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『転生したら最弱ダンジョンマスターになったので、サーカスを始めたいと思います!』  作者: フミンチュ
5章 相克の双里―ユグドゥーラ/ドゥラレヴィ

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14.開けておく道

 眠ったのは、どれくらいだっただろう。

 大地は肩を揺すられて目を開けた。

 ジャンヌが、戸口に立っている。


「動いた」


 それだけで分かった。

 外では、ネイアスが警備の者へ指示を出していた。ジーリアの隊が、古い道を世界樹へ向かっているという。

 避難した家族は、まだ空き家で眠っている。


「道の先は?」

「根の張り出す狭い場所がある。そこで止める」


 ネイアスの返事を聞き、大地は昨夜の小屋を思い出した。

 壁のような根に挟まれた道。荷を背負って歩くだけでも、人とすれ違うのが難しかった。


「両側から挟めば、逃げ場がなくなる」

「通せば、世界樹まで来る」


 大地は黙った。

 ネイアスは、こちらを見た。


「お前たちは、もう出てもいい。助けてもらった者には、私から礼を伝える」


 大地は、空き家の方を振り返った。

 戸口へ出たフランが、羽の先で目を擦っている。


     *


 仲間を集めて話した。

 戦いへ近づくことになる。止められる保証はない。退く時は全員で退く。

 大地は、それを最初に言った。


「俺は、道を一つ空けたい。押し合った時、潰されずに戻れる場所を作る」

「敵も逃げるっすね」

「ああ」


 マルディは帽子を被った。


「じゃあ、追いかけないことを、先に約束してもらわないと」


 大地はネイアスへ頼んだ。

 里長はすぐには答えなかったが、こちらへ向けて武器を下ろした者を撃たない、と警備の前で告げた。

 それが全員の納得を意味するわけではない。

 昨日、肩を射られた男は、大地と目を合わせなかった。


     *


 古い道には、すでに双方の兵がいた。

 葉の間を抜けて、矢が飛ぶ。

 ジャンヌが剣を抜き、大地の前へ出た。ジレンツは大地の右手で盾の姿になる。戦いが始まってから、その声は聞こえなかった。


「マルディ、右の坂を隠せるか!」

「長くは無理っす!」


 幻の枝葉が重なった。

 矢を止めはしないが、狙いを定めにくくする。その間に大地は地面の窪みへ低い足場を出した。

 段差を埋め、人が一人ずつ抜けられる道を作る。


『ここを通れます!』


 ラステリが、落ちた枝を押しやった。

 大地は両側へ向かって叫ぶ。


「怪我人を出せ! この道では射つな!」


 すぐに信じる者はいなかった。

 最初に下りてきたのは、片足を引きずるダークエルフだった。追ってきたエルフの兵が弓を上げる。

 ジャンヌが振り向いた。


「約束したはずだ!」


 弓が、少し下がる。

 その隙に、ラステリが怪我人の足元を示した。

 フランは道の下で、空いている場所を声で知らせている。歌う余裕はなかった。大地も、無理に歌えとは言わなかった。


     *


 ジーリアを見つけたのは、道の中央だった。

 護衛を連れ、足を止めた兵へ何か命じている。

 ダレンがそばにいた。


「女王様、下へ出られます。今なら」

「私は、まだ進める」


 大地は盾を上げたまま近づいた。


「この先に行っても、話は終わりません!」


 ジーリアが、こちらを見た。

 手には細身の剣があった。刃に、泥と葉が付いている。


「柵を越えなければ、話す席にも着かせない。そういうことだったのよ」

「会った。あんたも、机の前にいた!」


 大地の声が荒れた。

 昨日フランへ向いた矢を、思い出した。


「足りなかったなら、もう一度座ればいい。子供の頭を越して矢を射た後で、何を取り戻すんだ!」


 ジーリアの顔から、表情が消えた。


「そこを、退きなさい」


 ジャンヌが大地の横へ立った。


「退けない」


 剣の先を、下へ向けたまま言う。


「私の仲間も、あの里にいた。お前の兵が射った」


 ジーリアが息を吸った。

 木々の上で、風が鳴った。

 次に踏み込んできた彼女の刃を、ジャンヌが正面から受けた。

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