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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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行き先はゴーバス?

「どちらにしようかなっと。」


何してるんだろ。まぁそのうち私にも教えてくれるだろう。今日は久しぶりに……ダイモンさんの所に行ってレベルを見てもらった。


……この世界に来てしばらくして、ただガムシャラに魔物と戦い続けた時に一度見てもらった時はきっと大上昇しているに違いないなんて勝手に思い込んだ私の願望は大きく打ちのめされた。たった1しか上がってなかったんだもん……


「(けど冷静になった今ならあの意味が分かる気がする……きっとあの頃の私はたとえ戦う力が上昇していたとしても……心という面では全く成長していないどころか、衰えてしまっていたんだろう。)」


元より弱い私が必要以上の力を出す為には申し訳ないけど誰かの協力が必要。その為に私も自分で出来る限りの協力をする。そういう心があったからこその私だった。というのにただ一人で孤独に戦う事を選んでしまった私がたとえ多少強くなったところでたかが知れている。誰かに助けを求める事が出来るというのもそれはそれで強さなんだもん。


「(そしてレベルとは……しっかり自分の道が見えていないと……そう簡単に上がるものでは無い。)」


強いって……何が強い?腕っぷし?頭が良い?優しい?それは人それぞれ違う……自分の求める強さが何であるかが分からないのにどうやって強くなるというのか。


ダイモンさんは既にあの時私に教えてくれていたんだ。自分の未来をもっとハッキリ見た方が良いと、遠くを見すぎるのは良くないと。


「(人類を救うなんて途方も無い目標の前では……あの程度の頑張りレベル1上がる程度でしか無かったという事……むしろその程度でも評価されただけでも御の字だ。そう簡単に全てを救えたら誰も苦労なんてしない……)」


そう自分の中で考えを改めたとしても……ちょっとレベルを見てもらうのは怖かった。そりゃあちょっとは強くなっていた方が嬉しい。あの頃と何も変わってないどころか……レベルが下がってたりしたら……今私が進んでいる道そのものが間違っているかのように思えてしまうから。


そして見てもらったその結果は……


レベル……59だった。


それを聞いた時に私はホッと胸をなでおろし……そして同時に、ダイモンさんも優しく微笑んでくれた事をよく覚えている。


どうやらあれから姿を現わさない私の事を随分心配してくれていたようだった。こんな風にして知らず知らず他人に迷惑をかけてしまうのは私の悪い所だけど……誰かに想ってもらえるのが同時に嬉しくもあった。


そしてこうも言ってくれた。今の私の道を進み続けるのがきっと正しいと。その瞳で視る未来ならばきっと自分が願う明日に繋がると。


……自信がついた。やっぱりダイモンさんの言葉は長年の積み重ねもあってか、私の心に強く響いて来る。私もやがては誰かが困っている時にそっと導いてあげられる人物へとなれるのだろうか……


「(……そんなおばあちゃんになる為にも、ちゃんとそれまで生きなくちゃ……ダメですよね。)」


……生きよう。生きる為に……残酷な未来と戦おう。


「よし、決ーめた。」


「今日何をして遊ぶかですか?それとも何を食べるかですか?はたまたどんな女の子と出会うか……」


「ゴーバスに行こうっと。」


「……!」


……シド様が、ようやくその重い腰を上げてくれた。


「く、苦節三年……ようやくこの日が来たんですね……うぅ、私は嬉しいですシド様。そろそろ一人で行こうかと荷物をまとめていた所でした……」


「1週間しか経ってねえよ……まぁこの町ではあんまり何も起こらなそうだし、良い依頼も無さそうだし……それだったらお前の誘いに乗った方がいくらか面白そうだと思ったからな。」


「乗ってください乗ってください。きっと楽しいですよ。私もシド様も。」


ソーラに会える。リアンさんに会える。あふぅ……また仲良くなれるかな……


「いつ行くのいつ行くの?」


「ん~、まあ今日でも明日でもいいさ。別に目的があるわけじゃないしさほど変わらねえだろ。あの辺に行くぐらいなら準備もいらねえだろうし。」


「思い立ったが吉日です。すぐ行きましょう。」


一人勝手にテンションを上げた私は飲み物を一気に片付けて荷物と共に立ち上がり冒険へと旅立つ。いざ、冒険者シノちゃん出陣!


