彼女達は見ていた―③―
「あれ?本当にここを襲撃するの?」
余計な感情で塗れていたブラッディジェネラルは自分のお気に入りスウィーツショップが今日の標的だと当日知った。いや、正確には知っていたのだが認識出来ていなかった。
自分の初めてを奪ったのにしれっとしているネクライトと口も態度も性格も悪そうな後輩プリピュアと対峙せねばならない事実に感情が滅入っていたのが大きな理由だがいざお店の前に立つと後悔が押し寄せてくる。
敵対組織で活動するとはこういう事なのかと。
既に2人とも戦闘フォームに身を包んでいる為おかしな目立ち方をしていたがブラッディジェネラルが立ち尽くしたまま動かないのでツイカは不安そうにこちらを見上げている。
「・・・よし!!すみませーん。デラックスキャラメルスイートポティトを2つ、いや、3つ下さい~!あ、あとクリームソーダを2つ!」
だがここで退いては社会人としても元プリピュアとしても示しがつかない。なのでまずは大好きな商品を2つ注文するとツイカを手招きして席に座らせた。
幸いブラッディジェネラルのままでもお支払いは可能で周囲や店員さんからほんの少し警戒されるような視線を集めつつもトレーにのった元気の源を少年が待つ席へと運んでいく。
「え?!いいの?!戦いに来たんじゃないの?!」
「いいのいいの!昔の人も腹が減っては戦が出来んって言ってるしね!!」
時折スマホで撮られている気配もあったが前みたいに放送コードに引っかかるようなものでなければ問題ないだろう。
下手な菓子パンよりも大きくあらゆる甘さを積み重ねたスイートポティトをナイフとフォークで一口大に切って頬張る2人。
「「んんん~~!おいしぃぃぃ~!!!」」
たった一口で悩み事が吹き飛ぶのだから甘味というのは本当に偉大だ。しかし任務まで吹き飛ばさないように注意せねば。
そう思いつつも甘いものを食べた後に甘い飲み物を流し込んで更に甘いもので畳み込む。糖尿病が全力でお出迎えしてくれそうな凶悪コンボを小学生の前で実演する翔子はもしかすると教師失格かもしれない。
やがて完食した2人は満足感を胸に店を出るとそのまま組織に帰りそうになる。
「美味しかったねぇ!今度また来ようよ!」
「いいわね!こんな仕事なら毎日でも・・・はっ?!」
そうだった。今は敵対組織『ダイエンジョウ』の幹部としてここにやってきていたのに甘味で全てを忘れ去っていたブラッディジェネラルは我に返る。
更に今回は自身で『アツイタマシー』を回収するよう指示されている。支給品の『アツクナレヨー』を取り出して眺めるもどこに投げようか非常に悩んだ。
(変なところに投げて被害が大きくなるのもなぁ・・・出来れば前回みたいにスマホをいじってるだけの大人しい『アオラレン』になってくれれば・・・)
「あ!!見て見て!!ブラッディジェネラル!!あのレジの前にいる人!!」
何かないかと周囲をきょろきょろと見回しているとツイカがこちらのマントを引っ張って指をさした。その方向には先程のスウィーツショップに入ってきたチンピラみたいな男が何やら店員さんに喚き散らしている。
「あれだぁ!!」
詳しい事情は全く分からないがふざけたリーゼントとダサすぎるアロハシャツ、日差しが強い訳でもないのに屋内でサングラスをしている様は間違いなくモンスタークレーマーだろう。であればこちらも利用するのに遠慮はいらない。気兼ねなく彼に暴れて貰おう。
「冷え切った皆!!『アツクナレヨー』ッ!!!」
決め台詞を叫んだブラッディジェネラルが小さく丸い玉を全力で投げつけると変な回転が掛かっていたせいか大きく逸れてカーブを描く。
見事に標的を回避した『アツクナレヨー』はそのまま壁にぶつかると本当にピンポン玉みたいに簡単に跳ね返ったので2人は思わず顔を覆ってしまうが特に問題なかった。
