第32話:その手にオリハルコンバット
名古屋市にあるダンジョン地下16階。
荒れた大地にごつごつとした岩が転がり、遠くには小高い丘が見える。
まさに荒野といった風景が広がる。
見渡した限り、モンスターの姿は確認出来ないが索敵にはモンスターの反応がある。
それもなかなかの数だ。
「俺、ここのモンスター苦手なんだよな・・・」
珍しく陽輝がぼやいている。
「陽輝がそんなことを言うなんて初めてだな」
「まあ、ちょっと相性が悪いモンスターがいるんだよ」
「へぇ~、確か16階から出るモンスターはタイラントウルフとロックタートルにマッドブルだったっけ?」
「そうそう、タイラントは問題ないんだけど、他の2種類は雷魔法が効きずらくて苦戦するんだよ」
「確かに岩と泥には雷魔法は相性悪そうだな」
どこぞの大人気ゲームみたいだ。ゲットだぜー!
「そういう優斗も相性が良いとは言い難いんじゃないか?」
「ん~、まあ効果抜群とはいかないだろうな」
「じゃあさ、さっさと抜けちゃわないか?」
「それも悪くないけど、少し戦っても良いか?」
「まあ、優斗が戦いたいなら止めはしないが本当に面倒だぞ」
「ふ~ん」
俺としてはどれだけ面倒だろうと経験には繋がるので一度も戦わないという選択肢はない。
早速、スキル索敵で一番近くの反応に向かう。
反応がある場所に来たが見たところなんの変哲もない岩がひとつ。
「優斗、わかっているとは思うがその岩がロックタートルだからな気をつけろよ」
「了解」
しかし、待てど相手からは何の反応もない。
先制攻撃のチャンスと割り切り、幻影のサーベルを振りかざし思い切り斬りつける。
ガキィィン!!
手に強い衝撃が返ってきたが岩の表面を少し砕いただけで終わった。
「かたっ!」
全力で攻撃したにも関わらず、ほぼノーダメージ。これでは魔法を使ったとしても並の魔法では効きが悪いだろう。
そりゃあ、陽輝も嫌がる訳だ。
さてと、どうしたものかと考えているとロックタートルに変化が起きた。
岩からゴツゴツとした手足にしっぽが飛び出し、最後に頭が出てきた。
見た目はテレビの動物番組で見たことのあるゾウガメにフォルムが似ていると言ったところか。
どうやら俺の攻撃で目が覚めたのか引きこもり状態ではなくなったが動きは遅く、隙だらけだ。
もう一度、攻撃を行うべく距離を詰めて甲羅から出ている足の付け根と思われる部分に突きを放つ。
ギィィン!
甲羅ほどではないがなかなかの固さだ。この敵を剣で倒すには時間と武器の損傷が痛いので一旦中止とする。
となれば魔法しかない。闇魔法『ダークボール』を試してみると武器攻撃よりは効いているようだ。
だが致命傷には程遠い。
次は中級魔法になる『ダークランス』。
これは甲羅の表面を削り取ることには成功したが見方によっては防がれたとも言う。
こうなったら上級闇魔法『ダークストリーム』を放とうとするとロックタートルが口から野球ボールほどの岩を俺に向けて吐き出してきた。
スキルで強化された俺にはなんなく避けることが出来たが岩が飛び出してくる様からピッチングマシンを想像し、そこでちょうど良い武器を持っていたことを思い出す。
サーベルをしまい、アイテムボックスからオリハルコンバットを取り出し、ロックタートルに接近からの甲羅に向かって無造作にスイング。
バキバキバキッ!
バットが当たった箇条から蜘蛛の巣状に亀裂が広がっていき、割れた欠片が地面に落ちると円形脱毛症のように生身が剥き出しとなった。
ロックタートルはこの一撃で口から泡を吐き、痙攣している。
痙攣して動かないロックタートルに生身の部分からサーベルで一刺しして仕留める。
あれだけダメージが通らなかった甲羅もオリハルコンバットの攻撃力にかかれば飴細工がごとく粉砕。オリハルコンバット、マジ半端ねぇ~!
「金属バットで突破口を開くなんて流石だな。それにしてもそのバット強くないか?」
ご意見番が来たようです。
「陽輝もまだまだだな。ただの金属バットじゃないんだぜ。ちゃんと鑑定してみ!」
「・・・オリハルコンバット?!いつの間に交換したんだ!」
あれ?そう言えば、武器強化の方法伝えてなかったかも・・・一応、教えとくか。
「これDP交換で手に入れたんじゃなくて時間と手間暇をかけて強化した元はただの金属バットなんだぜ」
案の定、陽輝にあれこれ聞かれるのですべてに答えてあげつつ、説明が終わると交代でオリハルコンバットを使ってロックタートル、マッドブルを簡単にほふっていった。
特に陽輝は今までの鬱憤を晴らすかのように必要以上にタコ殴りにしていた。
なんだが陽輝の心の闇を垣間見た気がする。




