第31話:真・幻影
ゆっくりとボス部屋の扉を押し開き、俺を先頭に中へと入っていく。
部屋の中央には見覚えのあるタイラントウルフが3頭、こちらを嘲笑うように大きな口を開き、赤い瞳で俺を捉えて離さない。
今回のボス戦は俺のみで戦う為、陽輝は扉の前で待機している。
一人で前に出てくる俺だけが戦うと理解したのか3頭は狙いを俺に絞り、半円を描くような位置取りで構える。
殺されかけたあの日からタイラントウルフを再び目にするが恐れや気負いもましてやトラウマなど感じない。
精神状態は至ってフラットな状態だ。
俺を囲む形で距離を詰めていた3頭の躯が僅かに沈むのが見えた。
戦闘に入っても冷静に観察出来ている。
一足飛びで詰め寄る3頭の内2頭は俺の両足に噛み付き残りの1頭は鋭い爪による爪撃を繰り出し、見事に切り裂かれた俺は黒い霧となり霧散した。
異常な事態に戸惑う3頭と陽輝。
戸惑う3頭の内の真ん中に位置する1頭の背後から飛び出すと同時にサーベルを根元まで突き刺し、柄を握る手に力を入れて力任せに抉る。
背後から刺したこの一撃は致命傷となり、抉られた1頭はその場に崩れ落ちた。
突然の出現に驚く2頭には『シャドウニードル』をお見舞いする。
影から無数に突き出る棘の奇襲に反応出来たのは1頭のみ。しかし、その1頭も無傷では済まず、致命傷とまではいかないものの深い傷を負っている。
3対1の有利な状況から一転、不利な状況に追い込まれたタイラントウルフは傷の深さも相成って道連れにせんと無謀な特攻を仕掛けてくる。
だが俺の真・幻影の前には
その特攻も虚しく散ることとなった。
最期は俺の影魔法と闇魔法の合体魔法『ダークネスプリズン』に絡み捕られ身動きの取れないまま、胸元へ深く突き刺されて絶命した。
タイラントウルフの躯から引き抜き、血糊の付いた、サーベルを鋭く振り払い血糊を払ってから鞘へと納めた。
戦闘が終了し、終始壁際で観戦していた陽輝が近寄ってくる。
「どうやら問題ないみたいだな」
「ああ、見ての通りだ」
俺はまったく問題なかったと両手を広げてアピールする。
「それはそうとどうやったんだ?黒い霧になったりいきなり違う場所から現れたり、タイラントウルフが幻影に触れたら動けなくなったり、さっぱり解らなかった」
流石の陽輝でも初見では見抜けなかったようだ。ふふふ
俺は陽輝に説明するか一瞬迷いつつもこれからもコンビを組む以上、教えることにした。
「まずは黒い霧になって消えたのは幻影と影魔法で分身を造ったからだ」
「そうか・・・ってそんなそぶり一切見せてなかったじゃないか」
「それはボス部屋に入る前に発動させたからな」
「なっ!?いつの間に・・・」
「陽輝が俺を視界から外した隙にね(笑)」
「まじかよっ!じゃあ、モンスターの背後からいきなり現れたのわ、どうやったんだよ!」
「あれもボス部屋に入る前に幻影と分身を発動してから影魔法で影に潜ったんだよ。そんでもって分身が消える前に影から影に潜りながら移動して攻撃した」
「・・・」
「そんで最後の身動きを封じたのは分身を影と闇の檻に変化させて捕らえた。」
「・・・すげぇ・・・よくそんなこと思い付いたな」
こういう反応されるの好きだわ~。今の俺、ピノキオの鼻みたいになってるかも。
「まあ、つまりは向かい合った時には既に俺の術中に嵌まっていたということだ」
「俺も影魔法取ろうかな・・・ついでに幻影シリーズも・・・」
「おい!それは俺のアイデンティティに関わるから禁止だぞ!」
「なんだよケチ!」
「まあ頑張って陽輝は陽輝で自分のスタイルを探すんだな」
「ちぇっ!」
今、戦ったら俺の方が一歩リードしてるからつえーかな(笑)なんて思った時期もありました。はい。
「そうか、あれに勝とうとしたらまず光魔法で明りを沢山作って影を薄くして潜れないようにして光と雷魔法で・・・ぶつぶつ」
なんかぶつぶつ言ってるから聞いてみれば、俺の攻略法じゃないですか!
陽輝、なんて恐ろしい子!!
こうして俺達は地下15階を後にするのであった。ちなみに宝箱はドロップしなかった。




