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8.双頭の支配者

重い沈黙が洞窟を満たしていた。

巨大な石扉の前。

空気は張り詰め、

まるで世界そのものが呼吸を止めているかのようだった。

ラステリは

わずかに震えている。

――マスター……

 いやな感じがします……

フランも

無意識に大地の背後へと寄った。

「……ああ」

大地は低く答える。

黒い指輪が

わずかに脈動していた。

警告のように。

期待のように。

そして。

石扉が

ゆっくりと軋みながら開く。

その瞬間。

凄まじい威圧が

空気を叩き潰した。

――グルルルル……

低く、重く、

腹の底を震わせる唸り声。

闇の奥から

二つの光が浮かび上がる。

いや。

二つではない。

四つ。

燃えるような紅の眼。

次の瞬間。

巨体が姿を現した。

双頭の巨大狼。

黒い毛並みは岩のように硬く、

筋肉は鎧のように隆起している。

二つの首が

別々の意思を持つように動き、

同時に牙を剥いた。

地面が

その一歩で震えた。

「……オルトロス」

大地の喉が

わずかに乾く。

逃げたい。

本能がそう叫んでいる。

ラステリは

完全に動きを止めていた。

フランの歌も

喉の奥で凍りつく。

その時。

片方の頭が

ゆっくりと口を開いた。

低く、知性を感じさせる声。

「……貴様」

もう一つの頭が

笑うように牙を鳴らす。

「ダンジョンマスターの匂いがするな」

洞窟が震える。

「なぜだ?」

一歩、近づく。

岩が砕ける。

「なぜ貴様のような存在が

 人間共の味方をしている」

紅い眼が

大地を射抜く。

「貴様は同胞を裏切り

 何のためにここへ来た」

沈黙。

ラステリが

小さく声を漏らす。

――マスター……

フランも

不安そうに見上げる。

だが。

大地は

ゆっくりと前へ出た。

足は震えている。

それでも止まらない。

胸の奥で

燃えているものがある。

怒り。

そして――信念。

大地は

真っ直ぐオルトロスを見据えた。

「理由なんて

 簡単だ」

声は

まだ少し震えている。

だが。

確かに届く声だった。

「お前が」

拳を握る。

「お前が

 俺達のお客さんを傷つけた」

空気が張り詰める。

「お前が

 人の笑顔を奪った」

洞窟の奥に

その言葉が響く。

「だからだ」

一歩、さらに前へ。

「俺は

 舞台を守る」

強く言い放つ。

「不安をばら撒く存在なら

 お前がダンジョンマスターだろうが関係ない」

黒い指輪が

強く光を放つ。

「ソル・フロールは

 笑顔のために戦う」

沈黙。

そして。

オルトロスの二つの口が

同時に歪んだ。

笑っている。

「……面白い」

次の瞬間。

巨体が消えた。

衝撃。

岩壁が爆ぜる。

ラステリの分裂体が

一瞬で吹き飛ばされた。

「ッ!!」

大地が息を呑む。

速い。

速すぎる。

フランが慌てて歌う。

だが。

音圧の咆哮が

それをかき消した。

鼓膜が震える。

身体が硬直する。

オルトロスは

遊んでいるようだった。

片方の頭が噛み付き、

もう一つが爪で薙ぐ。

舞台は

一瞬で破壊されていく。

ラステリは

必死に分裂し回避する。

だが。

一体が捕らえられた。

牙が迫る。

「ラステリ!!」

大地の叫び。

刹那。

合体。

ギリギリで回避。

だが。

床が砕け、

体勢が崩れる。

フランの歌も

恐怖で揺らぐ。

洞窟は

完全に支配されていた。

「……くそ」

大地は歯を食いしばる。

これは

今までの敵とは違う。

格が違う。

だが。

それでも。

逃げるという選択肢は

存在しなかった。

オルトロスが

再び低く唸る。

「どうした、もう終わりか?」

挑発。

嘲笑。

そして圧倒的強者の余裕。

大地は

ゆっくりと息を吐いた。

「……まだだ」

黒い指輪が

再び脈動する。

「ショーは

 これからだ」


大地は指輪に魔力を込める


「……さぁ、開演だ!!」


その瞬間、洞窟内がサーカス場に一変する

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