何故ならそれはカウンターで対応していた店員さんに当たると見事に『アオラレン』へと変身していったからだ。
「うううっるせぇぇぇぇぇぇえなぁぁぁあああ?!?!?」
平謝りを続けていた優しそうなお姉さんがスイートポティトの体に変わるとみるみる大きくなっていって店を内側から突き破る。
例のモンスタークレーマーは腰を抜かして泡を吹いて失禁するというみっともない3コンボを決めていたが命に別状はなさそうなので放っておこう。
「おお!あのお姉さんも熱い心の持ち主だったんだね?!」
「ええ・・・そうね。熱い心・・・には違いないけど・・・ねぇ?」
恐らく日ごろから多大なストレスを抱えていたのだろう。それが『アオラレン』となったことで爆発したのだ。狙いとは違う気がするがとりあえず彼女から『アツイタマシー』を回収せねばなるまい。
(成長させるにはある程度暴れてもらわないといけないんだっけ。)
前回と違い非常にアクティブに周囲を壊しまくる『アオラレン』店員だがこれらは後できちんと元通りになると知っている分気持ちは軽い。
むしろ敵対組織に身を置いているのだから、ここは遠慮なく暴れさせてプリピュアをおびき出すのがブラッディジェネラルの仕事だろう。
「さぁさぁ『アオラレン』!!もっともっとストレスを発散していいわよ~!!熱くなっていいんだからね~!!」
しかし全身がスイートポティトなのによくもまぁ堅いコンクリやアスファルトを破壊出来るなぁと変な感心をしていると。
「げげっ?!また露出狂が来てるのかよ・・・」
相変わらず口の悪いピュアクリムゾンが名乗り口上も決め台詞も言わずに愚痴を零しながら現れる。
「んーーー?まだ教育的指導が足りてなかったかなーーー?」
前回口の聞き方をしっかり叩き込んだと思っていたのに紅いピュアチンピラは全く学べていなかったらしい。
笑顔を浮かべながらブラッディウィップを顕現させると隣にいたツイカにも彼女の憤怒が届いたのか恐る恐る距離を取り始めた。
「あら?下着を露出して喜んでた変態さんに教わる事なんて何かあったかしら?」
そんな彼女の怒りなど全く気にせずすまし顔で登場したピュアフレイムはプリピュアらしからぬ影の濃い笑みを浮かべてこちらを馬鹿にしてくる。
これは今日も厳しく戦わないといけないな。そう覚悟を決めたブラッディジェネラルだったのだが。
「え、えっと・・・た、滾る大地の力っ!!ピュアマグマ!!!」
ここに来て黄色いプリピュアだけはしっかりと名乗り口上を決めてきた。決めポーズも可愛らしくて感極まったブラッディジェネラルは頬を緩めながら盛大な拍手で称える。
「す、素晴らしい!!素晴らしいわピュアマグマ!!貴女こそ真のプリピュアよっ!!!」
「けっ!!てめぇがあたしらを評価するなんておかしな真似してんじゃねぇよっ!!」
「今日もまた赤い下着なの?いいアングルで戦ってね?期待してるから。」
さらりと気にしていた事を口に出したピュアフレイムを睨み付けると何故か片手にスマホを持っている。
戦いの最中にながらスマホとかもはや怒りと呆れが渋滞して言葉にならない。本当にこんなのが自分の後輩プリピュアなんて・・・
「・・・いいわよ。私も人に教える立場で生きてきたからね。あなた達が理解出来るまで、何度でも何度でも教えてあげるわ。手取り足取りねっ?!」
本来なら『アオラレン』を戦わせて『アツイタマシー』を成長させねばならないのだが今日も誰より頭に血が上ったブラッディジェネラルは黄色い子にだけは手心を加えつつプリピュア達を見事返り討ちにしてみせた。
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