疑惑の時間
バトラーを倒したタクスス達4人。
気絶した彼を肩で担いだテッセンは、地面にへたり込むタクスス達へ起き上がるように促す。
「大丈夫か? 早くここを出るぞ……増援が来ると面倒だ」
「了解なんだよぉ!! タクスス、肩貸すよぉ」
「……すみません、お願いします」
「任せるんだよぉ……ぐぅ……? 案外、重い……シャガ、ちょっと手伝うんだよぉ」
「……ちっ!! うん分かったよ」
「ねえ、今の舌打ちってどういう意味なんだよぉ?」
アムネシアの肩に寄りかかり、シャガに腰を支えられるタクスス。
先ほどバトラーに手当てを受けたとは言え、重症の彼女は歩くのもやっとである。
外へと続く扉を開け、薄暗い通路へと移動する彼女達。
先ほどまでは静寂に満ちていた目の前の通路。
今は打って変わって、がなり立てる大勢の人間で埋め尽くされていた。
「……!? バトラーさん!? 何だお前ら、そこで何してやがる!!」
「ふざけんなよ!! こっちはアイツの相手で忙しいのに……!! バトラーさんを離せ!!」
「うげぇ!? 何なんだよぉこれ!? 凄い数なんだよぉ!!」
「ゴキブリみたいにうじゃうじゃ湧き出て来やがって……『燻れ」!! 行くぞ3人とも!!」
咄嗟に目くらましの言葉を発するテッセン。
今の消耗しきった状態で、大勢を相手にするのは危険だと判断したのだろう。
通路を白煙で満たし尽くすと、強行突破を図ろうとする。
だが……その策は突如発生した突風によって妨げられてしまう。
「……まさかこの風って」
「んだお前ら!! 逃げんじゃねぇぞ!! 『裂け……』」
「伏せろテッセン!! 『飄れ』ッ!!」
名指しされたテッセン。
何処からともなく聞こえてきた、不機嫌そうなこの声の主に心当たりがある彼は、後ろに付いて来るタクスス達に覆い被さりながら身を屈める。
間髪入れず、近くの壁が粉々に砕け白煙が吹き飛ばされていく。
狂風に蹂躙されるコロシアムの関係者達。
巻き上がる粉塵の中から現れた彼女は、黒紫の長髪を風にたなびかせている。
「来てたんですね、アヤメ少将。ってか壁を壊しながらって……」
「道が入り組んでいたから仕方があるまい。……その伸びている男がバトラーで間違いないな?」
「ええ」
「そうか。よくやったテッセン!! では早く地上へ戻るぞ。ここの空気は終わっているからな」
踵を返す彼女の後を追うタクスス達。
瓦礫と人の山を避けながら、プロテア達が待つ地上へと戻るのであった。
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無事に地下闘技場から脱出したタクスス達。
辺りに夜の冷たい空気が立ち込める中、コチラに気が付いたローズが手を広げて出迎えた。
「これはこれはタクスス、ご無事……ではないですねぇ」
「……そっちは無事なようで良かったですよ」
「どうもどうも。……ちょっと耳を貸していただけません? シャガとアムネシアも」
「……?」
小声で話すローズ。
周囲の軍人達に聞こえないように、タクススとシャガ、ローズに耳打ちする。
一方プロテア達も罪人を車の中へ収容すると、何やら打ち合わせのようなことを始め出した。
「お疲れ~テッセンちゃん。早速だけどさ、回答のすり合わせをしようか」
「分かりました」
「あの!! やっぱりまだローズさんを疑っているんですか!?」
「しっ!! 静かにカタバミちゃん。疑いが晴れるかどうかはこれからだよ、これから」
情報の共有を始める彼ら。
その内容は、タクスス達とプロテア達、両者とも同じ内容であった。
質問の回答について一個一個確認するローズ。
最後の質問の答えを聞いた彼女は、頭を悩ませることになってしまった。
「最後の質問には、『母親の話を聞いて可哀そうだ』と答えた」
「……ええ」
「どんな母親かと言われたが、『よく覚えていない』と答えた……間違いないですね?」
「……ええ。あの、これってやらかしちゃいました?」
「いえいえ、やらかしたのは私ですよ。あの髭め……私をハメましたね」
「お~い!! ローズちゃん!! ちょっといいか?」
「噂をすれば……シャガ、私が名前を呼んだら輝きの言葉をお願いしますね?」
「うん……」
「さてさて……玉砕覚悟で誤魔化しにいきますかねぇ」
懐から煙草を取り出し火を点ける彼女。
余裕の表情を見せることが多かったローズにしては、珍しく顔から表情が消えている。
「これはこれは何でしょう? 一服したいのですが」
「ま~ま~そう言うなって!! んでさ、何個か聞きたいんだけどいい?」
「はいはい」
「さっきさ、俺が見せた写真あるじゃん? あの子供のやつね」
「はいはい」
「タクススちゃん達も可哀そうな子だなぁ~って言ってたんだとよ。子供の家庭環境を聞いてさ……ローズちゃんと大体同じ内容をね」
「はいはい」
「んでさ、ローズちゃんはその母親の特徴である赤い目について言ってたじゃん?」
「はいはい」
「タクススちゃん達は特徴を聞いても覚えていないと答えた……何で一緒に行動していたのに証言が食い違うんだろうなぁローズ?」




