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プロトタイプ:卑屈の惑星

 それはドライオプティミズムが起こるよりも遥か昔のことでしたから、きっと真の意味で豊かだった正に『黄金時代』だったのでしょう。

 争うということができるほどに余裕がある人々たちの痕跡が、今になっても残っているのですから。

 例えば、その時代はロストテクノロジーの巣窟だったでしょう。

 私が内包する、この虚数大地にはあちこちによくわからない金属の塊が埋まっていますし、私たちがこうやって生き残れているのも、いつの日にか確立されたE-c機関のおかげなのです。

 E-c機関。これは、魂と肉体の間の楔を現すドメインを生成し続けるというパンドラウイルス・エルピスを利用したもの。

 ドライオプティミズムによって歪曲し始めた現実と虚構の中でも揺蕩うことができるように考え出された、生存させ続けてしまうという完璧すぎるが故の欠陥品です。

 『黄金時代』というものは失って初めて気づくものだったようです。黄金もいっぱいあっては意味がなくなる。失われ始めてやっと価値を見出せるといったように。

 とくに不老不死は人類の夢でしたが、この状況下では残酷なものとして存在しています。

 生きるという目的に固執した結果、目的が原因と入れ替わったのです。

 ドライオプティミズムさえ起こらなければ、こんないい加減な世界には成らなかったでしょう。

 もうそろそろ生きるだけの塊になってしまいそうです。この、自分の卑しい過去に対し、思いを馳せることぐらいにしか脳を使わないですしね。 

 さて、話を戻しましょう。

『黄金時代』と言っても、私の…いえ、貴方たちよりも少し科学が発展しきって、停滞を起こし始めていた頃のことでした。量子コンピュータが発展し、完全にこの世の多くの事象がシュミレーションができるくらいにはなっていました。まだヒトが遊星になるもっと前、人間だった時です。

 人間は、根源的な活動を通して文明を発展させてきたことからわかるように、知的好奇心を持て余すほどになっていたからこそ、枯渇し、停滞させるところまでやってきたのです。

 でも、人間は飽きやすくて無駄に繰り返すものであるので、停滞を実感するとアポトーシスが働き、文明は回帰していきます。

 無理矢理それを抑えようとすれば、癌が増え続けて、死にます。アポトーシスは癌を無くすためにしているのですから、当然ですよね。

 だから戦争が起こった。

 強制的にでも癌を抑えようと人類は暴走を始め、殺しすぎてプログラムされた以上のことを実行した。

 感情は日々堰き止められ、膿むばかり。

 私はいい加減あきあきしていましたが、それでも尚、そこはまさしく『黄金時代』でした。

戦争は何の利益も得られずに終結しました。

 何もいいことはなかったけど、不幸中の幸いがありました。

 火の鳥の二の舞にならなかったことです。

 ちなみに私の時代にも文化の足跡は残っていましたので、そういった文化的な引用表現の知識がないことはありません。

 人は死にませんでした。

 ですが、生物兵器によって動物に変えられてしまった人たちはかなりいたはずです。戦争終結の一年の世界の行方不明者数は世界の総人口の約3割は占めていた気がします。

 なぜ生物兵器だってわかるかって?だって、私はそれの製作に関わっていたからですよ。家族や友人を人質にとられていたのでね。

 E-c機関の件だって同じです。私が作った。

 私は戦争当時60歳程度でしたが、テロメアを弄っていたので実際は25才の肉体でした。

 それぐらいはできました。遺伝子工学の博士だったので。

 戦争が終わって、すぐに研究所を畳み、大衆に自白しようかと思いましたが、もはや戦争後には倫理もクソもなかった。

 戦争では資源と時間をありったけ費やしたせいでそんな余裕はなくなっていました。

 環境もおかしくなっていました。人の心は荒び、海は濁り、大地は腐っていました。

 その直後でした。『黄金時代』が終わって、ドライオプティミズムが起きたのは。

ドライオプティミズム————

 月の光に長い時間当たった者は体が月面のように灰長石へと変化をきたし、特に多く光を浴びたところからじわじわと蝕まれていき、最後は体が崩れて死ぬ。加えて、特殊な精神状態に陥り、末期状態になると月を追い求めて彷徨い始める。

