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第四話 宇宙のグルメショー!

砂の惑星の名物料理とは……

 モニター画面いっぱいに番組のタイトルが映った。

《宇宙のグルメショー!》

 それに合わせて、軽快なテーマ音楽が流れる。

 すぐに画面が切り替わり、一面の砂漠になった。カメラがパンすると、レポーターらしき男がマイクを持って立っていた。

「さあ、お待たせしました。今週の宇宙のグルメショーは砂の惑星ジューンからお送りします。ごらんのように、この惑星は見渡す限り砂の海です」

 再びカメラが砂漠を映し出す。地平線の果てまで砂とゴツゴツした岩しか見えず、雲ひとつない空は抜けるように青い。

 再びカメラがレポーターに戻った。

「この惑星の料理を紹介してくださるのは首長しゅちょうのジェロさんですが、ジューンの言語はまだ自動翻訳機に対応していませんので、通訳と解説をある方にお願いしました」

 ひょろりとやせた男が映った。

「長年ジューンの観光ガイドを務めていらっしゃる黒井さんです。よろしくお願いします」

「こっちこそ、よろしくだよ」

「さっそくですが、ジェロ首長を呼んでいただけますか」

「ああ、わかったよ」

 黒井という男は砂漠に向かって何か叫び始めた。

「ろろーっ、ろろろろろーっ」

 すると、はるか彼方で砂煙が舞い上がり、そこから一直線に盛り上った砂が近づいて来た。黒井の手前で止まると、さらにモコモコと砂が盛り上がって五十センチぐらいの高さになった。その砂山がブルブルッと震えて、中から剛毛の生き物が現れた。ハリネズミとかハリモグラだとかの親戚のような動物だ。言葉はしゃべれるようで、ひとこと「ヌン」と言った。

「ちょっと、驚きました。これ、あ、いや、こちらがジェロ首長ですね」

「そうだよ」

「今、『ヌン』と言ったように聞こえましたが、『こんにちは』のような挨拶あいさつの言葉でしょうか」

「いやいや、そんなもんじゃねえ。訳すと『はるか遠くの水の惑星地球からお見えになった客人よ、われこそは第五千三百九十八代首長のジェロである。お見知り置かれよ。このたびはわがジューンのほこる砂料理のことが知りたいとか。さもあらん。宇宙広しといえど、これに勝る珍味ちんみはない。よければそなたも食してみるがよい。もっとも、地球人の柔らかな歯では、咀嚼そしゃくしきれんかもしれんがな。ハッハッハ』となるよ」

「え、えー、ちょっとお待ちください」

 レポーターは声をひそめて黒井にささやいた。

「だめですよ、話を盛っちゃ。たったひとこと『ヌン』と言ったのが、今のような長文の内容になるわけないじゃないですか」

「ちっとも盛ってねえよ。むしろ、だいぶ端折はしょったくらいだよ。ジューンの言葉は、われわれの言語のように意味を分析的に表現する方向に進化せず、逆に、ひとつひとつの単語に複雑な意味を持たせるように進化したんだよ。だから、日常よく使う単語だけで八十四億六千三百七十七万五千四百六十三語あるよ。わしだって、まだほんの一部しか覚えてねえよ」

「はあ、そうなんですか。ま、ま、いいでしょう。さっそく料理を紹介してもらいましょう」

「わかったよ」

 黒井は首長に向かって「ヒ」と言った。

 首長はうなずくと、近くの砂をかき混ぜ、砂団子のようなものを作り、パクリと食べた。

 レポーターは顔をしかめながら、必死でコメントした。

「あ、食べました。砂を食べました。どんな味なのでしょう。いや、おそらく砂をむような味でしょう」

「そんなことねえと思うよ。ちっと聞いてみようよ」

 黒井が「コ」と言うと首長はうなずいてしゃべり始めた。

「ニャラメオパサラモエンクレキモアアヒヅケメラオトグレゼジュホレメロンコスマケドゴン」

 首長の言葉を訳そうとする黒井を、レポーターはあわてて止めた。

「いいです、いいです。こんなの訳されたら、放送時間がいくらあったって足りませんよ!」

「そんなことねえよ。首長は『うまい』と言っただけだよ」

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