結局は似た者同士故の同属嫌悪なのだろう
座卓にお茶を並べ置きながら、サチさんがコウイチさんに優しく語り掛けました。
「幾ら気を遣わない間柄だからって、考えて話さないとねぇ。育ててくれた親に向かって責めるような言い方をしなくても良いでしょうに。確かに、この人は離婚したけどそれは夫婦間の問題であってコウ君が口を出す権利は無い事よ。今それを持ち出すのは、それこそ、コウ君達が結婚する事とは関係の無い話でしょう?」
「……祖母ちゃんはそう言うけど、今みたいに父さんに事前に話していたとしても、父さんはきっとこれから僕達だけの問題にも遠慮無く口を挟んでくるだろうからそうなる前に釘を刺しただけだよ。どれだけ言ってたとしても、父さんは自分のやりたい様にやるって知ってるから。」
「この人も、自分が経験したからこそ助言したい事もあるでしょうよ。それをお節介に思うかもしれないけど、ひとまず、自分よりも長い時間を生きてる人間の話は聞いておいて損は無いと思うよ。その戒めを活かすも殺すも本人次第だけどねぇ。」
「……。」
今度はコウイチさんが黙り込む番でしたが、サチさんのお陰で場の重苦しい雰囲気が一掃されたように感じました。
口を閉じて微動だにしていなかったタダオさんが
「……まぁ、コウイチが言うように結婚に失敗している身だが、尚更の事、僕の話を聞いておいて貰いたいと思うところがあって……偉そうな口を利くつもりは無いが、子どもの幸せの為にやれる事をしようと思っている親心があるとだけは覚えていてくれたら良い。コウイチも、エイミさんも。」
と話し、難渋さに満ちた表情のまま、これだけは伝えなければと言った強い意志を感じる眼差しを私達に向けました。
「……はい!ご迷惑を沢山お掛けしてしまうかと思うんですけど、何かあった時には相談させて貰えればと思っています!有難うございます!」
内心で冷や汗をかいていた私が気を取り直して明るい声で返答するも、コウイチさんは難しい顔のまま押し黙り、一点を凝視した状態で考えあぐねているようでした。
居間にサチさんが加わってからは、会話の主導権を握ったサチさんの独壇場になり座卓の上には写真のアルバムが広げられ、タダオさんやコウイチさんが幼い頃のお話、サチさんの今は亡きご主人、コウイチさんのお祖父さんとの馴れ初め等、お話は尽きる事が無く和やかなやり取りが続きました。
タダオさんもコウイチさんも元来寡黙な性質なのか、サチさんや私が問い掛けない限りほとんど自分から話すような事は無く、存在感はそのままに、2人共静かに成り行きを見守っているようでした。