 私は重い腰を上げて、細胞の視点から調査を始めました。

 対象者の細胞は白くなり、本当に石のようでした。

 しかし、遺伝子は綺麗に残っていました。

 配列も異常はない。ただ、成分が特殊なケイ素化合物に変化していたこと。それだけではなく、とてつもない違和感があったのです。

 その正体は螺旋の捻りでした。

 遺伝子が、まるで蠢くようにして動いていたのです。

 もっと詳しく調べると、よくわからない力でそれは動力を得ているのでした。

 こうして、ずっと対象者と時間を過ごしていくと奇妙なことを口に出すことがありました。

「今まで神は仮死状態だったのに、先の戦争で本当に神は死んでしまった。だから、堕した天使はまた登り始め、月において再生を始め、その従者として選ばれた我々人間は、月の光を浴びては浄化される」と。

 全くトチ狂った冗談にもいいところでした。

 今の時代において神などを信じる人などもはやいないはずなのに、変なことを口に出すもんですから、私は困り果ててしまいました。

 しばらくして、人類を揺るがすような大きな発見をしました。

 肉体と魂は楔によって繋ぎ止められているということです。

 魂はすでに証明されていましたが、わかっていることが少なく、ただ内包されているものだという認識でした。

 この発見によってドライオプティミズムはこの楔が極端に減少を起こしたせいで起こっているという結論が出されました。

 天使や神なんて全く私は信じていませんでしたが、ある意味でドライオプティミズムになった彼の言い分は正しかったように感じました。まるで、少しずつ魂が流失しているみたい。

 しかも、その魂の漏れから来る流れによって遺伝子が侵食され、蠢いていたのだということも判明しました。

 同時に、副産物として楔の生成に関わるパンドラウイルスの新種:パンドラウィルス・エルピスが見つかりました。

 正直、私はもうみんな死ねばいいと思っていたので、この研究結果を無かったことにしたかったのですが、手遅れでした。

 大衆は騒ぎ立ててこのウィルスに関する関心を昂らせていました。

 私は「メシア」と敬称させられました。

 また研究をさせるため、家族を人質にとられると思った私は、気が動転していました。遺伝子工学の知識を使って家族を静かに殺しました。

 守ろうとしたのに、自分の大切なものを壊してしまった自己矛盾が私の心を砕きました。

 どうでも良くなりました。

 みんなが生きようが死のうが私にとってはどうでも良くなったのです。

 研究を続けた結果にE-c機関を発明しました。

 いろんな人が広い戦場の跡地を利用して試しましたけれども、ドライオプティミズムは防げましたが、みんな決まってまん丸の肉塊になるのでした。

 肉塊は何かしらのジャンクを磁石のように取り込んで空に浮き上がりました。

 そして、不老不死を手にして星になるのです。

 つまり、宇宙のどこかの星の一部、さらに言い換えれば神になるということです。

 今、思い返せば、この星の神も同じようにやってきたのではないかと思いました。

 地球が構成された時に隕石の中にアミノ酸が入っていたから私たちがいるみたいですから。

 昔、データベースで見たアニメーションで考察されていたことは事実に限りなく近く、『黄金時代』は本当に凄かったんだなと思いました。

 月に愛されなかった、特殊な魂を持っている人たち以外はほとんど宇宙に消えていきました。

 私が最後の一人です。

 そうして私は今に至るのです。

 という夢を永遠に見続けて、宇宙の果てに虚構と現実の無限螺旋を織りなしていくのです。

 ヘイフリック限界を目指して。

これは本編のプロトタイプであって、概念的には似たものがありますが結構手が加えられています。関わりも一切ありません。

そもそも、流れ星じゃないですからね(笑)

こうやってみるとめっちゃエ●ァンゲリオンとかtypemo●nって感じですね…

あがっ…年がブラックバレル…

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