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4.笑顔を守るための開演

夜の街は、

先程までの賑わいが嘘のように張り詰めていた。

遠くで鐘が鳴る。

低く、重く、何度も。

「スタンピードだ……」

誰かが呟いた。

その一言が

街全体を震わせる。

冒険者達は武器を取り、

足早に門へ向かっていく。

不安に揺れる一般人の視線。

泣き出す子供。

店の扉を閉める商人。

ついさっきまで

笑い声に満ちていた広場は

まるで別の場所のようだった。

ラステリが

大地の足元で震える。

――マスター……

 こわいです……

フランも

翼を小さく畳んでいる。

「……そうだな」

大地は静かに頷いた。

だが。

その表情に

迷いはなかった。

「でもな」

ゆっくりと空を見上げる。

街の外――

暗闇の向こうから

地面を揺らす振動が伝わってくる。

魔物の群れ。

怒号。

警鐘。

戦いの気配。

大地は

黒い指輪を握りしめた。

「俺は」

低く、しかしはっきりとした声。

「俺は――

 お客さんを不安にさせる舞台なんて許せない」

ラステリが顔を上げる。

フランも

じっと大地を見つめる。

「俺たちは

 笑顔を生むためにここにいる」

一歩、前に出る。

「なら」

その瞳に

静かな炎が灯る。

「笑顔を守るためなら

 俺たちは戦える」

その言葉は

決意そのものだった。

遠くから

土煙が見える。

門の外で

既に戦闘が始まっているのだろう。

大地は

ふっと笑う。

「ラステリ」

――はい!

「フラン」

「う、うん……!」

「これはショーじゃない」

そして

次の瞬間。

静かに、

だが確かな熱を込めて言う。

「――さあ、開演だ」

黒い指輪が

淡く光り始める。

DPが反応する。

地面から

舞台の骨組みが現れる。

防衛用の高台。

視線誘導の照明。

魔物の動きを乱す演出装置。

それは

戦場に現れたサーカスだった。

「俺たちは

 戦場でも観客を作る」

遠くの避難民達が

思わず足を止める。

不安の中で

“何かが始まる”気配を感じ取る。

ラステリは

震えながらも舞台へ上がる。

フランも

小さく息を吸う。

魔物の咆哮が近づく。

地面が揺れる。

だが。

大地は

一歩も退かなかった。

「さぁ」

その声は

夜の戦場に響く。

「最高の舞台を見せてやろう」

次の瞬間。

最初の魔物が

視界に飛び込んできた。

――開戦。

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