第31話 プレイングスタイル
「出来たっ! 私のスターティング表」
ほくほく顔で巴が表を広げて見せる。
「それを体感で覚えていけばばっちりだな」
「覚えるの苦手なんだけど」
「やってりゃ覚えるさ……それに理屈よりも大切な何かを重視しなければならない時もある。勘とか空気とかな」
「ふーん」
「4人制のとこで作ったのもあるけど、スターティング表を見る限り巴はルーズアグレッシブかな。9人制のとこだと感覚違うからそんときはまた調整な」
「ねえねえそのルーズアグレッシブってのはなんなの?」
「まず、テキサスホールデムは二つのタイプに分けられるんだ、タイトかルーズかだ。意味はタイトがハンドを絞っている、ルーズが参加するハンドの範囲がゆるいってことだ」
「なるほど、私待ってられないものね。いらいらするもの」
「よく、あのときロックできたな」
「頑張りました」
「次にもう一つの組み合わせアグレッシブかパッシブ。違いは積極的にチップを積み上げていく。ベットやレイズを仕掛けていくか、仕掛けられるのを待つかの違いだな、仕掛ける方をアグレッシブ、受け身の方をパッシブという。さっきのタイト、ルーズと組み合わせて基本4パターンに分けられる」
指を4つ折って数えて見せる。
「タイトリーアグレッシブ、ルーズアグレッシブ、タイトリーパッシブ、ルーズパッシブ」
アンダーツリーのヨーヴン戦を思い出す。
「タイトリーアグレッシブ。俺とアレクがそうだったな。ハンドがいい時だけ参加して積極的にレイズしていく。俺よりアレクの方がチップの賭け方が大きくよりアグレッシブだったな。この型は基本にして、単純に強い。強い時に勝負するんだ当然だな」
巴がアレクの名前を出したとたん嫌そうな顔をする。
「次ルーズアグレッシブ。巴がこれだな。比較的色んなハンドで参加してチップを奪い取っていく。なんで参加しているか分からないやつってテーブルイメージを築いていると上手くいくことが多い。あとはヨーヴン戦ではフランカがこれだったな。ただ、フランカは元々ルーズアグレッシブという訳ではなく、いいハンドが来なくて仕方なくハンドレンジを広げてルーズアグレッシブで戦っていたという感じだったが」
「フランカ……フランカねえ?」
印象に残ってないようだ、哀れフランカ。
「ここからパッシブ。タイトリーパッシブなんだが、弱い。ほぼほぼ弱い。せっかく厳選したハンドで参加しているのにポッドを膨らませない。チップを大量にかき集められない。割にあわないんだ。だからほっといても死ぬ。これはスイがそうだった……勇猛たる闘志の炎がかかる前まではな。それか、強かったかもしれない。スイなら強い可能性もあるかタイトリーパッシブと見せかけてレイズを誘い、再びレイズするってこともあり得る。あり得るが、あまり成功率もメリットもない。リレイズするってことはブラフか罠を張っていますと宣言するようなものだからな。まあ置いといて次だな」
「さっきのラウンズ戦で強いハンドでコールしてたようなものね」
「最後にルーズパッシブ。これは最悪だ。色んなハンドで参加してコールし続ける。最悪だけど相手がそうなら最高だ。なんたって絶品のカモであり、初心者だ。イリアがあの場ではそうだった。ひたすらチップを吐き出し続けてくれただろう。このスタイルが優勝に絡むことはまずない。まあ自信がない時はチップを膨らませないのも立派な戦術ではあるが」
「タイトリーアグレッシブ、……ルーズアグレッシブ、タイトリーパッシブ、ルーズパッシブ」
指を4つ折って巴が数える。
「最終的にはルーズパッシブ以外の型を身につけ、状況に応じて使い分ける。序盤とリスクをとるならバブル前、バブル直後はタイトリーアグレッシブが重要だな。ああ、バブルってのは入賞が決まる前の特殊な状況のことを言うんだ。あとルーズが有効なのは周りがタイトリーアグレッシブばかりになってきた時と、たくさんチップを持っている時だな。ルーズアグレッシブが有効かルーズパッシブが有効かは相手によるところが大きい」
「ロックは?」
「ロックは極端なタイトリーアグレッシブだ……成功することはほとんどない。あれは一夜の夢だったと思え。ただ、タイトリーアグレッシブには滅法強い。なんせ、厳選も厳選。プレミアムハンドでしか参加しないからな。ロックをもし相手にすることがあれば対処は簡単だ。フォールドしてしまえばいい。ほっといてもブラインドで死ぬ」
「うわ……たしかにアレクが参加して来なかったらそのまま死んでたかも」
「ロックの正反対にあらゆるハンドで参加してレイズでふっかけるマニアックというものもあるんだが……あれは俺は嫌いだ。意味が分からん」
「ガーネットはちなみに敢えてレッテル張るならABCポーカーというお手本どおりという言い方になるだろう。テキサスホールデムにはスタイルについて色々言い方や分類があるが最初にあげた基本の4つ押さえていればいいだろう」
「ねえ、モンドはどこになるの? 弱くてやる気なさそうなのに狙わなかったから疑問だったのよね」
「それは、よく分からない。……よく分からないプレイヤーは怖いぞ何がめくられるか本当に読めないんだ。そういうやつは相手にしないに限る。モンド、それとグレイソンだな」
「だからモンド狙わなかったのね」
そうだ……それにグレイソン。やたらリバーでの巻き返しが多かったが……まさかそんなオカルトな。
「どうしたの遊都?」
「いやなんでもない」
「それより、ゲームに戻ろうか。そろそろ勝率も上がってくる頃だろう。俺も参加しよう」




