魔法測定
順番的にはシステの方が先だ。どれくらいの実力なのか、正直楽しみだった。
システの顔つきは真剣そのもので、先ほど「緊張で震える」などと言っていた様子は微塵も感じられない。
試験官の「始め」の声が響くと、システは静かに詠唱を唱え始めた。水属性の詠唱は難しいと聞くので、少し心配になる。
だが、その心配は一瞬で消し飛んだ。
詠唱を終えたシステは、人形に向けてはっきりと言い放った。
「ウォーターボール」
その言葉を聞いた瞬間、「詠唱してまで普通のウォーターボールを……?」と思ったが、すぐに理解した。
彼が放ったのは、直径わずか3センチほどの小さなウォーターボールが無数に飛び交う応用技だった。無数の水弾が人形を襲い、表面に小さな穴をいくつも穿ち、ほとんどが貫通している。
「すっげ……」
思わず声が漏れた。
システは満足げな表情を浮かべて下がっていく。去り際に、俺の方を振り返って声をかけてきた。
「エメリの風魔法が見れないのは残念だけど、控え室で待ってるから。やりきれよ」
「任せろ」
俺は笑顔でそう返した。
そして、すぐに俺の名前がコールされる。
「はい!」
返事をして、所定の位置へしっかりとした足取りで向かう。
試験官が俺を見て、軽く声をかけてくれた。
「頑張れよ」
俺は小さく頷き、目を閉じて集中する。全身をめぐる魔力を、ゆっくりと両手に集めていく。
一番速く、攻撃力のあるカッターを——。
風を刃のように練り上げ、的の人形に向けて解き放つ。軌道は少し荒い。だが、ちゃんと命中した。人形の表面に、無数の細い傷が走る。
周りに比べれば地味な結果かもしれない。それでも、今の自分の全力を出し切った。悔いはない。
試験官にお辞儀をして、控え室へと下がる。
どんな評価を受けるかはわからない。それでも、一次試験を無事に終えられたことが、素直に嬉しかった。安堵の息を吐く。
控え室に戻ると、システがすぐに声をかけてきた。
「お疲れ様」
「ありがとう。システもお疲れ様」
「で、この後暇か?」
「明日に向けて、宿を探して休む予定だけど……」
「じゃあ、食事しに行かないか? この町、俺が案内してやるよ。初めてだろ?」
休みたい気持ちも正直あった。だが、この大きな王都の街並みには、以前から興味があった。
「……よろしく頼む」
俺は笑顔で答え、システと共に試験会場を後にした。




