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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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降ります。

旅は道連れなんとやら。2人だった旅がいつの間にか3人に、そして一時的に5人だったのがなんやかんやで今は4人。


そうか。この世界の冒険って言うのは、こういう事なのかも知れない。旅先でいろんな人と出会い、時には一緒に行動して世界を巡る。それってなんてスケールの大きくて、素敵な事なんだろう。壮大なるロマンを求めて冒険者と言う肩書を持ちたがるのも分からないでもなかった。


そんな冒険者の端くれの私ではあったが、何はともあれどうにかこうして生きて行く事が出来ている。


ただ生きているだけと言うのも決して悪い事では無いのだが、これまで自堕落だった分、少しぐらいは迷惑をかけた周囲の人に罪滅ぼしをしようと言う気が起こっても悪い事では無いだろう。そう、悪い事じゃないだろう。


病気で苦しんでいる人達を助けたいなんて、こんな事言ってはあれだが、いかにもそれっぽい事だと思う。


そんな旅もそろそろ折り返し……か、どうかは分からないか。ソーラが加わり、更に探し求めているアンブロサムの葉の場所もリアンさんのお父さんのおかげで分かった。


そんな私達のこれからの行先はもちろん言うまでも無くウズック……


「って……あれ?」


……頭の中でモノローグの真似事を繰り広げていた私が現実世界へと思考を取り戻すと、何故かウズック行きの乗り物へと乗車している事に気が付いた。


……バスかと思って停車ボタンを探すが、そんなものはない。


「……あ、運転手さん、降ります。」


「はーい。」


「こら!!何勝手な事してんだ!」


なるほど、どうやら行先を間違えているわけじゃないようだ。じゃなきゃこうして怒られたりはしないだろうし。


「シノはちょっと変わってるのです。」


「ちょっととぼけたような顔をしてますが、実は本当にちょっととぼけているんでしょうか。」


酷い言われようだ。ちょっと話の流れについていけなかっただけでそれはあんまりというものだ。


……仕方ない。今の一連の行動はいつもの不思議ちゃん行動という事で片付けておいてもらう事にしよう。話はその後適当に合わせよう。


……


「暑いのです~……」


「ここがウズックですか、聞きしに勝る猛暑ですね。」


「寒いのはもう大丈夫でしたが、熱いのは熱いですね。」


「この石の逆バージョンも欲しいな。」


幾らでも体をあっためてくれるカブールストーンでも、逆に冷やす事は出来ないのだ。残念。


「さて、十分うだるような熱さを満喫したところでサッコロに向かいましょうか。」


「アホか。まだ用も済ませてないのに帰る奴があるか。」


「ああ、そうでした。」


何の用だか分からないけど。


「それにしてもシドさんには珍しくここへ来るには乗りものを使うんですね。」


「ここの土地は歩き辛いからめんどくさい。暑いし……」


ウズックは砂の多い場所だ。場所によっては文字通り砂漠になっているところだってある。


まあ、病気を一刻も早く治す為にも時間は短縮するに越した事は無いだろう。もしかしてそこまで考えて……いや、シド様の事だから分からないな……言葉通りの可能性の方が高いかも知れないぐらいだ。


「おし……じゃあ、行くぞ。」


「おーなのです!」


……後ろをついていくとしよう。行先分からないし。


「たまにはお前が先頭切って行っていいぞ。たまにはな。」


「……こういう時ばかり……」


なんて、間の悪い時にそんな事言うんだろう……いじめだ。


……だけど、たぶん分かった。これから行こうとしている場所が。


この町に来たのは、おそらくここがこれから向かう場所に近いからだ。そして、私に先頭を任せるという事は、私が行ったことがある場所だからだ。その二つを重ねれば答えは導ける。


