教員住宅
4月から僕は新しい大学の教員となる。
大学の名前は「中央女子大学」。
僕は生まれて初めて女子大という所に入ることになる。
僕は女子校と言ったところに縁がなかった。
もちろん、元男子だからだ。
僕はアメリカで女性社会の怖さを知った。
これはなってみなければ分からないのだが女性は女性で大変なのだ。
ましてや僕は女の子になりたかった訳ではない。
女性というと僕にとっては苦手な分野だった。
男と違って何を考えているか分からないし非常に不気味だ。
もちろん、性転換したのはひとえに彼のためだ。
日本では同性同士結婚が出来ない。
だから僕が彼にサプライズで性転換をしたのだ。
僕はそれぐらい彼が好きだったから。
それが帰国してみると彼も性転換。
おかげで僕は戸籍の性別変更をしなくて済んだ。
こんなに頑張って苦手な女の子になったのに。
それに加え今度行く女子大は教員、生徒全て女性なのだという。
本当にこれからの未来は暗澹たるものだ。
ここまで言っておいて何だが別に女性に対する偏見がある訳ではない。
性転換する前から女友達はいたし、女性に対してはなんとも思っていない。
ただ、性転換した自分は異世界転生したような不安で満ち溢れているだけだ。
それにもう男に戻る気もない。
性転換すると決めた時からそう決めている。
僕にとっては一大決心なのだから元に戻ることは考えていない。
今は女性として埋没できるか不安なだけだ。
そんなこんなで僕たちは教員住宅に住むことになった。
教員住宅とは「中央女子大学」の教員専用寮で僕たち大学の先生になったばかりの最下層の教員が住む場所だ。
と言っても僕らが住んでいた場所より交通の便がよく部屋も広い。
大学の先生になるとこんな特典が付くんだと歓心するばかりだ。
ちなみに寮と言っても立派なマンションだ。
10階建ての3階が新しい住居だ。
このマンションは女性限定マンションなのだそう。
そこに戸籍上男の僕が住むことになる。
とりあえずは引っ越しの身支度だ。
引っ越し仕立ての部屋には段ボールが一杯山積みになっている。
ほとんどが僕の(戸籍上の)奥さんである愛結のものだが。
僕はと言うと帰国したばかりでほとんど荷物がない。
服もコスメも下着も奥さんと兼用している。
早く自分のものを買わなくてはと思っている。
しかし、未だに女性ものを買うのには抵抗がある。
性転換した今でも抵抗があるのだ。
そういうことで早く自立した女性になりたいと思っている今日この頃でもある。
引っ越しした後は挨拶をしなければならない。
一応(戸籍上)世帯主でもある僕が挨拶をすることにした。
まずはお隣さんだ。
チャイムを押すと髪の長い綺麗な眼鏡を掛けた女性が顔を出した。
「どちら様ですか?」
「今度夫婦で引っ越してきた根田と申します」
「え!?
夫婦って、ここは女性限定マンションなんですが」
「えっと、話せば長くなるんですが一応、同性カップルなので大丈夫だと思います。
大家さんにもOKもらったし。
戸籍上は男女ですが一応性転換しているので女性同士の夫婦と言うことになります。
それに夫婦別姓で戸籍上僕の妻は違う名字を名乗っているんですが歴とした夫婦ですのでご安心ください」
「よく分からないのですがよく分かりました。
てことは失礼ですがあなたは元男性の方なんですか?
え!!
見えない!!
どう見ても女性にしか。
しゃべり方や仕草は女性としてはどうかとも思いますが黙っていれば美人さんじゃないですか。
女性同士の恋愛は私にはよく分かりませんがあなたならおモテになるでしょう。
いや、お世辞抜きで」
ちょっと言葉には引っかかったが悪気はなさそうだ。
それにしても夫婦だというとこんなにも面倒くさいのか。
次からはルームシェアだと言うことにして誤魔化そう。
僕はさらにご近所を回った。
次の部屋にはまた違った意味でのメガネっ娘がいた。
髪がクルクルショートの眼鏡女子だ。
見た目はこれが成人女子かと思うほど若く見えた。
ざっと10代、女子高生にも見えなくはない。
僕はさっきとは違い簡単に挨拶をした。
なんか相手も徹夜明けだったみたいで簡単に済ましてくれた。
ちょっと拍子抜けなくらい簡単に。
そして最後の一軒。
他にもご近所さんは一杯あるが切りがないのでこの部屋で最後にしよう。
チャイムを押すと今まで見たことのない美人が出てきた。
まるでモデルさんみたいだ。
この人も大学の教員らしい。
それにしても僕が女だと言うことでかなり無防備な姿。
僕が女性に興味があったら一瞬でその色香に惑わされただろう。
まぁ、僕はなんとも思っていないのだが。
この人もさっきまで眠っていたみたいで挨拶も簡単に済んだ。
もちろん、余計なことを言わなかったからかも。
この3人が僕と一緒に同じ職場で働くメンバーと言うことになるらしい。
これから友達としても付き合いたいなとも思っている。
ちなみに最初の人は古源 竹葉さん。
古典文学を担当している。
次の人は織田 家輪さん。
日本史、特に戦国時代を担当。
最後の人は流石 極美さん
化学、専門は人工の石油を作ることだそう。
僕はもちろん代数学の専門家。
それぞれ専門分野は違うが同じ教員養成科の教員だ。
この3人とはとにかく仲良くなりたいと思っている。




