第33話:大地の旅団
地下16階からオリハルコンバットという強力な戦力を得ると相手は動きが遅いロックタートル。
経験値を稼ぐには絶好の獲物と化し、ダンジョン内のロックタートルを狩り尽くす勢いで進んでいく。
夢中で狩りをしていたせいで地下18階に辿り着く頃には辺りが薄暗くなっていた。
ダンジョン内では階層にもよるが主にフィールド型の階層が外と連動して昼と夜に変化する。
二人で話し合った結果、せっかくなので地下21階を目指すと決めて、夜営の練習もしようとなった。
俺は初めてダンジョン内で過ごすこととなるが陽輝がいるし、何より夜は俺の魔法がより強く効果を発揮する時間帯でもあるのであまり心配はしていない。余談ではあるが最も効果が高まるのは月蝕の時と鑑定さんが言っていた。
夜営する場所は各階層をつなぐ、階段前もしくは階段を降りた先が基本らしい。
理由は階段のそばが直ぐに逃げられて最も安全なんだそうだ。今回は地下18階に降りたところて夜営をする。
地下18階へと続く階段を降りていくと僅かに人工的な光と人の話し声。
どうやら先客がいるようだ。
相手によっては面倒事を避ける為、引き返し17階側で夜営をする選択もあるがどこの誰か分からない相手が近くにいると安心出来ないので安全確認の為、先に夜営しているパーティーに挨拶して人柄を確認させてもらう。
先客は階段を降り先から少し横にずれた場所で休憩しているようで階段を降りるにつれ、此方の気配をさとり、雰囲気から身構えていることが伝わってくる。
これだけでかなりの手練れだと推測出来る。
相手を無駄に刺激しないように足音をわざとたてて降りていく。
「ど、どうもこんばんわ」
「おう!こんばんわ。にいちゃん一人か?」
「いえ、連れがもう一人」
お互いに探るような挨拶を交わしていると階段を降り終えた陽輝が顔を出す。
「誰かと思えば、小山のおっさん達じゃん!」
「「「おおぉ~!!陽輝じゃねえか!」」」
「(あれ?知り合いですか?)」
話していた俺を他所にみんなで盛り上がり始める。
「陽輝、久しぶりだな。てゆーかお前、怪我はどうしたんだよ?」
「それは・・・寝たら生えてきたかな」
「そっかそっか・・・って、そんな訳あるはずないだろうが!みんな心配してたんだぞ」
「ごめん」
頬をかきながらそう答えると俺の方を向き、目で話しても良いかと聞いてくるので無言で頷いておく。
陽輝は俺から了承してもらえ、笑顔で振り返り説明し始めた。
「まずは改めてあの時は助けてくれてありがとうございました。今も俺が生きていられるのは小山さん達、『大地の旅団』のおかげです」
「俺達の仲だろうが気にするな。それに俺達だって陽輝には何度も助けて貰ってるからな。それで本題だがあの大怪我をどうやって治したんだ?」
陽輝は俺達がダンジョンコアでチートしていることは伏せつつ、俺がたまたま持っていた回復ポーションを使ったら欠損にも効く効果のあるポーションで元に戻ったと説明していた。
途中、陽輝を助けたことを感謝されつつ、陽輝との関係性をあまり理解していない俺に小山さんが簡単に説明してくれた。
なんでもこの小山のおっさん達ことパーティー『大地の旅団』は陽輝と一緒に探索をしたり、情報の交換など以前から交流があり何よりついこの間、瀕死になっていた陽輝を救って病院へ運んでくれた人達でもあるとのこと。
それを聞いて確かに恩人には嘘ではなく出来る限り正直に怪我が治った経緯を説明したかったのだろうと陽輝の心情を察した。
その後はなんですぐに連絡しなかったのかと陽輝が責められ、終わると今度は俺に対する質問が浴びせら始めた。
今夜は長くなりそうだ・・・。




