僕の星/
楽しい時間はあっという間だと、暗い図書館で読んだ本はよく教えてくれた。
あの時は僕は幼くて、ぜんっぜん理解できなかった。
今はわかる。
彼女との旅は楽しかった。トレーラーの中での談笑。幾つものピンチ。ロマンあふれる遺跡群。
あっという間だった。
ホズは最初はサバサバした人だと思っていたけど、だんだん打ち解けあってきて実は結構ナイーブだったり、ロボットだったり、驚きに満ちていた。
別れは束の間だった。
旧地中海に突如浮上した純白の神殿の調査が、僕らの運命を決めた。
真実は思いのほか鋭いものだった。工具のキリで心に穴を空けられた気分だった。
この時のためにホズは作られたロボットだった。
壁画に記された童話の意味を解読したことによって、彼女の犠牲によってこの絶望は終わると知った。
彼女は喜んで身を捧げようとしていたが、僕は怒りでいっぱいだった。
それでいいのか、といっぺん僕たち以外の誰かに怒鳴りたかった。
いや、本心でいえば誰かなんかじゃなくてもっと具体的に、そんな事を押し付けるこの世界に、運命に、この神殿を作った人々に怒鳴りたかったに違いない。
僕はそんな怒りをうまく発散できずに送り出すことだけしかできなかった。
「今までありがとう」とだけしか伝えられなかった。
僕の我儘で引き止めたかった。もっと一緒にいたかった。好きだった。
別れたあと、彼女の遺した暖かいトレーラーの中で寒そうにうずくまる自分がいた。




