ガチの対人パスよろしくお願いしまーす!(みずほ台視点)
――午前7時頃。
「やだ〜〜。こんな状態でヤスと会いたくない〜〜」
「全盛期の体型なのに何言ってんすか! 朝練テンション上がるでしょ!」
泣き言をこぼす鶴ヶ島と、その背中を押して歩くのは俺、みずほ台。
先程、毛呂山さんから鶴瀬さんの居場所を聞いて、体育館に向かっていた。
「外見は痩せて見えても、心の脂肪はついたままだよ〜」
「じゃあ今からシェイプアップっすね! はい、1名様ごあんな〜い!」
ガラガラ――
アリーナの入口前までたどりつき、間髪入れずに扉を開いて大きな声を上げた。
「おはようございまーす!」
ヤスを警戒して大きな声を出してみたが、見回すとそれらしい姿は見当たらない。
アリーナに響くのはボールが弾む音、シューズのグリップ音、レシーブを上げる音、それから……
バチーンッ――
とてもキレイなミート音。
(あれ? スパイク練習でもしてるのかな……?)
音のする方向を見つめると、半袖短パンの鶴瀬さんと、なぜか清瀬さんがいた。
(珍しい組み合わせ。清瀬さん朝練なんかしない人だったよな?)
不思議に感じながら2人が練習しているコートの方に歩き出す。
かなり集中しているのか、俺たちが来たことにまだ気づいてないようだ。
「おはようございまーす!」
近づいてもう一度挨拶してみると、ようやくこちらに顔を向ける清瀬さんと鶴瀬さん。
「あれ、おはよ? どうした?」
清瀬がキョトンとした表情で言う。
「清瀬さんおはようございます! ちょっと鶴瀬さ……、先輩に大事な話がありまして」
高校時代の鶴瀬さんは、敬称を間違えると注意してくることを思い出して、言い直してみた。
恐る恐る彼の方を見ると、俺の言い直しには気づいてなさそうだ。
彼の全身からは白い湯気が上がっているのが目視できる。息も上がっているようなので、たぶんそれどころじゃないのかもしれない。
(セーフ)
「あれ、ヤスと練習してたんじゃないの?」
背後にいた鶴ヶ島さんが、俺も疑問に感じていた事を聞いてくれる。
「ハァ…、いや、ヤスは居ない……、来ないみたい。……どうかした?」
乱れた呼吸を整えながら、質問に答える鶴瀬さん。
(高校生なのか、30歳なのか。どうやって見極めるきっかけを作れば良いだろう? 探るの苦手なんだよな……)
そう考えていると、鶴ヶ島さんが俺の肩に手を置く。
「みずほ台は練習してきて良いよ、俺が鶴瀬と喋るから」
そう言って、鶴瀬さんと肩を組みコソコソ喋り出した。
始めは不思議そうな表情をしていた鶴瀬さんだが、少しすると表情が変わったような感じがした。
(まあ良いや。俺はいつまで続くか分からないけど、高校バレー2周目楽しも)
頭を切り替えて、急いで練習の準備を始める。
「清瀬さ、先輩! ガチの対人パスよろしくお願いしまーす!」
転がってるボールを拾って清瀬に向かって駆け出した。
心なしか清瀬は嫌そうな表情をしているように見えるが、彼とのパスが自分のレベルを図るために最良な気がする。だから
「本気で頼みますよ!」
この身体がどれほど動けて、いままでで蓄積したバレー感をどこまで活かせるかがとても楽しみで、ワクワクしていた。
朝練ラスト〜〜(グダった)
笠幡様はとうぶん戻ってきませんでした。




