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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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戦場に光り輝く花

ところ変わってゴーバス領地内にあるルーニカの街。


資源も豊富で近隣の街々との流通状況も上々で一言で言うならば価値の高い街である。


「進めー!落とせー!!!」


「「おおおおおお!!!!!」」


……当然血眼になって落とされやすい場所と言う事である。


「……」


この場所の防衛に当たっているカルンクは、珍しく舌打ちをする。思った通りに事が運ばないのであった。


「こちらの兵器に一切動揺もしないとは……何も考えていない魔物を相手取っているようだ。」


何も考えていないと言うのは得ていて妙な言い方だったかも知れない。


「突撃であるー!突撃であるー!!!!」


……トラットー将軍の頭には、敵地を攻め落とす事しかない。


一切の恐怖や怖れと言う感情を極限まで排除して、敵を倒す事を考えているのだから、ある意味恐ろしいしかなかった。


怯えないと言う事は敵に弱みを見せないと言う事でもある。精神的に常に優位に立つのと同義なのだ。


「火炎球ッッ!!!」


「ぐああッ……!!!」


「押せえー!!!進めええ!!!!」


大局から見れば防戦と言うわけでもないはずにもかかわらずゴーバス軍は何かに威圧される感覚に包まれてしまうのだ。


「(恐れを知らずに向かってくる……まるでゾンビですね……実際の生命力までゾンビだったらと思ってしまいますが……)」


「痛みを忘れるなあああ!!!」


「ふふふふッ……!!」


「「ぬあああああッッ!!!」」


彼女が過ぎ去った後に複数の死体が並ぶ。無論、それに動じるヤシャマ軍ではない。


「……恐怖を感じないなんて言うのは思い込みです。このクローム・レスレッドが、あなた達の恐怖を呼び起こしてあげます。」


敵が立ちふさがるならば、いくらでも倒せばいい。


クロームただ1人は敵の勢いに気圧される事無く単身戦果を上げ続けた。


「ふふふふッッ!!!!!」


……


……そして、この日、ルーニカはヤシャマ軍に落とされた。


「(ずーん……)」


クロームは意気消沈だった。


「気にする事は無い。君はとてもよく戦った。皆それを分かっている。」


「(ずーん……)」


クロームの心の中は、あんなに一生懸命戦ったのに……である。


確かにクロームは人一倍の戦果を上げ続けた。だが、それを上回る程にトラットー将軍の兵士達が強かったと言う事である。


「ああ見えてトラットー将軍の士気は単純そうに見えるが、要所要所はしっかりと決めてくる。……だからこそここまで苦しめられる厄介な相手なのだ。仕方がない。」


どう見ても一方通行な思考回路のように見せて肝心要な所だけ冷静なのがトラットー将軍の強みだった。彼が落とすと決めた場所は9割以上落とされている実績を見たらそれははっきりとしていた。


……無論損害もそこそこに多いのだが……


「……ですがカルンク様……あんなにも頑張ったのに……」


「……守りきれなかったからか。」


「(ずーん……)」


どれだけ他人が頑張ったと言ってくれても、クロームからすれば結果は守れなかった。なのである。


「それはあの場所を任された私の力不足と言う事だ。君が気にする事なんてない。」


「!そ、そんな事言ったわけじゃありません!カルンク様のご指示があったからあそこまで戦えたんです!」


「……誰かのせいにするのではなく、誰のおかげかを考えてみる事にしたらどうだろうか。」


「誰の……おかげ?」


「あんな戦いになってしまった原因を考えるのではなく、あそこまで戦えた理由を考えるのだ。」


「……」


「勝ち負けと言う意味でなら今日の戦いは負けだろう。……だが、今日負けたからと言って我々の敗北かと言うとそうでは無い。勝負には勝ち負けだけでなく、大きな負けや小さな負け、次につながる負けなど様々な物がある。今日の戦いは果たしてどうだったか。何の益にもならない無意味な戦いだったと思うかな?」


「……そんな事、ありません。負けはしましたが、何も得る事が無かった戦いだとは……」


「そうだ。……考え方を変えてみれば、いい。もしかしたら私達がもっと早く負けていたら敵は更に早く他の領地へと攻め入っていたかも知れない。それを私達が戦う事で食い止めたとも言える。1日を戦い続けて負けた。だが、それだけ敵を食い止めたと言う捉え方だって出来る。」


