平民の俺、目的地まで駆ける。
あの人の事は一生忘れることはない。いつかあの人のような立派な警官になると誓ったのだから。
目を覚ますと、窓のカーテンから日差しがこぼれて、微かに外から爽やかな風を感じる。今日はずっと待ってた大事な日だ。
素晴らしい目覚めだと思いながら呑気に時計を見ると、寝坊していた。
「まずーい!!」
今日のために今まで待ってたんだ。準備もしたんだ。こんなところで終われるわけがない。
クローゼットから制服を取り出し、秒で着替えて、部屋の鏡で身なりを確認する。そして階段をドタドタと駆け降りた。
「母さーん!! 父ちゃーん!!」
呼んでも返事がない。きっと農業に行ったのだろう。息子の大事な日に「いってらっしゃい」も言ってくれないなんて、いかにも俺の両親らしい。なんだか安心した。
テーブルの上に置いてあったリンゴを手に取り、急いで家を出る。
道中で知り合いのおばちゃんに会った。
「確か今日だったわね。これ、お守り持っていきなさい」
急いでいたので軽く挨拶をして、貰ったお守りを握りしめる。そのまま目的地へ走り出した。
数十分走ったところで、城壁が見えてきた。
「見えてきた……あれが王都か!!」
近づくにつれて、城壁はどんどん大きくなっていく。王都の前まで来ると、見上げるほどの立派な城壁が目の前にそびえていた。初めて見る光景に、心が思わず躍る。
でも、見とれている場合じゃない。急いで中へ入る。
整備された広い道に、びっしりと住居や店が並び、人で溢れている。活気に満ちた光景に圧倒されながらも、足を止めずに進んだ。
その途中、重い荷物を持って苦労しているおばあさんを見かけた。
時間があまりない。通り過ぎようとしたのに、足が止まってしまった。
田舎では、困っている人がいたら手伝うのが当たり前だ。その習慣が出てしまったらしい。
おばあさんに近づき、自然と声をかけていた。
「荷物、運ぶの手伝いましょうか?」
「いいのかい……?」
おばあさんは申し訳なさそうにしている。
「困った人がいたら手伝うのは当たり前ですよ」
俺は笑顔でそう答えた。
「ありがとねぇ……」
おばあさんは嬉しそうな顔をして、荷物を渡してくれた。見た目以上に重い。木の箱に入っていて中身は見えないが、かなりの重量だ。
「目的地はどこですか?」
早く終わらせたくて、少し食い気味に聞く。
「郵便局です」
郵便局の場所はだいたい分かるが、正確な位置までは知らない。おばあさんは雑な手書きの地図を見せてくれた。よく分からないが、時間がない。地図が指す方角へ向かうことにした。
「おばあちゃん、届けるから帰ってていいですよ!」
そう言い残して走り出す。
息が切れてきた。荷物が重すぎる。
どうしようかと考えているうちに、魔法を使えばいいことに気づいた。本当は今は使いたくなかったが、仕方ない。
荷物に手をかざし、魔法を唱える。
「フロート」
荷物がふわりと浮いた。これで少しは楽になる。とはいえ、魔法の扱いがまだ未熟で、浮かせたものを自由に動かすのは難しい。結局、浮いた荷物を抱えながら走ることになった。
いつか必ず極めてみせる——そう思いながら、なんとか郵便局を見つけ、魔法のポストに荷物を投げ入れた。
そして間に合わせるために、身体強化魔法を発動する。一気に加速して、目的地へ爆走した。
「やっと、着いた……」
会場の前に到着する。時間はギリギリ間に合った。ゼェゼェと乱れた呼吸を整えながら、深く息を吐く。
「よし、行くぞ」
真剣な顔つきになり、堂々と歩き出した。王立魔法警察育成所——入学試験会場へ。




