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魔核戦機アストレイア ー紡がれし戦場の絆と終末に抗う者たちー  作者: 秋紅葉リュウ
第一章 始動

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第2話 平和と日常の崩壊

放課後、ヒナタ合流した俺は、父さんの誕生日プレゼントを買うために近所の大型ショッピングセンター「NEONネオン」に来ていた。平日とはいえ、この時間帯は放課後の学生で賑わっていて、俺たちと同じくらいの年齢の連中があちこちにいる。


 人の波を縫いながら、俺とヒナタは父さんへのプレゼントについて話し合った。




「ねえシュウ、おじさんの何か好きなものって何か知ってる?」


「父さんの好きなものか。そうだなぁ......」




 ヒナタに聞かれ、俺は父さんが普段好んでいるものを思い返す。しばらく考えた末に、一つだけ思い当たるものがあった。




「そういえば、父さんって家ではよくコーヒーを飲んでたな。ヒナタ、ちょっと高いコーヒーをプレゼントするのはどうだ?」


「うーん、それだと無くなったら終わりになっちゃうじゃない?どうせならずっと手元に残るものがいいと思うよ?」




 我ながら悪くない案だと思ったのだが、あっさり却下されてしまった。


 とはいえ、確かにヒナタの言う通り、ただ高いコーヒーをプレゼントしても無くなればそれで終わりだし、ずっと使い続けられるものがいいかもしれない。そうなると、プレゼントは日用品から選ぶことになるな。




(日用品でずっと使い続けられるものかぁ......)




 俺はプレゼントに適していて、長く使い続けられる日用品について考えながらヒナタとショッピングセンター内を歩き回る。そうして、しばらく散策しているうちに俺の視界に見慣れない雑貨屋が目に入る。




「あれ、ここに雑貨屋なんてあったか?」


「ああ、ここの雑貨屋さんね、最近オープンしたばかりなんだ」


「なるほどな、通りで見慣れないわけだ」


「ねえシュウ、ここでおじさんのプレゼントを探してみる?」


「そうだな、せっかくだし、ここで探してみるか」




 俺はヒナタの誘いに乗り、父さんの誕生日プレゼントをこの雑貨屋で探すことにした。


 店に入ってみると、そこには多種多様な雑貨がずらりと並んでおり、そこに店のおしゃれな雰囲気が相まって、まるで別世界に足を踏み入れたように思えた。


 俺たちは店の雰囲気を楽しみつつも、父さんにプレゼントできそうな日用品を探して回る。そんな時、あるものがヒナタの目に止まった。




「シュウ、これなんかいいんじゃない?」




 ヒナタは見つけたそれを棚からそっと手に取り、俺に見せてきた。




「マグカップ?」




 ヒナタが差し出してきたそれは、白磁の器に可愛らしい猫のイラストがプリントされたマグカップだった。




「うん。おじさん、コーヒー好きなんでしょ?だったら、こういうのどうかなって」


「ああ、それは分かるんだが、何故に猫?」


「そんなの、可愛いからに決まってるじゃん?あと、こういうのを渡したらプレゼントの印象も深くなりそうだと思わない?」




 俺は「ヒナタらしいな」と思いながら、そのマグカップを手に取り、父さんがキッチンでこのマグカップを使ってコーヒーを飲んでいる姿を思い浮かべる。




――父さんにはちょっと似合わないかと思ったが、不思議と様になっている。


 


「案外、面白くていいかもな」


「じゃあ、これで決まりでいいかな?」


「ああ、そうしよう」




 俺たちは二人で選んだプレゼントを持ってレジへ向かい、会計を済ませる。


 そして、プレゼントはヒナタの提案でサプライズで渡すことになった。




「絶対その方がいいって!」




 そう言い切るヒナタに押し切られる形で、俺たちは父さんが帰ってくる前に間に合うよう、少し足早に帰路に就いた。


 家に帰りながら談笑していると、隣を歩くヒナタがふと思い出したように口を開く。




「そういえばさ、おじさんって最近夜遅くまで仕事に行ってることが増えたよね」


「ああ、確かに最近は忙しそうにしてたな」


「おじさんの仕事って確かリハビリテーション科医だよね?それで深夜に近い時間帯まで働くことってあるのかな?」


「どうだろうな、俺にも全く分からない」




 正直、医者の父さんが夜遅くまで仕事をしていることにはあまり違和感はない。だが、俺が小学生になったあたりから、その頻度が多くなった気がする。


 俺は一度だけ、父さんに何故そんな遅い時間まで働いているのか聞いたことがある。でも......




――ちょっと患者さんへの対応が忙しくてな、心配かけてごめんな......




 その時に俺に向けてくれた父さんの顔はやつれたような、とても疲れ切った顔をしていた。


 母さんを亡くしても、一度も音を挙げずに一人で俺を育て上げ、辛そうな顔一つも見せなかった父さんが。




(医者の仕事をしているだけで、普通あんな顔になるものなのか?)




 俺は、あの時の父さんの顔を今でも忘れていない。


 父さんは本当に医者の仕事をしているだけなのか?


 本当は父さんをあまり疑いたくはない。だけど、ただ医者として働いているだけならあんな遅くまで仕事をするとは思えない。




「父さんは今頃、何をしてるんだろうな......」




 そんなことを呟いたときだった。




――ザザ…ザザザ…ザー……




「うぐっ......!?」


「シュウ、もしかして......」


「ああ......」




 ノイズ音が再び俺を襲う。1日に連続で聞こえるのはこれが初めてだった。


 俺は何か不吉な予感がするのを感じた。そして、それを肯定するかのように......




――ザザッ ザァァァァァッ ザザザザザザザッ キィィィィィン......




「あぐっ!?ぐぅっ、がああああああっ!?」


「シュウ!?」




 ノイズ音は急にその勢いを増し、頭が割れそうな激痛が俺を苦しめた。俺は激痛のあまり、頭を抱えてその場に倒れこむ。




「頭が、頭がぁ......!あがあああああああっ!」


「シュウっ!シュウ、しっかりしてっ!シュウっ!」




 激痛に苦しむ俺にヒナタが駆け寄る。




――ズガゴォォォォォォォン!!!




 その時、どこかで轟音が鳴り響いた。




『きゃああああああああ!?』


『お、おい!なんださっきの音は!?』


『うぇぇぇぇぇぇん、おかぁぁさぁぁぁん!』




 突然の轟音に街中はみるみるとパニック状態に陥っていく。


 そして、その不安を煽るかのようにけたたましいサイレンが街全体に鳴り響き、焦りを含んだ女性の声が放送される。




『緊急避難命令!緊急避難命令!東京コロニー内に多数のクリーチャーの侵入を確認しました!住人の皆さんはただちに避難してください!!


繰り返します!東京コロニー内に多数のクリーチャー侵入を確認しました!住人の皆さんはただちに避難してください!!』




(ク、クリーチャーだって!?)


「シュ、シュウ......?」




 まだ痛む頭を押さえながら立ち上がった俺は、轟音が鳴った方角を見る。


 視線の先には、東京コロニーの外壁の一部が破壊され、そこからクリーチャーたちが次々とコロニー内部へ侵入していく光景が映っている。


 地獄のようなのその光景は平和と日常の崩壊を物語っていた。

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