「そう、ですね……」


「何より、あの場所で私達が戦い続ける事で、他の場所で戦う仲間達や、人々を間接的に守っていると私は考えて戦っていた。」


「!……その、通りです。」


当たり前かもしれないが、クロームにはその言葉は目から鱗だった。


自分があの場所で倒した敵は他の人達に危害を加える事は無くなる。


そして自分達と戦っている間は他の人達に危害を加えない。


ただ戦うと言う行為そのものが、大切な人たちを守ると言う事に繋がっていたのだ。


「……自分自身で今日を振り返ってみて、君の戦いは、どうだったかな?」


それを念頭に置く事で改めてクロームに自分の口から今日の戦いの評価を聞くカルンク。クロームの答えは1つ。自信満々に答える。


「今日の私の戦いは……99点です。」


自分の戦いに誇りを持った声だった。


「私もその通りだと思う。誰に見せても恥ずかしくない堂々とした戦いだと感じた。私も学ばせてもらった。……ちなみに残りの1点は何なのだろうか?」


「……勝ててたら100点でした。」


それを聞いて、なるほどなとカルンクは感じた。


……


少々時間が遡り、今はリンカスターがドレッドノートと戦ってよりしばらくの所。


「っく……はぁっ……!!」


「ふんッ!!!」


「……っ!!!」


ドレッドノートが隙を見計らって攻めてはそれに対抗するかのように防衛に回るリンカスター。


傍目に見てドレッドノート優勢であった。


「なかなか粘るものだ。」


「……っ……」


驚くべきはドレッドノートのスタミナ。さしもの実力者2人であっても普通1時間近くも戦えば疲れが蓄積してくるもの。現にリンカスターは時折肩で息を切るかのような動きを見せるが、対してドレッドノートはまるで全く体力が減っていないかのような動き。言うならば最初の頃からと動きが変わっていないのだ。


「(この人……全く疲れて……ないのですかッ……?)」


「そう言う風に見せておるだけじゃがな。若かりし頃に比べれば十分スタミナは落ちておる。」


「ッ……」


彼女の目を見て察したのでドレッドノートはそう答える。


「しかし年を取るのも悪い事ばかりではない。自分の体と長く生きていれば、どの戦い方が自分にとってベストな動きなのかも自然と分かって来ようと言うもの。そっちは少し勢いに任せて戦い過ぎだ。ペース配分がまだしっかり出来ていないのだろう。」


「……!」


だが、彼女のペース配分は決して間違いではなかった。これまではこれで戦いを制してきたのだから。


……だからこそ、今回の戦いは違うのだ。リンカスターにとってこれほどまで長く戦う事など無かった。だからリンカスターにとっては既にこれだけの時間戦うのは未知の領域。自分の限界が差し迫っている事にも薄々気づいている。


「昔1人と半日近く戦った事もあった。……あの時は流石に死ぬかと思ったがの。」


「……その相手は、今どうなったのですか?」


「戦場で生き残るのはただ1人。それが儂だったと言うだけの話じゃ。」


「……」


これまで前線で戦い続けてきた実力は決して伊達ではない。今日にいたるまで如何なる苦境も乗り越えてきたからこそ今ここに居るのだ。


そしてこれまで下してきた多くの相手よりも彼は、強いと言う証明である。


「……それでも。」


……だから、何だと言うのか。


「……それでもッ!!!!」


これまで強者を退けて生き残って来たからと言って何だと言うのか!!


「私は、負けません……絶対にッ!!!」


リンカスターは吠える。


「現実は、変わらん!!」


彼女の決意は実らぬと、ドレッドノートは言い放つ。


……


「(……確かに、トータルでは私はこの人に負けるかもしれない。だけど、この人はこうも言っていた。)」


……一瞬一瞬の煌きでは負けるかもしれない……と!


……


「……そろそろ、この戦いを、終わらせるとしましょうッ……!」


「苦し紛れに一撃に全てを託すか。だがこっちからしたらそんな手に乗る必要も無いのだ。ジワジワと首を絞めるように倒すのみ!!」


ドレッドノートは自分にとって攻めやすく、且つ相手にとってはやり辛い位置取りを保ちながら攻撃を仕掛けてくる。


「くっ……」


付かずさりとて離れず。決め手も無い代わりに大きな隙も存在しない。


そんなやり辛い戦い方を強いられればいずれミスが生まれる。その時を的確に狙うのが彼の戦い方だった。


が、それは同時に弱点でもあった。


「(普通ならば攻めてくるようなポイントでも、この人は攻めてこない。それはきっと一か八かの恐ろしさを存分に知っているから……生半可な隙程度で攻め込む事の愚かさを知っているからだ。だからここまでどうにか耐え凌ぐ事が出来ていると言う事。……私を必要以上に評価しているのかも知れないけど、とにかくそれが事実。)」