……


「あれ、ついこないだも来なかったっけ?あ!ソーラも一緒じゃないの!」


「お久しぶりなのです!」


ベルさんの居るカバネ洞窟。私があまりウズックに詳しくない事が逆に選択肢を狭める事になってそれは幸いだった。


「元気そうで何よりさ。研究の方は進んでるのか?」


「おかげさまで順調なのです!」


ソーラは人当たりのいい子なのできっと誰とでも打ち解けられるのだろう。ベルさんもソーラが来た事をとても嬉しく思っている様子が2人の会話からも伝わってくる。


「これが精霊の居る場所と言うやつですか。ははぁなるほど……」


「お前みたいな凡人には見えんだろう。」


「いや、残念ですね。凡人である事を後悔します。」


ここに来たばかりのエイルくんが見えないのはある意味当たり前だろう。何の説明も無しに見えたらそれこそ精霊術師としての素養が……


「ふん。この大嘘吐きめ。視線で丸わかりだ。」


「嘘はついていませんよ?見えないとは言ってないじゃないですか?」


「……エイルくん、もしかして見えるんですか?」


「それはそれはスタイルもきっぷもいい美人の女性がよく見えてますよ。」


……どうやら彼にはすんなりと出来てしまっていたようだ。私が結構悩んで苦労したのはなんだったのだろう。……私がただ下手だっただけなのだろうか。


「さて、いつまでも和やかに話している場合でもないな。おい、頼みがある。」


「ん?なんだい?」


「こないだお前が出したこの石あるだろ。」


「ああ、出したね。ちゃんと使ってるみたいで何よりだ。」


「これからまたサッコロに行かなきゃならんのだが、ソーラの分のこれもよこせ。」


そうか。その為にここに来たのか。やっと分かった。……というか分からなかった自分が情けない。


「あれ?こないだ4つあげたと思ったけど?」


「2つはちょっと知り合いの方にあげてしまいました。」


「雪美はいいけど1人は男だしな……くそ、腹立つ……」


まだ言ってる。


「あ、ついでに僕の分もくれませんか?」


「何便乗してんだ。てめえはどうにか自力で耐えろ。」


「そんな殺生な。まあまあ、いいじゃないですか。せっかくですから。ね?ね?」


「まあ、減るもんじゃないし、その子も一緒に行くってんなら持ってけばいいじゃないか。別にアタシは構わないし。知り合いなんだろその子も。」


「もちろんです。懇意の仲ですよ。ねー。」


この強引さが羨ましい。


「図々しい奴……」


「そしたら2人とも手を握って。」


「?こうですか?」


「……」


私達がそうされたように、ソーラとリアンくんは握り拳を作り、ベルさんは暫し目を閉じる……


「……!何か……あるのです。」


「はい、完了と。」


驚くソーラは手を開く。そこにはやはりカブールストーンが握られていた。


「それの使い方は2人の方が詳しいだろうからそっちに聞くといい。まあ、そんな難しいもんじゃないだろ?」


「暖かくなれと思えば勝手に暖かくなる。」


「そうですね。それだけです。」


「どれどれ……うわ……本当ですね……暑い……むしろ熱いぐらいですね。」


「この場所では効き目が分からないのです……」


このアイテムの霊験あらたかぶりは既にサッコロで実証済みだから心配はないだろう。


「……あれ?そういえば今度は両手じゃないですね。」


「ん?本当だな。」


私達の時はバランスが悪いからなんだと言って両の手にカブールストーンが現れたのだが、ソーラ達の場合は片方の手だけであった。


「どうせなら貰えるもんは貰っときたかったんだがな……おい、どういう事だ。」


「ん?いやぁ……それが何と言うかね。さっきは減るもんじゃないって言ったけど、実はあれからまた作ってみようかと思ったんだけど、そんな石でも作ろうとするとエライ力を使うみたいでね。今作った2つもどうにかこうにか全身全霊の力で作ったんだよ。とてもそうは見えないかも知れないけどおかげでへとへとさ。」


