彼女達は見ていた―④―
「でね?!今日もあの子達ったら可愛げのない言動でさ?!伝説の戦士の自覚が足りてないっていうの?」
結局1人で3人のプリピュアを退けた翔子はあの後、勝手に暴れまくってストレスを発散させた『アオラレン』から大量の『アツイタマシー』を回収する事に成功。
ネンリョウ=トウカ閣下からも大いに褒め称えられると再び喜びを酒席で語りたい症候群が起こってしまう。
(・・・この前は嬉しさよりもストレスとショックが大きかったから羽目を外しすぎただけなのよ!そうなのよ!)
出来れば他の誰かを誘いたかったが生憎この日も同僚がネクライトしか出社しておらず、仕方が無いので二度と襲わないようにと釘を刺しつつもまた呑みに誘ってしまった。
しかもこの青年、前回は凄く渋っていたはずなのに今日は最初から二つ返事でついて来る。本当に自分の貞操を奪ったことなんて気にしていないんだな・・・そう思うと何だか心がとても痛い。
結果突発的に生まれたストレスが仇となり、またもかなりの量を呑んでしまうといつもの酩酊状態に突入だ。
「だいたいなんれあんなのがぷいぴゅあにえらびゃれたのよぅ?」
「さぁ?それは僕達にはわかりかねますね。ただプリティでピュアな少女が選ばれているのは間違いないでしょう。」
それにしても今日のネクライトは妙に付き合いが良い。前回ずっとスマホを片手に適当な相槌を打っていただけなのに何だかんだ言いつつ翔子の事を気遣ってくれているのだろうか?
「れもきいろい子はゆるす!あのこはかわいいのら!!」
しかし気持ちよく酔っぱらっている彼女は深く考えずにお気に入りのプリピュアを思い出しながら何度目か分からない乾杯を交わす。今日の名乗り口上や決めポーズなどは敵側から見てても昔を鮮明に思い出せた程印象的だった。
あの子にはこれからも是非頑張ってもらいたい。行く行くはセンターポジションに収まって欲しいと願うくらいだ。
「ピュアマグマですか。ツイカの話では相当な武闘派でかなりやんちゃだと聞いていましたが。」
「それはあのこがすかーとめくりとかふざけたことをしてたからのにょ!!きいろい子はすなおでいい子らの!!」
すっかりファンと化した翔子の熱弁にもそれなりに反応してくれてより上機嫌になってきた彼女はこの後またネクライトに送られる事となった。
だが今日は愛美と出会う事も無く、タクシーを拾う為に肩を借りてふらふらになりながら大通りへ向かっていると。
「あれ?翔子じゃない?!」
「ふや?つかちゃじゃにゃ~」
婦警の衣装に身を纏った紫堂 司がこちらの酷い酔いっぷりを見て声を掛けてきた。
彼女は小学校時代からずっと剣道をやってきたのと元々正義感が強い事、更には大学時代に助けられた婦警に憧れたのがきっかけで今は自身もその職に就いている。
真面目な司は最近繁華街の治安がすこぶる悪いのを何とかしようと夜の巡回を積極的に行っている話は聞いていた。
しかしこんな情けない姿を見られるとは・・・と恥じ入りそうになったがつい最近フられた時にもこんな姿をさらけ出してたような?しかも毎回司に送ってもらっていたような??
思考が全開で混濁していた為何を考えているのかすらよくわからなくなっていたが肩で担いでくれていたネクライトは少し心配そうな表情をしている。
(らいひょうぶらって。ぶやってぃぢぇにぇらるのことはないひょでひょ?)