「あー!こら!まだ俺が飲み終わってねえ!!」


……シド様は後から急いで追いかけてくれた。私から目を離せないんだから。


「分かってんならちょっと待てぃ!!」


……


るんたったるんたった。


「シノ足取り軽いね。」


「なんだか弾む気持ちです。心なしかステップも実に小気味良いです。」


「ゴーバスにそんな楽しい事あるか?」


「たくさんの出会いがあるんですよ。」


今思ったけれど、フィータ王女様とは何度も交流があったけど、ゴーバスの王様って良く知らないな。それに……王女様も。


「(話には聞いた事があるけれど、フィータ王女様みたいに前面に表立って出て来るような事も無かったし……どんな見た目でどんな性格なのかも分からない。記憶力の無さに定評のある私だから名前すら定かじゃないけど確か……リリィ……王女?だったかな……間違ってたら申し訳ない。)」


「あ、シノ見て見て。あの人達……なんだか怪我してるみたい。」


「?」


「うー、いてて……なんてこった……」


「あれじゃあ無理だよね……命があっただけでもマシだよ……」


本当だ。中でも一人の男性は自分で歩く事もままならないのか女性に肩を借りている。


「冒険者みたいだな。けど美人が居ないのは幸いだ。関わらずに済む。」


「すすす……」


「あ!こらこの能天気お人好し娘が!!余計な事に首を突っ込むんじゃねえ!」


別にお人好しじゃないもん。ただ気になるだけだもん。


「あの、どうかしましたか?」


「……ん?あなたは?」


「冒険者です。もしかすると同業かなぁと感じたので声をかけてみました。何やら随分傷を負っている様子だったので……」


4人の人達は皆暗い顔のままに目を見合わせると、やがて私に語り始めてくれた。


「……見ての通りなんだよ。さっきそこにある洞窟に行ってきたんだけど……ボロボロにやられちゃってすごすご退散してきたってわけで……幸いこうして逃げて来れたからそれはラッキーだったかな……」


「そうでしたか……それは危なかったですね。」


話しぶりでは犠牲になった人などは居ないようでとりあえず安心はした。


「自分の力量も弁えないで行くからそんな事になる。お前らみたいな奴らはもう少し身の丈にあった楽な所に行け。」


「シド様ったらそんな言い方ありません。すみません、シド様は少々横柄な所があって初対面の方にもこんな接し方に……」


「俺達にはレベルが低いのは元よりある程度分かってた……けど、どうしても欲しいものがそこにあったんだよ……」


「どうしても欲しいものですか?」


「その洞窟の宝箱の中に時折オカタイ鉱石ってアイテムが出るらしくてそれを手に入れたくて行ったんだよ。」


「だってよ、知ってるかタンザナイト。」


「うん。オカタイ鉱石ってあるよ。ちょっと質の良い金属だけど、武器とか防具に使うにはちょっと弱いぐらいの。」


「お前達、妖精を連れているのか……珍しい。」


「……確かに武器や防具の為に欲しいんじゃない。杖を作りたいんだ。」


「杖?強度の高い杖とか?でもその分魔法力は落ちちゃうよ?」


「戦闘用じゃないんだよ。普通に歩く為の杖だよ。」


「お年寄りが歩いたりする用に……って事ですか?」


「……ウチの爺ちゃんがもうだいぶ足腰が弱ってて、だから良い杖をプレゼントしようと思って探し回ってたらそのオカタイ鉱石があったら良い杖を作ってくれるって話だったんだ。だからと思ってあわよくば手に入るかと思って行ったんだけど……思いのほか魔物達が強くて進む事もままならなかったんだよ……」


……そういう話を聞くと、少し心温まってしまう。


「あほらし。命を危険に晒すぐらいなら市場に出回ってる奴を買えばいいだろうよ。」


「お店で売ってるのはまあまあ高いけどね。」


「ちょっと高くても命の方が大事だろうが。」


言ってる事はもっともなんだけど……でも……


「シドなら別に躊躇なく買えるかもしれないけど……普通の冒険者の人じゃ少し……」


「……そうだな……やっぱりそれが良いのかもしれない。俺のじいちゃんの為とは言っても、そのせいでみんなを危険に晒すのは……やっぱり良くないな……」


「「……」」


……無念の感が表情からにじみ出ている。この人も出来れば自分の手でプレゼントを調達したいと思ったに違いない。そして仲間の人達もきっと、協力したいって善意の想いから洞窟に共に向かったんだろう。