「精霊は元々形の希薄な存在、こんなエネルギーを蓄えた形のある物を具現するのはきっと大変なのです……」


「そうだったんですか……」


顔にも出さないから気が付かなかったけど、結構辛い事をさせてしまっていたんだな……


「前に熱い剣出してくれたのは何だったんだ?」


「フレグラスコーンかい?あれだって結構出すの疲れたのにいらないって言うもんだから困ったもんだよ。もっとも今その石を出したからアタシの力が回復するまであの剣は出せないね。」


「ごめんなさいなのです……」


「ソーラが謝る事じゃないよ。むしろ、ソーラだから無理してもいいって思えたのさ。こんな身になっても未来ある精霊術師の力になれるなんて幸せな事だからね。今を生きる人の力になれるのは、嬉しいもんさ。ちょっとぐらい無理してもさ。」


……このカブールストーン。ちゃんと大事にしないとな。ベルさんの私達への想いの結晶みたいなものだ。


「綺麗な人にそこまで想ってもらえると僕も来た甲斐があったってつくづく思いますね。」


「勝手にいいように解釈してやがる。」


「まあ、そっちの子もそんなわけだから大事に使ってくれたら嬉しいね。持ってるだけでちょっとしたお守りみたいなものだからね。」


「お守り……」


その言葉にエイルくんは暫し思案する。


「実は僕、一つ考えていたことがありまして、どうして病気の最中で雪美さんとクロックさんは無事なんでしょうか。」


「シロックさんの話だと、2人は配給を取りに来たって話でしたね。」


「1000人近くの人数が居てその2人が無事と言うのに何らかの理由があるとすれば、ちょっと前にシドさんとシノさんが接触している事が関係しているんじゃないでしょうか。そう、もっと言えば、雪美さん達にシドさん達がこの石をあげた事……」


「……この石を持ってるから、無事だってのか。」


「今ふとお守りと言う言葉が出て来たので、そうなんじゃないかって思っただけです。文字通り、ゲンガー病から持ち主を守っているって。」


「……ベルさん、この石が持ち主を病気から守ってくれると言う事はあるんでしょうか。」


「どうだろうね。まあ、多少なりともそんな力もあるかも知れないけど、病気の専門家じゃないから何とも分からないね。……ただ、例えば熱に弱いウイルスから身を守ってくれる、なんて事ぐらいはあるのかも知れないね。」


「熱に弱い……」


「もしかしたら、ゲンガー病の弱点なのかもしれません。まあ、大抵細菌は熱に弱いものですけどね。」


「つーかそれならこの石を村の奴ら全員に持たせれば治るんじゃねえのか?」


「あー……悪いけど流石にアタシにはそこまでの力は無いから……後1個すら出せないよ……」


「あんまり無理させちゃダメなのです……」


「……仕方ないか。」


だけど、思わぬ別の治療法が見つかったかもしれない。熱、か。当たり前の落としどころではあるけど、それで治すことも出来るなら道が広がった事になる。


「あのお爺さんに次会った時に聞いてみましょう。」


「それならば手土産代わりに、やっぱりアンブロサムの葉はあった方がいいですね。」


会話をスムーズに進める為にも、そして、私たちの想いを伝える為にもそれが必要だ。


「ではそろそろ……行きますか?」


「そうだな。」


「気を付けていきな。」


「石、ありがとうなのです。」


「いいっていいって、また力になれそうな事があったらいつでも来るといい。」


炎の精霊なんて暑苦しそうな言葉とは裏腹に、ベルさんはとても暖かい心の持ち主だ。彼女から託されたこのカブールストーンがあれば、私達は凍える吹雪の中でも進むことが出来る。


……雪美さん達は、今、どうしているのだろうか。


……確かにカブールストーンが2人の身を守ってくれていると言うのはありそうな話ではあるけど、決して確証があるわけでもないし、2人が一番危ない所のど真ん中に居ると言うのは変わらない。やっぱり早くその場所から救ってあげないといけないんだ。


そんな気持ちに急く私だったが、カバネ洞窟から出てすぐにサッコロに向かったところで時間は思いのほか過ぎてしまっていたため、この日の旅はサッコロの城下町に入ったところで終わらざろうえない事となってしまった。

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