恐らく秘密結社関連の事を漏らしてしまわないかが気がかりなのだろう。そこは泥酔してても弁えているつもりだ。
「・・・その男の人って・・・彼氏とか?」
「いえ、大学時代の後輩です。今日は先輩に誘われて少し呑んでました。」
すらすらと嘘を並べ立てられるのは流石敵対組織の幹部といったところか。ぼやっとした頭で感心していたが司は訝しげな表情でまじまじと観察している。
「・・・翔子を襲ったりしないでよね?この子単純だから傷つきやすいの。立ち直るのも早いけど・・・」
「大丈夫です。先輩は面倒臭いので。」
酷い言われ様だがそれを聞いた司は妙に納得したのか軽く笑い声を上げている。傷つきやすい翔子は少し傷心したが司が思い出したかのように表情を変えると顔を近づけてきて静かに耳打ちしてきた。
「・・・そういえばさっき美麗の旦那さんが若い子と歩いてるのを見ちゃったんだけど、翔子何か知ってる?」
「へ?」
旦那どころか恋人すらいない翔子にとってそれにどういった意味があるのか、酔いもあって何もわからなかったが帰り道のタクシー内でネクライトに尋ねてみると。
「それは旦那さんが浮気してるんじゃないか?と疑われているのでは?」
「う、う、うわきっ?!」
美麗程の美人を妻に娶った男がまさかそんな?聞かされて信じられないと驚愕した翔子は一瞬で酔いが醒めるとマンションに着いた後はしっかりとした足取りで重すぎる疑惑を否定しつつも自宅へ戻っていった。
「ブラッディジェネラルは強すぎるッピヨ!!」
またも返り討ちにあった3人はリーダーでもあるほむらの部屋で精霊フェニコの熱弁を聞かされていた。彼こそ彼女らにプリピュアの力を与えた存在であり炎を纏うひよこの精霊なのだが残念な事に敬意を払われた事はない。
「おいひよこ!!あたしらはこの街で悪さをする組織を壊滅させる為に選ばれた伝説の戦士なんだろ?!これじゃ話が違うぜ?!」
体中が痣だらけなほむらが悔しそうに詰め寄っていたがそれ以上に機嫌の悪いりんかはフェニコを右手で掴むと目一杯握り締める。
「いたたたたたッピヨ?!」
「ねぇフェニコ?あいつは何なの?敵は今までみたいにドスケベガキンチョ1人で十分なんだけど?私達が正義の味方で主役でしょ?どうにかならないの?」
彼女も痣だらけにはなっていたが何よりその憎悪が凄い。戦闘能力はブラッディジェネラルの方が高いらしく細心の注意を払って立ち回っていた為思うようなイヤらしい収穫が得られなかったのも原因だろう。
それにしてもこんな小さくて可愛らしい精霊によく酷い事が出来るなぁと嫌悪感を抱くもあかねはそれを口に出来ない性格だ。
出来ればほむらに注意してもらいたいが彼女もりんかに同意しつつ、むしろその言動をキレ芸か何かと勘違いしているのか腹を抱えて笑い転げていた。
何となくわかっていた。このままではいけないと。特にりんかはここの所性格の悪さを隠そうともせず周囲に当たり散らしている。
伝説の戦士プリピュア。
この存在はフェニコの住む『ファイアーキングダム』で何百年も昔から伝わっていたという。熱い魂を持つ住人達の活気溢れる世界だったそうだが突如秘密結社『ダイエンジョウ』が彼らの『アツイタマシー』を根こそぎ奪ってしまった。
そこで国王フェニッコが自身の息子であるフェニコに世界を救えるプリピュアを見つけてくるよう命じて今に至る。
だがここの所ブラッディジェネラルにやられっぱなしで『アツイタマシー』は1つも回収出来ていない。
彼らが作り出す『アオラレン』という化け物、それを生成する為に必要なアイテム『アツクナレヨー』が『ファイアーキングダム』の『アツイタマシー』から作られているのであれさえ倒せればこちらは平穏を取り戻せると同時にフェニコの目的も果たせるのだ。
ネンリョウ=ツイカを相手にしていた時は各々が勝手に動いていても難なく戦えていたのだがブラッディジェネラルが登場してからは格が違い過ぎて話にならなかった。
(でも3人が力を合わせれば・・・)
最近特にそう思うのだがほむらもりんかも協調性が皆無でありとてもじゃないが連携を取って戦えそうもない。
では新たな力を求めるべきか?あかねもプリピュアの存在は幼少の頃から知っていたし憧れもあった為、それなりに知識はある。強敵が現れると必ずそれを突破出来るアイテムや力を得るのがお約束だった。
しかしそれらはプリピュア達の真摯な気持ちや姿勢があればこそだ。
『ファイアーキングダム』の為とか自身の大切な物を守るといった本来の目的そっちのけで勝手気ままに振舞っている自分達にそんな機会は訪れるのだろうか?
考えれば考える程不安で胸が苦しくなるが同時にブラッディジェネラルの事を思い出す。
彼女は敵でありながら随分プリピュアに詳しいらしく、今日なんかは自分の事を可愛い可愛いと悶えながら褒めてくれた。
(なんだか不思議な人だなぁ・・・)
年の離れたお姉さんというか若いお母さんというか、もしくは面倒見のよい教師みたいにも思えてくる。何故あんな人が秘密結社『ダイエンジョウ』で幹部なんかやっているのだろう?
プリピュアとして挫折を感じていたあかねは自然と逃避を求めていたのかもしれない。結果、厳しくも可笑しな一面を持つブラッディジェネラルへの興味を日に日に募らせていった。
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