第52話 Cランク認定戦セミファイナル
遊都と大男が楽しそうに話している。地球人同士か。積もる話でもあるのだろう。ここでは残念なことによく聞こえない。3位で敗退しなければよかった。
「もっと話したかったな」
珍しく独り言をこぼした私自身に驚き、周囲を見渡す。いつものように誰も私を見ていない。
元々私は王都から遠い北の山岳地帯の狩猟民族で、弓を背負って男達の狩りについて行っていた、気配を殺すのには慣れていた。女なのについてくる私は疎まれていた。いや村で男に生まれなかった時点で私は疎まれていたのだろう。村で女はいないものと扱われているようだった。そんな村が嫌で、王都に向かう行商人にこっそり気配を消してついて行った。王都を目指しているうちにいつの間にかスキルというものを手に入れた。私が水属性ということが分かり、氷の武器があれば狩猟から保存まで完璧だと思った。でも、私は戻ろうとは思わなかった。
王都は人で溢れていた。お祭りかと思ったらこれが普通と言われた。しかもここはまだ宿場町で王都どころか市ですらないらしい。ここでも誰も私を見てくれない。行き交う人は目的があり、脇目も振らず歩いている。気配を殺すのは慣れている。だからそういうスキルを手に入れていた。いつしかテキサスホールデムで荒稼ぎをして村での1ヶ月の収入があっさり手に入り、二つ名がついていた。好奇の眼で見られるのが嫌で私はますます気配を殺すようになった。
「ちゃんと私を見てくれるのは、お前らぐらいだな」
猫に餌をあげていると、裸の男があらわれた。なに、私も村では男の裸など見慣れている。都会でもそうなのだなと思うと笑いがこみ上げてきた。とりあえず凍らせてしまったが大丈夫だろう。
しばらくしてその男はテキサスホールデムのハイレートの場にいた。気配を殺しているはずの私を見ている気がして手を振った。手を振り返した。ありえない。
またある時目が合った。真っ直ぐに。
そして思い切って声をかけてみた。それだけで満足してしまったが、名前を知ることが出来なかった私は後悔した。
そして今日同じ卓になった私は嬉しい気持ちを隠して名前を見た。
【伏見遊都】
伏せっているものを見る。なんて遊都にぴったりなのだろうか。今日のテキサスホールデムでは名前を呼ぼうと思った。遊都だけはこの世界から消えかかった私を見てくれている。この人なら例え大雪原にいる私でも見つけてくれるに違いない。
そしてステラと呼ばれて私はこの上なく幸せになっていた。




