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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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47・(一対一)×五回?

「さあ、誰をお望みですか?」


 やんわりとした動きで両手を広げ、どれでも好きなの選べとばかりに聖女コルテリアが聞いてくる。

 人間の願いを聞いてくれる女神さまみたいな見た目と物言いだが、聞いてくれる願いは対戦相手の指名のみである。拒否の願いは聞く耳をもってくれない。

 やっぱ聖女はダメだな。

 俺の中で、聖女という存在への偏見がじわじわ増していく。


 かくして、

 俺の意思を無視して、聖女主導のタイマンバトルが勝手に始まろうとしていた。



 五人中、誰を選んでもいいとのことだが……。

 そうなると、ある疑問が沸き上がる。


「あの、質問いい?」


「どうぞ」


「これってさ、あんたらの中の誰か一人とやり合って、俺が勝てば、素直に引き下がって帰国してくれる……ってことでいいのか?」


「いいえ」


 聖女にあっさり否定された。だろうな。


「ぷっ、そんな虫のいい話があるわけないだろ。夢見てんじゃないよボクちゃん」


 話に混ざりたいのか、聖女のそばまで寄ってきた残り四人。

 そのうちの一人、青スーツの女──騎士アンジェリカがさらに追い討ちをかけてきた。


「勝ち抜き戦だよ、勝ち抜き戦。こっちは五人で、そっちはお前だけ。ズルいか? 卑怯だと言いたいか? でもよ、元はと言えばお前が先にやったことだぜ? 何の罪もない敬虔な騎士を罠にかけて、よってたかって廃墟の床の染みにしやがったんだからなぁ……」


「自分の番がきた──ということだ、小僧。観念するのだな」


 低い男性の声が、銀色の人物のほうから聞こえた。

 上から下まで、何もかもが銀色。

 『完全なる』オーバザイル。

 ジーク何たらとかいう洋風式神(ガーディアン)を全身鎧のようにまとっている、でかい男だ。


「むしろ感謝しろよ。本来なら、この聖女さまの言うように、お前みたいな魔物なんか五対一で仕留めても良かったんだからな」


「キキキ……」


 素性のわからない少年が恩着せがましいことを言い、同じく素性のわからない少女が不気味に笑う。

 ……いや、なんも言わないのかい。

 笑うためだけに近づいてきたのかよこの女。なんなんだ。

 やっぱ変なのの集まりだわこいつら。


「……感謝、ね」


 五対一でやるところを、一対一を五回にしてやる。

 悪い話じゃない。

 いや、いい話だ。


 別に全員同時にかかってこられても勝てないわけではない。

 しかしどちらが難易度低いかと言われたら、やりやすいかと問われたら、当然タイマン五回のほうである。

 俺にとって聖女の提案はメリットしかない。


 しかし……。


(その提案、どこまで信用していいものやら)


 最初はいいさ。

 一人くらい負けても「フッそいつは我々の中でも最弱」みたいな感じで余裕を崩さないんじゃないかな。一人減ってもまだ四人いるんだし。


 不穏な空気になるのは二人目がやられた辺りからだろう。

 多分、その辺りからぼちぼち余裕が揺らいで、焦りも生まれてくるはずだ。残り三人でかかるかどうか迷う頃合いだ。

 だから、一対一を二回こなした後は、一対三になるかもと思っていたほうがいいかもしれない。


 いざとなればなりふり構わなくなるのが人間ってもんだ。

 ましてや、こいつらは俺を退治したくて仕方ないときてる。俺のことを邪悪な魔物だと信じこんでいるからな。そのほうが都合いいだろうし。

 中でも特に聖女がヤバい。

 このお姉さんはヤバい。話が通じるようで通じない。攻撃は当たってるのにダメージが入ってないみたいな不条理さがある。

 他の四人も、そこまで重症ではないにしても、俺に対して寛容な態度はどうも取りそうにない。屁理屈と悪口をほざくだけほざいてから、開き直って数で押し切ろうとしてくるなんてこともあり得そうだ。