「手の内はもう出し尽くしたか。」


「……その言葉……お返ししますッ!!!」


「……むっ……!」


力を振り絞って久しぶりに攻勢へと移行するリンカスター。下手をしたらこれが最後の機会になるやもしれない。


「余力か。はたまた……さっき言ったように最後の灯かッ……」


「……あなたは私の戦いを見切ったかもしれませんが……それは私も同じです!!」


「……」


無論、半分ハッタリに近い物だったが、リンカスターは強く宣言する。


どうして決め手となる技を打って来ないのか……それは、絶対の隙が無ければ打てないから。


実はドレッドノート自身、剣のスキルはそこまでのものではなかった。多くは戦術やこういった駆け引きによってその差を埋めていた人間である。


それゆえ、必殺技と言う物を持ち合わせていないのだ。


だからこそ、相手が完全に隙を見せた所を叩くしかない。それゆえのこの戦い方だった。


無論そう言う風にはまるで見せないのはドレッドノートの妙。リンカスターもそこまでは思い当っていない。


「ぐおおおおおおッッ!!!」


「!!!」


ドレッドノートはより一層の力を込めて弾き返そうとする。だが、この時リンカスターはこの鍔迫り合いを制そうとは考えていなかった。


「ッ!!!」


刃が弾かれ、大きく隙を見せる形になるリンカスター。


「(……今じゃ……!)」


この戦いに終止符を打つに相応しい絶好のタイミング。遂に、ドレッドノートがトドメの一撃たる攻撃を初めて繰り出す。


「……」


「なっ……」


だが、繰り出した瞬間に察した。……誘われた、と。


リンカスターは慌てる事も無く、彼の斬撃を体全体を動かして避ける。……そして、速攻で体勢を切り替えて……


「はあッ!!!!」


斬り返す!!!


「ぬうッ……!!!!」


……聖剣アスカラシュの刃は、ドレッドノートに突き刺さる事無く、鎧に傷を付けるにとどまる。


「……ぐっ……ぐううううッッ……!!!!!」


アスカラシュの特性は、貫通。たとえ刃を刺し貫けずとも、その衝撃は敵の体へと到着する。


「……ストレート……スラッシュ!!」


その瞬間、ドレッドノートは見た。光る剣筋を。


そして、それと同時に自らを襲う衝撃を!!


「ぬ……おおおおおおおおッッッ!!!!!」


叫びながら彼の体は吹き飛んでいく!遮るものが何もなく、ただただ、勢いよく。


そして、いつしか地面へと転がり落ちる。


その姿を見つめるリンカスター。だが、彼女は自分を叱咤する。


「……ッ……本当なら、追撃しなければならなかったのに……本当にペース配分がなってなかった……」


会心の一撃を加えたが、彼女ももうだいぶ疲弊していたのだ。これ以上ドレッドノートと相手をする事が出来ず追い詰められたからこその苦肉の策だった。


そしてもう1つ。リンカスターは無論今の技を命を奪うつもりで放った。


「……ぐ……あれが、聖剣の……そしてリンカスター殿の力……少々手ごたえが無いかと思っておったが、あそこまでの力があったとは……!」


辛うじて立ち上がるドレッドノート。……そう、命を奪えなかったのだ。


彼の命を守ったのは、その身に纏う鎧。


聖剣アスカラシュが比類なき武器であるように、彼の鎧もまた比肩するもの無き防具。そう簡単に装備者の命を奪わせては自らの名が泣くと言う事だったのだろう。


「(……とは言え、これ以上サシで戦う事も出来んか……)」


こうなってしまえば、もうドレッドノートの判断は1つだった。


互いの声が聞こえるぐらいまでの距離に近づいて彼は語りかける。


「……リンカスター殿、この一騎打ち、次の機会に預けるとしよう。」


「……了承します。」


互いの了承の元、この戦いは流れる。一時両者は戦場の真っただ中から退き、この場所での決着は団体による戦いで決着をつける事となる。


……


「……力、及ばずッ……」


どちらもが、このまま戦っていたら負けていただろうと言う己への戒めを感じていた。


「……敵ながら、恐ろしい相手だった。また、いつか戦わねばならぬのだろう。」


……


「はっはああああッッ!!!てめえと戦うのももうお決まりだなぁッ!!!?」


「……沈めよッ……いい加減よッ!!!!」


そして、ここには何の因果か、出る戦場出る戦場で打ち合う2人が居た。


いや、今回の作戦だけではない。この戦争が始まった時から、どこか互いに引かれあう運命だったのかも知れない。


戦場の巨神レイナード・ホーン


破壊神クーガァー・ヴァダンノ


共に神を名乗る者として、どちらが上なのかはっきりしておきたいのだろうか。


クーガァーはふとすると、戦争そっちのけで、ただ彼と決着をつける事を望んでしまいそうになってしまう節すらあった。


「やりてえなぁ……心ゆくまでよぉおおおおお!!!!」


「もう……俺は……十分だっての!!!!」


結局レイナードは、この戦争が終わるまで彼と戦い続ける事になる。


否……この戦争が、終わった後もだった。

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