることを信じて、避難所へ向けて走る。


 そのまま道なりに進んでいくと、基地のある方向から多数の人影が見えた。しかし、それは人間とは言えないほどに大きく、その身体は鋼鉄で構築されていた。




「COA......!やっと軍が動き出したのか......!」




 基地から出撃したであろうCOAは、そのままコロニー各地へと駆け抜けていき、コロニー内に侵入したクリーチャーたちの駆除を始める。俺は軍が動き出してくれたことに安心し、走るペースをあげる。COAがクリーチャーたちと戦う姿を横目に、俺は基地の近くへとたどり着く寸前に差し掛かる。




――ザザッ......!




 「ぐっ...!」




 その時、軽くノイズ音が聞こえ、足が少し止まる。その次の瞬間、クリーチャーたちが急に横から飛び出してきた。それと同時にドラゴンの姿をしたクリーチャーが上空で狙いを澄ましている様子が見えた。




(まずい......!)




 俺は頭痛をするのを気にかけず、そのまま勢いよく走りだす。しかし、その後すぐに奴が急降下を開始する。




――ドゴォォォォォォォォ!!




「ぬ、うぅぅぅぅぅ......!」




 奴が近くで着地した衝撃で吹き飛ばされそうになるが、近くの街灯にしがみついたことで、何とか事なきを得た。衝撃が収まった後、俺はドラゴンの姿をしたクリーチャーの方を見る。その口には何も咥えられていなかった。どうやら捕食に失敗したようだった。


 俺は急いで奴の近くから離れるために走り出す。しかし、その時に奴と俺の目が合ってしまった。奴はしばらく俺を見た後、まるで獲物を見つけたように俺を襲いだした。




「うおっ!?ちょっ、何だよ急に!?」




 突然襲われた俺は、何とか攻撃を間一髪で回避し、そのまま逃走を図る。しかし、奴はしつこく俺を追いかけまわし、そうして逃げているうちに、俺はいつの間にか基地の敷地内の運動場のような開けた場所に入り込んでいた。


 基地の敷地内にクリーチャーが侵入したことに気づいたCOAの何体かが、応戦しようと立ちはだかるが、奴はそれをものともしないように尻尾でまとめてスクラップにする。




「マジかよ!?COAでも歯が立たないってのか!?」




 邪魔者を排除したクリーチャーは再び俺を追いかける。しかし、そんな時だった。




――ウィィィィィィィィン........




「なっ!?おわぁっ!!?」




 俺の足元の地面が急に開き始め、俺はそこへ落下してしまった。その直後、俺はシートのような何かに激突した。




「あだっ!くぅ......なんだよ、さっきからツイてないぞ......一体どこに落っこちたんだ俺は......」




 俺が状況を確認しようと、起き上がろうとしたとき、何かスイッチのようなものを押したような感触がした。その瞬間、何かが閉じる音と共に、俺の周りで機械のようなものが光る。




「な、なんだ......なんだこれ......!?」




 俺が訳も分からず慌てふためいていると、俺の目の前のモニターが文字を映し出す。




【Power ON Operating System activate COA System All Green】




「........おい、まさかこれって........」




 俺はモニターに表示されたひとつの単語を見て、自分が何に"乗り込んでいる"のかを理解した。




【Model number : TK-DL-00-P Name : ASTREIA】




「俺、COAに乗ってるのか........!?」




 クリーチャーに対抗するための武力として開発された人型機動兵器【COA】。それに今、俺は乗っている。

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