「……分かりました。私とシド様でその洞窟に行ってオカタイ鉱石を手に入れてきます。」


「「!?」」


「おい、バカ。何勝手な約束してんだ。」


「むしろこの流れならそうなるのが自然じゃないですか。というより通りがかった事を偶然じゃなく運命だと考えるべきです。それにシド様ならどんな敵でもへっちゃらですよね。」


「そりゃあまあそうだが……」


「……気持ちは嬉しいんだが、もし俺なんかのせいであんたらが危険な目に遭ったら……」


「大丈夫です。任せてください。最悪本当に危ない時は急いで退散してダメでしたと謝りに行きますから。」


「いや……でも……」


「何という洞窟ですか?」


「……あっちにある、ホンロン洞窟ってところだけど……」


よし、名前と探す物さえ分かれば大丈夫。


「それでは行きましょうシド様。」


「何で行く前提で進んでんだよ。そいつらは自分でどうにかするってんだからほっとけばいいだろ。」


「むー……私は嫌です。」


「ゴーバスに行くのはどうすんだよ。」


「う……そ、それは、ホンロン洞窟に行った後でまた後日……」


「こいつらの手伝いをするか、ゴーバスに行くか二択だとしたらどうする。」


「……」


「言っとくが今日を逃したらまた俺の気分がどう変わるかなんて分からんぞ。次気が乗るのはそれこそ一ヶ月後かもしれん。」


「……」


……自分のやるべき事、それを見失っては、いけない……


世界の危機を知るのは私……だから自分の行動が世界の未来に繋がるとするなら私は……自分のやりたい事を第一に考えて動くべき……


「(……ソーラの力やリアンさんの知恵は……この先もきっと大切になってくる。ならば早く出会って関係を築いておいた方が何かと有利だし……何より私自身が嬉しい……)」


……たとえこの人達に協力しなくても……だからと言って誰かが危険な目に遭う事は無い。ちょっと金額は払う事になってしまうけど、無事におじいさんに杖をプレゼントする事も出来るだろう。


「……」


「ふう、分かったな。俺の今日の気分はゴーバスだ。だからお前も……」


「……どちらかしか選べないなら……この人達のお手伝いをします。」


「……何?」


「……!」


……ああ、やっぱり私には無理だ。無理だよ。割り切れる私じゃない。理屈に合わなくてもやっぱりダメだよ。そんな無念そうな表情をする人達を放ってはおけない……


……これでいいやと妥協するなんて……私が同じ立場だったらどれ程悔しい事か。私が諦めざるを得ないような状況で周囲の人達はいつも私の背中を後押しして手伝ってくれた。そこまでして貰った私がどうして……目の前の人達に手を差し伸べないで居られようか。そんな自分がなりたい自分だろうか。


私の知る人達は自分がやらなくてはいけない事を後回しにしてまで私に協力してくれた……私が憧れたのは……そんな優しさを持った人だ。


「皆さんはどこに帰るんですか?」


「……エイスの町だ……俺の家もそこにある……」


「完全に逆戻りじゃねえか。」


戻ってなんかいない……きっと、進んでる。だって私には見えてる。これから進むべき道が。しっかり、ハッキリと。


「ホンロン洞窟に行ってきます。エイスの町で待っててください。きっとオカタイ鉱石を持って帰りますから。」


「あっ……ちょっと……君……!!」


その場に立ち止まってどうするかを決めあぐねているぐらいなら、この足は常に前へ進めるべきだ。


だから私は歩き出す。むしろ、走り出す。


「(ソーラやリアンさんに会うのは……もう少しだけ、後にしよう。)」


私がいつかやりたい事と今やりたい事は違う。感情が違う。


……私という人間は、今ここに存在する感情に沿って動く。


能天気ってのは……確かにその通りだな。

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