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平民、魔法警察になる。  作者: 鼠の前歯
1章 憧れへの一歩
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平民の俺、目的地まで駆ける。

 あの人の事は一生忘れることはない。いつかあの人のような立派な警官になると誓ったのだから。


 目を覚ますと、窓のカーテンから日差しがこぼれて、微かに外から爽やかな風を感じる。今日はずっと待ってた大事な日だ。


 素晴らしい目覚めだと思いながら呑気に時計を見ると、寝坊していた。


「まずーい!!」


 今日のために今まで待ってたんだ。準備もしたんだ。こんなところで終われるわけがない。


 クローゼットから制服を取り出し、秒で着替えて、部屋の鏡で身なりを確認する。そして階段をドタドタと駆け降りた。


「母さーん!! 父ちゃーん!!」


 呼んでも返事がない。きっと農業に行ったのだろう。息子の大事な日に「いってらっしゃい」も言ってくれないなんて、いかにも俺の両親らしい。なんだか安心した。


 テーブルの上に置いてあったリンゴを手に取り、急いで家を出る。


 道中で知り合いのおばちゃんに会った。


「確か今日だったわね。これ、お守り持っていきなさい」


 急いでいたので軽く挨拶をして、貰ったお守りを握りしめる。そのまま目的地へ走り出した。


 数十分走ったところで、城壁が見えてきた。


「見えてきた……あれが王都か!!」


 近づくにつれて、城壁はどんどん大きくなっていく。王都の前まで来ると、見上げるほどの立派な城壁が目の前にそびえていた。初めて見る光景に、心が思わず躍る。


 でも、見とれている場合じゃない。急いで中へ入る。


 整備された広い道に、びっしりと住居や店が並び、人で溢れている。活気に満ちた光景に圧倒されながらも、足を止めずに進んだ。


 その途中、重い荷物を持って苦労しているおばあさんを見かけた。


 時間があまりない。通り過ぎようとしたのに、足が止まってしまった。


 田舎では、困っている人がいたら手伝うのが当たり前だ。その習慣が出てしまったらしい。


 おばあさんに近づき、自然と声をかけていた。


「荷物、運ぶの手伝いましょうか?」


「いいのかい……?」


 おばあさんは申し訳なさそうにしている。


「困った人がいたら手伝うのは当たり前ですよ」


 俺は笑顔でそう答えた。


「ありがとねぇ……」


 おばあさんは嬉しそうな顔をして、荷物を渡してくれた。見た目以上に重い。木の箱に入っていて中身は見えないが、かなりの重量だ。


「目的地はどこですか?」


 早く終わらせたくて、少し食い気味に聞く。


「郵便局です」


 郵便局の場所はだいたい分かるが、正確な位置までは知らない。おばあさんは雑な手書きの地図を見せてくれた。よく分からないが、時間がない。地図が指す方角へ向かうことにした。


「おばあちゃん、届けるから帰ってていいですよ!」


 そう言い残して走り出す。


 息が切れてきた。荷物が重すぎる。


 どうしようかと考えているうちに、魔法を使えばいいことに気づいた。本当は今は使いたくなかったが、仕方ない。


 荷物に手をかざし、魔法を唱える。


「フロート」


 荷物がふわりと浮いた。これで少しは楽になる。とはいえ、魔法の扱いがまだ未熟で、浮かせたものを自由に動かすのは難しい。結局、浮いた荷物を抱えながら走ることになった。


 いつか必ず極めてみせる——そう思いながら、なんとか郵便局を見つけ、魔法のポストに荷物を投げ入れた。


 そして間に合わせるために、身体強化魔法を発動する。一気に加速して、目的地へ爆走した。


「やっと、着いた……」


 会場の前に到着する。時間はギリギリ間に合った。ゼェゼェと乱れた呼吸を整えながら、深く息を吐く。


「よし、行くぞ」


 真剣な顔つきになり、堂々と歩き出した。王立魔法警察育成所——入学試験会場へ。

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