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第2話 複雑怪奇な幼馴染み関係

 セントウォーホール大学の第一次入学試験の内容は、「どんな方法を使っても良いので、第二次試験の会場に期日までにたどり着くこと」である。

 今日は三月二十一日。期日は四月の一日。あと、十二日。

 目の前のアップルパイに手を付けることもなく、なのはなは私を真っ直ぐに見ている。

「大学は、ウェスタンブロウ海の向こうにある。私たちの住んでる国からは、船も飛行機も出てない。――つまり、自力で空を飛んで行くしかない。一人の体力だったら、途中で力尽きちゃうと思う。でも、二人なら。ほうきに二人乗りしたら、半分の力で飛ぶことができる」

私ははっとして、照れ隠しにストローに口をつけた。なのはなの本気の瞳に吸い込まれそうになっていた。

「それってつまり、なのはなは自分だけじゃなくて、私も二次試験に合格する見込みがあるって思ってるってことだよね? そうじゃなきゃ、自分勝手すぎるもん」

 なのはなの顔が、ぱっと紅潮した。

「当たり前じゃん。よりちゃんは、私より全然頭いいもん。ずっと憧れてるんだよ」

「ふーん……なのはなと同じ高校には受からなかったけどね」

「それは、たまたま試験のとき体調悪かったからじゃん」

「私は、頭よくなんかないよ」

 なのはなは、うっすらとピンク色に染まった目で私をにらんで、それから雑な手つきでびりびりとアップルパイの袋を破り始めた。大口を開けてかぶりついたせいで、あふれたクリームが頬に飛び散る。

 私たちはしばらくの間、黙々と食べ続けた。蛍光灯の無機質な光に照らされている店内は、どこか現実味がない。夢の中のような、映画の登場人物になったような、どこかリアリティのない感覚。だから私は、いつも閉じこもっている自分という枠から少しだけ、手足を出してみようと思ったのだ。

「……長時間飛行用のズボン、買わないといけないね」

 なのはなの手が止まる。しばらくアップルパイに目を落していたけれど、ゆっくりと私の方に視線を動かす。

「……よりちゃん」

「私、志望校決まってなかったからさ。ダメでも、この国の大学を受ければ良いだけだし。ま、春休みの旅行だと思うことにするよ」

「よりちゃーん!」

 なのはなが、涙と鼻水を出しながら、テーブルを回り込んで抱きついて来る。私はやれやれと頭をかきながら、内心、優越感に浸っていた。

 なのはなには私がいなければならない。この子が頼れるのは、私だけなのだ。姉貴分として助けてやらねばならない。

 そして、もし、もし万が一、私も入試に合格したら。

 未来が色を変えるのは、間違いなかった。

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