 君子は豹変する。

 そんな言葉を小説で読んだことがある。

 君子が変わるなら聖女や騎士だって変わるだろ。口約束くらい簡単に破るさ。


 いつ、突然、一対多になっても動転しないよう、心構えだけはしておこう。

 「は、話と違うぞ!」なんてみっともないことをうっかり口走りたくないからな。殺し合いはルール無用だろ。


「ああ、ついでにもうひとつ」


 俺は頭上を指差した。

 床や壁と同様、緑にまみれた高い天井。

 大型の倉庫とかドーム球場みたいな体育施設とか、そういうのを連想させる高さだ。


「ここってどこなんだ? こんな異様に広いエリアなんか療養所に無いと思うんだが」


「…………なぜ、そんなことを聞きたいのです?」


「なんでって、単に不思議に思ったからだよ。深い理由なんてないし、どうしても知りたいとかじゃない。ついでだよ、ついで」


「──魔女だよ。あの魔女の作り出した『妖精の園』ってやつさ」


 答えてくれたのは、意外なことに騎士アンジェリカだった。


「アンジェリカさん」


 聖女が、騎士アンジェリカのほうを向き、不満そうな声で名前を呼んだ。


「なんだよ、別に教えてやってもいいだろそのくらい。地獄の土産ってやつだよ」


「冥土だろ。冥土の土産」


「細かいことを気にするなよ。それに、どうせお前は地獄行きなんだから間違ってないんじゃないか、あ?」


「どうだろうな。もしそうだとしても、行くのは今じゃないと思うけどね」


「ほう……言うではないか」


 感心したように銀の巨体がつぶやいた。

 お前ら五人くらい退けられると、暗にそう言ったようなもんだからな。


「アハハ、ボクちゃん、いい度胸してんなあ」


「ケッ、強がってるだけですよ。どうせ悪知恵しか取り柄がない魔物なんだ。力の差を思い知ったらビビって泣き叫びますって」


 騎士アンジェリカの言葉に、槍使いの少年がやたらとケチをつけてきた。

 なんだこいつ。

 俺がこの女に度胸の良さを褒められたのがムカついたのか? 鎧の大男が褒めたときは無言でスルーしたくせに。マジでなんだこいつ。

 もしかしてこの女に惚れてるとか? 片思い?


 それはそうと腹が立ったし言い返してやれ。


「余計なこと言うなよ雑魚」


「ざ……!?」


 わかりやすく馬鹿にしてやると、ヘラヘラしていた槍使いの顔が数秒で怒りモードになった。

 このくらいでカチンとくるとか沸点低いな。真正面から馬鹿にされた経験なかったりする? いや普通はないか。

 ま、怒りたいなら勝手に怒ってろ。

 無視だ無視。

 こんなのほっといて騎士アンジェリカと話を続けよう。


「褒めてもらって悪いが何も出ないよ。それより……さっきの話だけどさ、じゃあここは魔女が作り出した特殊な世界というか、空間ってことなのか?」


「そうさ。この世のものではない霊木の枝を触媒に作り出した、人工の異界。魔女の奴はここの維持と操作で手一杯だ」


 手一杯ね。

 それでも、俺をこの場に飛ばしたりするくらいの芸当は可能みたいだな。

 なら、俺を飛ばしたあと、間狩たちの足止めを今頃やってるのかもしれん。援軍は期待できそうにないか。

 やれやれ。


「もう、聞きたいことはありませんか? なら、そろそろ一番手を選んでください」


 聖女が、さっきとは違い、ちょっと急かすように言ってきた。

 時間稼ぎでもしてると思われたのかな。


「そーだね、んじゃ誰にしようかな……」



「──俺とやれ」



 くぐもった、低い声。

 大柄な男のものではない。声が若い。


「強がりじゃなくて、本当に強いんだろ? 逃げないよな? 俺とお前、どちらが雑魚だかはっきりさせてやるからよ、だから俺を選べ、クソ魔物野郎」


 槍使いの少年の声であった。

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よし!槍使い無視しよう! 弱そうだから疲れたあとで()
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